休日の山歩き 24 鳳凰三山 Houou Sanzan
[南アルプス] 鳳凰三山 − 地蔵岳2764m、観音岳2840m、薬師岳2780m − 青木鉱泉から周回
2010年7月17日(土)、18日(日)
地蔵岳オベリスク 地蔵岳オベリスク

賽ノ河原から見上げるそれは、沢山の石たちが、先頭の2つに率いられて皆天空の一点を指し、全体で三角形を形作る、自然の造形だ。

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【梅雨明けを待ちきれず鳳凰山へ】
西日本で梅雨末期の大雨被害が出ていたが、南関東は雨もなく夏空が2、3日続いた。海の日を含む3連休を迎え、梅雨明けを見込んで、3年連続の南アルプス行き、今年は鳳凰三山に登る計画を実行することにした。この山域へは、夜叉神峠を発着する行程だと、前夜に芦安に入る必要があるが、青木鉱泉又は御座石鉱泉を発着する行程なら、当日朝に東京から車で出発しても良い。山小屋は鳳凰小屋と薬師岳小屋があるが、テント場があるのは前者だけだ。こうして、1日目朝、青木鉱泉まで車で入り、ドンドコ沢を登り、鳳凰小屋で幕営し、2日目、地蔵岳、観音岳、薬師岳と縦走し、中道を下りて青木鉱泉に下山する周回の行程を計画した。
テント携行の山行は昨年9月の皇海山以来10か月ぶり、夏山シーズン到来に期待が高まった。連休前の金曜夜、千葉の単身赴任先から東京の自宅に移動した。自炊する食料などは以前から貯まっているから今回は買い出しもせず、行動食の菓子パンやおにぎりを当日買い求めるだけにした。

【登山口の青木鉱泉に着く】
土曜朝、午前5時台に自宅を出発し、中央道の八王子ICに入ると既に下り線が渋滞気味だった。8時前に韮崎ICで下りた。桐沢橋を渡り、青木鉱泉のHPで案内している林道に入ると、民家を過ぎた最初の区間が500mくらい未舗装だったが、その先は走り易い道が続き、8時40分に青木鉱泉に着いた。自宅から3時間半。駐車場に既に何十台も車が止まっている。鉱泉の建物の前で駐車料金(1泊2日で1500円)を払い、水をもらった。

青木鉱泉 ドンドコ沢
青木鉱泉(2日目) ドンドコ沢

【ドンドコ沢を登る】
9時10分に青木鉱泉を出発し、ドンドコ沢を地蔵岳に向けて歩き始めた。名前からして何か大変な沢のようだが、どうか。今日は鳳凰小屋までの標高差1200m余を登る。天気は晴れか薄曇りで申し分ない。当地でも数日前には大雨が降ったのだろうが、沢沿いの道は支障ないようだ。左に沢を見ながら(左岸を)歩き、次に右手の山の斜面に入り、厳しい登りが続く。山回りの道と合流した所に支沢があり、堰堤の下で一休みした。多くの人と前後しながら歩く。その後もジグザグの登りがあり、右手から下りてくる支沢を2つ渡る。

【ドンドコ沢の滝を見ながら登る】
ドンドコ沢には地図上、4つの滝が示されている。最初の滝は南精進ヶ滝で、午前11時に出会った。滝を通らない登山道から左に分岐して、滝経由で山頂に向かう道があり、後者に入るとロープが垂らされた急坂もあった。南精進ヶ滝は豊かな水量がすっと流れ落ち、展望場所が2回あった。登山道に合流した後、急登で大汗をかき、何度も汗拭きタオルを絞った。
次の鳳凰の滝は、分岐の道標では、どれ位遠いのか、滝を見て戻るのか上へ行けるのかも分からなかったので、入らなかった。上にも分岐があり、200m(5分)とあった。
その先で、先行して歩いている人たちが道選びに迷っていた。これまでと逆で谷の左斜面を登るような場所で、上と右に行けそうだが正しい方向でなく、正しい道は一旦右下に下るようになっていた。
3番目の白糸滝は、午後1時頃で、登山道に荷を下ろして左に数歩入ると展望場所があり、水が大小の岩の間を滑り落ちていたが、ガスがかかってきた。この先で、登山道脇で休憩した。ここまで水をよく飲み、青木鉱泉の1.5Lの水をほとんど飲み干したので、支沢の水で補給した。
4番目の五色の滝は分岐場所に説明の地図があり、一旦下って沢沿いに進むと、午後2時頃に滝に出会った。これまでで最も豪快な滝で、十分な高さから水が落ちて霧のようになって滝壺に入り水音を立てていた。急坂を登って登山道に合流した。
白いザレた場所を通り、急登も一段落した林を通っている時に一雨来たが、雨具を着るほどではなかった。谷の上に地蔵岳のオベリスクと思われる岩が見え隠れし、ドンドコ沢の源流部の河原に出た。

南精進ヶ滝 白糸滝 五色の滝
南精進ヶ滝 白糸滝 五色の滝 滝壺の前に立つ男性
ドンドコ沢 地蔵岳 鳳凰小屋 鳳凰小屋のテント場
ドンドコ沢の谷の上に地蔵岳を望む 鳳凰小屋 鳳凰小屋のテント場

【鳳凰小屋に幕営】
源流部の河原から右上に上がり、午後2時55分、鳳凰小屋に着いた。小屋の前のテーブルに多くの人が憩っており、幕営代500円を払い、小屋の後ろのテント場へ行くと、木立に囲まれたテント場はさして広くなく、先ほどの雨が結構激しく降ったためか、入口を閉ざしているテントが多く、地面は既に8割方埋まっている。通路をふさぐようにして場所を取り、何とかテントを張った。ぎりぎりセーフの到着だった。テントの中で汗だくの服を着替え、さっぱりした。ドンドコ沢を前後して歩いてきた人たちも多くテント場に入って来て、程なくテント場は満杯になった。それ以後に着いた人たちはテントを張れず山小屋素泊まりになったようだ。
小屋の前は狭いが、主人が明るく客の応対や案内をしており、雰囲気の良い小屋と思えた。ビールを600円で買い求め、パスタを茹でて夕食にした。テント場は単独男性もいるが、それよりも若い男女2人組や中年夫婦らしい組が特に多いように思われた。女性の登山者が多くなる傾向だろうか。周囲のテントとびっしり接しているだけに、あちこちから話の内容も良く聞こえてくる。小雨があった。7時過ぎ就寝した。
上の木の枝から水滴がよく落ちてくるので、雨が降り続いているのかと思っていたが、そうではなく、午前2時半に外に出てみると、満天の星空だった。

【地蔵岳を目指す】
午前4時前に起床し、コーヒーとアルファ米で朝食、5時過ぎにはテントを撤収し小屋の前に移動した。小屋はまだ日陰の中だが、青空が広り、周辺の山は既に朝日を受けて光っている。身支度を整え、主人に記念写真を撮ってもらい、5時半、小屋の宿泊者の朝食がコールされた頃に、地蔵岳を目指して出発した。樹皮の白っぽい針葉樹林の中をいきなりの急登になる。やがて右上に岩の尖塔、左上に樹林に覆われた山頂を見ながら、白っぽい土のザレ場を登り、左の山の左肩に富士山が見え出し、午前6時半、地蔵岳のオベリスク基部に着いた。地図のガイドでは賽ノ河原を経由することになっているが、右にそれて直接着いたのだ。地蔵が何体かある。砂地の狭い場所で荷を下ろし、岩に立てかけた。

地蔵岳を目指して オベリスクの最上部 オベリスクの最上部
地蔵岳を目指してザレ場を登る オベリスクの最上部 最上部の岩の間に入った人
北岳 甲斐駒ヶ岳 八ヶ岳
北岳(赤抜沢ノ頭付近から) 甲斐駒ヶ岳 八ヶ岳

【地蔵岳からの展望】
このオベリスク基部に着くと、目の前に甲斐駒ヶ岳、その左に仙丈ヶ岳が、突然大きく現れた。朝日がオベリスクの岩の後ろで高くなってきた。この岩に少し登ってみると、仙丈ヶ岳の左に白い雪の筋をまとった北岳や間ノ岳が現れた。また甲斐駒ヶ岳の右遙か奥には北アルプスの山並み、その右には雲海の上に黒く八ヶ岳が浮かんでいる。足場は悪いが、空気も澄んで明るい青空で、絶景を楽しんだ。さらに岩をよじ登り、最上部の岩が2枚合わさっている場所の直前まで行くと、岩の間にロープが2本垂れ下がっていた。1人の男性がそのロープの下まで入ったが、垂直の壁でそれ以上は登れなかった。あとは慎重に岩を降りた。
地蔵岳山頂を1時間も楽しんだ後、荷を背負って賽ノ河原に下りた、白い砂地に小さい地蔵が沢山並んでいる。ここから見上げるオベリスクは、沢山の尖った石がそろって天を指し、全体で三角形をなし、自然の芸術作品のように見える(このページ冒頭の写真)。

賽ノ河原 地蔵岳 観音岳への道
賽ノ河原を見下ろす 地蔵岳を振り返る(赤抜沢ノ頭から) 観音岳への白く光る道

【観音岳】
賽ノ河原から低木の間を登るとアカヌケ沢ノ頭で、ここから鳳凰三山の縦走路が始まる。観音岳を目指すと、目が覚めるような真っ白の岩と砂の道もあった。右手に大きく北岳、左前方に富士山を見ながらの贅沢な歩きだ。観音岳は岩をゴロゴロ積み上げたような山頂で、多くの登山者が岩の上で思い思いに休んでいる。ここはまさに360度遮るものもない大展望で、特に北岳が美しく大きい。後方の地蔵岳は大分小さく見えるようになった。前方の薬師岳山頂の2つの岩塔の上に浮かぶ富士山がよい。山頂の岩の間に立派な2等三角点があるが、残念ながら真ん中で折れている。ここでも40分以上楽しんで、次の薬師岳に向かう。

観音岳から地蔵岳 観音岳山頂 薬師岳と富士山
観音岳から地蔵岳を振り返る 賑わいの観音岳山頂 観音岳から望む薬師岳と富士山

【薬師岳】
観音岳から薬師岳への道は急な傾斜もなく白く輝き、展望は雄大、まさに天上の楽園の稜線漫歩だ。薬師岳山頂は広い白砂の平地に石と這松が点在し、岩の塔が2つ、平地の端と窪地を挟んだ対岸にある。対岸の岩に行ってみると、こちらが山頂の最高点だろうか。最上部は2つに引き裂かれた岩だが、薄くて上れない。岩の後ろに山梨の町並みが見えた。平地に戻り、先ほど観音岳でアルファ米に水を注いでおいたものがちょうど1時間経ったので、食べた。

薬師岳への道 薬師岳山頂 薬師岳山頂 北岳
薬師岳への道 薬師岳山頂の2つの岩塔の間に富士山 薬師岳山頂と北岳
薬師岳山頂 観音岳 薬師岳山頂 間ノ岳 白峰三山
薬師岳山頂 背後は観音岳 薬師岳山頂 背後は間ノ岳 白峰三山(観音岳付近から)

【中道の下山路】
天上の楽園にいつまでも居たいところだが、30分余経ったところで、午前11時、下山を開始。青木鉱泉まで標高差1600m余の中道というこの道は、さしたる目印もなくひたすら下るだけだから、専ら効率的な下山に使われるのかと思ったが、登ってくる人もいるので意外だった(鳳凰小屋までの標高差より400mも多く、良い選択肢とは思えない)。コース中の唯一の目印とも思われる御座石は、上から転がってきたのか、大きい岩で、薬師岳から約1時間の場所の道の右側にあった。そこからさらに40分ほど下った所ですれ違ったご年輩の夫婦が今日の最後の上りの登山者で、この分では薬師岳小屋に着くのは4時頃かと思われた。
下山は一気に下ってしまいそうだが、前回、奥多摩の石尾根で、縦走路で脚がつってしまったことを思い出し、イーブンペースで歩き、こまめに休みを取り、腰掛けて休むことを心掛けた。ただ、この下りはきつい急降下が延々と続いたので、休みを心掛けるというよりも、体が休みを要求した。何組かの登山者と前後して下った。途中、笹原で傾斜が緩くなり、平らな場所もあったが、それを過ぎるとまた植林の中のジグザグの急降下が続いた。

中道 御座石 ドンドコ沢
中道の急な下り 御座石 ドンドコ沢を渡り青木鉱泉はすぐ

【青木鉱泉へ】
下界が近づくにつれ暑くなり、大汗をかいた。沢音が次第に近づき、水場で頭に水をかけ生き返ると、程なく林道に出会い、小武川に沿って道を歩き、最後にドンドコ沢を渡り、青木鉱泉に着いたのは午後3時。4時間の下りだった。今回から新しい靴を履いたので、下山で足の親指の爪を痛めることもなく、幸いだった。
青木鉱泉に入浴した。入浴料1000円。浴室は狭く数人で一杯だったが、湯は熱く心地よかった。午後4時20分、車で帰路に就く。中央道はいつものように都県境のトンネルで2時間の渋滞があり、5時間かけて9時20分、自宅に着いた。
この日、関東甲信を含む広い地域で梅雨が明けた。2日間天気に恵まれ、稜線漫歩も、登りと下りも、満足の山歩きだった。

【行程】
7/17土
自宅発5:12⇒6:04八王子IC⇒(渋滞30分)⇒7:50韮崎IC⇒8:39青木鉱泉

青木鉱泉9:10→ドンドコ沢沢沿い道→9:48山回り道と合流→11:04南精進滝→12:53白糸滝13:08→13:53五色滝14:00→14:55鳳凰小屋

7/18日
鳳凰小屋5:36→6:30地蔵岳オベリスク基部7:35→7:39賽ノ河原7:42→7:52赤抜沢ノ頭7:59→8:48鳳凰小屋からの近道→9:17観音岳山頂9:59→10:25薬師岳山頂11:02→中道→11:57御座石→14:37林道へ→15:08青木鉱泉

青木鉱泉発16:20⇒17:10韮崎IC⇒(小仏トンネルまで渋滞25km2時間)⇒20:36八王子IC⇒21:20自宅着
地図
【標高差】
青木鉱泉1100m→鳳凰小屋2380m→観音岳2840m→青木鉱泉=+1280m+460m−1740m

【歩行時間】 [ ]内はコースタイム
青木鉱泉→南精進滝 [1時間50分] 1時間54分
南精進滝→白糸滝  [1時間30分] 1時間49分
白糸滝→五色滝   [1時間]    1時間
五色滝→鳳凰小屋  [1時間]    1時間02分
1日目合計       [5時間20分] 5時間45分

鳳凰小屋→地蔵岳  [1時間20分]     54分(+山頂1時間05分)
地蔵岳→観音岳   [1時間20分]  1時間42分(+同42分)
観音岳→薬師岳   [30分]         26分(+同37分)
薬師岳→青木鉱泉  [3時間55分] 4時間06分
2日目合計       [7時間05分] 7時間08分(+山頂2時間24分)=9時間32分

【参考資料】
山と高原地図「北岳・甲斐駒」(2008年版)
シモツケソウ(南精進滝) タカネビランジ(観音岳) ホウオウシャジン(薬師岳)

2010/7/29 整理

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