休日の山歩き 25 | 穂高岳 Hotakadake |
[北アルプス] 穂高連峰・奥穂高岳 3190m 涸沢から往復 2010年8月14日(土)〜16日(月) |
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(左)上高地バスターミナル (右)涸沢テント場 奥は涸沢ヒュッテ |
【猛暑の中、初めての北アルプスへ】
梅雨明けから日本列島各地で記録的な猛暑が続いた。まとまった休日が取れるお盆の時期に、初めての北アルプス行き、穂高岳登山を計画した。行程は、上高地から涸沢に入り、テントで2泊して奥穂高岳へ往復だ。木曜日、台風4号が日本海を東進し北東北を横断したが、全国的な猛暑は相変わらずで、週末の天気予報も特に問題ない。
【夜行バスで上高地へ】
金曜日、夜になっても一向に暑さが収まらない中、新宿都庁下から上高地行きさわやか信州号の夜行バスに乗った。バスは2台出た。夜道を走行する途中で雨になり、沢渡駐車場で低公害バスに乗り換えた後、午前6時に上高地バスターミナルに着いた時は、大粒の雨がバラバラ降ってきた。
【上高地から涸沢へ登る】
雨の身支度と軽い腹ごしらえをして午前7時、上高地を出発。この時間は観光客はまだ多くなく、登山者と半々位だ。今回のバックパックの重さは自宅を出る時で約17kg、水場が多いから荷物には水1L程しか積んでなく、楽だ。梓川に沿った広い道を多くの登山者と歩く。徳沢で雨の止み間になり、湯を沸かしてカップラーメンを食べた。その後、雨は降ったり止んだりした。
横尾で一休みし、吊橋を渡り、横尾谷を左に見ながら涸沢への道を進む。岩小屋跡を過ぎるとやや山道っぽくなった。本谷橋を渡ると本格的な山道になり、沢を右に見ながら岩っぽい急坂を登る。多くの人が上下に行き交う。雪解け水に雨水が加わって、右手の沢が轟音を立てている。涸沢の下に雪が残っており、ストックを使っておらず滑るのが嫌だったので面倒でもアイゼンを着けたが、雪の箇所は長くなかった。涸沢下の分岐で左に進み、石段の急坂を登って涸沢ヒュッテを通り、午後1時半過ぎ、今日の目的地、涸沢テント場に着き、受付を済ませた(2泊で1000円)。
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徳沢 | 横尾 | 本谷橋(帰路の写真) |
【涸沢テント場】
テント場は、斜面に大小の石がゴロゴロしているが、テント1張り分の平面が多数整えられている。風が吹き下ろしていたので、風除けになりそうな石の段差の下に、斜面の下方に入口を向けてテントを張った。まず雨と汗で濡れた衣服を着替えてさっぱりし、水やトイレのため涸沢ヒュッテと往復するほか、時間はたっぷりあったが、テント場では周りの人と話すこともなく過ごした。眼前には屏風岩が聳えているが、反対側、涸沢カールの上方は、大雪渓の途中から雲が掛かり、その上は何も見えない。涸沢小屋の右側の沢から白い筋の水が大きな水音を立てて落ちている。天気も回復せず、3分茹でスパゲッティーで夕食を食べ、一晩を過ごした。
【涸沢から穂高岳山荘へ登る】
翌朝、曇っているが雨は降らないようだ。サブザックを背負い、午前6時30分にテントを発ち、登山指導所の横から奥穂高岳に向けてパノラマコースを登る。、見晴台と名付けられた岩の上で、先行する男性とテント場を見下ろしながら話をすると、この人は関西から4人で一昨日から来ており、昨日は悪天候でほとんどの人が登山を中止し涸沢で足止めされたそうだ。同行者3人は仕事があるので無念にも今朝下山したが、自分は余裕があるので残り、今日は穂高岳山荘に泊まる(涸沢に3泊は嫌なので)とのこと。
道は広い雪原を横切り、涸沢小屋からの道と合流すると、先の男性を含め、登山者は結構多い。石でガラガラする斜面をトラバースする。途中、携帯電話が通じる場所があった。次第にガスが掛かりだし、展望が利かない中、黄色い花の咲く花畑を左に見て、ザイテングラートの岩稜登りが始まり、白ペンキの○印や矢印を頼りに進む。ガスで展望はないが、道すがら、高山植物が多い。穂高岳山荘に登り着くと、稜線に上がったためか、風が強まり、ガスは一層濃くなる。頑丈そうな建物の小屋の前は人気もないので素通りし、いよいよ奥穂高への登りに入る。
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見晴台から涸沢ヒュッテを望む | パノラマコースの雪原 | ザイテングラート取付き |
【奥穂高岳に登頂】
奥穂高岳を目指す方向に進むと、石積みの壁の先でいきなり梯子や鎖がある。また濃い霧で視界が利かない。白いワイヤーが目に入ったのでそれに頼って左に進んだが、その先で道は細くなり、次の白ペンキの表示が出ない。しばらく様子を見たが上下どちらからも人が来ないので、間違ったと思い戻ることにした。すると男性が1人やはり間違えて入って来たので、一緒に戻った。先ほどの白いワイヤーは登山者のためでなく、落ちそうな石を止めるか何かのものだった。反対の右側にはっきりとペンキの表示があったが、霧と眼鏡が曇ったのとで目に入らなかったのだ。そのまま間違った道を進んだら危ないところだった。その後、眼鏡を外して進路を確認しながら慎重に進んだ。その先で、矢印と×印を組み合わせた表示で、表示の意味を取り違えて細い尾根に少し進んでしまったが、霧が掛かってなければ反対側に大きな山体が見え、間違えようのない所だ。
大変な思いをしながら登り、強風と霧で顔がずぶ濡れになり、ズボンも濡れてきたので合羽のズボンを出して履くことにした。道が左へ曲がり込む所で、前後して登った人が何人か下りてきて声を掛けてくれたので、山頂も近いと思われた。午前10時過ぎ、奥穂高岳山頂に着いた。涸沢から3時間半余。入れ替わりに先着の2人が下山し、しばらく誰も来ない。山頂には石積みが2つあり、一方の石積みには祠と山頂の表示、他方には方位展望盤がある。2つの石積みの間は足場が悪く、濃い霧に包まれ風が強く辺りは何も見えず、とても長居できる場所ではなかった。5分で下山した。
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奥穂高岳山頂 | 穂高岳山荘(帰路) | ザイテングラート取付きの花畑 |
【穂高岳山荘から涸沢に戻る】
穂高岳山荘に下りると、風が収まっている。緊張感のある歩きから解放され、達成感に浸りながら、石積みのテラスで湯を沸かしマジックパスタを食べた。他に休む人も多くなってきた。
ザイテングラートを下り、涸沢テント場が見え出すと、ようやく気分もゆったりし、雪原を避け涸沢小屋を通り、午後1時半、テント場に着き、まずはビールで祝杯を挙げた。すぐ隣では、私と同様に昨日来た夫婦連れがテントを撤収している。奥穂高登頂を果たし、今日は徳沢テント場に泊まる(来る時見たら良さそうだったので)とのこと。なるほどと思った。
【涸沢テント場での2泊目】
今日は汗も余りかかなかったので着替えはしないことにした。夕食後、持参の焼酎を水で割って飲み干し、午後6時に寝袋に入ったが、すぐに寝付けず、小用に行きたくなったのでテントから出た。すると、夕暮れで空が赤くなる中、涸沢カールの雪渓の上の雲が晴れて、正面の吊尾根がくっきりと姿を現しているではないか。周りの人に聞くと、つい今し方からとのことだ。左手の涸沢ヒュッテ上方の峰も見えてきた。右手には涸沢岳、その左のコルには穂高岳山荘も見えてきた。この小屋に泊まった人はきっと歓声を上げていることだろう。さらにその左、奥穂高岳山頂付近も少しずつ雲が取れてきたが、日が沈みだんだん暗くなり、やがて再び全体に雲が掛かってきた。時間にして、6時50分から7時05分にかけての10分余の出来事だった。
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涸沢ヒュッテ | 涸沢カールの大雪渓 | 涸沢小屋 |
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屏風岩 | 涸沢ヒュッテのテラス |
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吊尾根 | 穂高岳山荘の建つコル | 奥穂高岳山頂付近 |
【涸沢から下山】
涸沢での3日目の朝、天気は曇り、テントを撤収し、6時20分に涸沢ヒュッテを発った。涸沢下の雪は一段と小さくなっていた。本谷橋までの急坂は上り下りの登山者が多くさながらラッシュアワーのようだった。横尾の先では観光客も徐々に多くなり、天気が回復し日も差してきた。昼食は徳沢でアルファ米に水を注ぎ1時間後に明神で食べることにしたが、明神では観光客が圧倒的に多く、ガスコンロで湯を沸かすのは控えた。
12時前に上高地に着き、まず、チップ式トイレを借りて2日ぶりに衣服を着替えた。上高地を12時40分発のバスで出発、松本で15時19分の新宿行き特急電車に乗り、18時過ぎに帰宅した。奥穂高の霧と強風、上高地の涼しさは思い出の中に消えていき、都会の酷暑の中に舞い戻った。
【穂高岳の花】 ( )で場所を記すもの以外は、ザイテングラートの途中で撮ったもの。 |
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シナノキンバイ | ミヤマキンポウゲか (ザイテン取付きの花畑) |
ミヤマダイコンソウ | ミヤマキンポウゲとハク サンイチゲ(見晴台の上) |
ハクサンイチゲ (見晴台の上) |
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チングルマ (涸沢小屋の上) |
クルマユリ (見晴台の上) |
ヨツバシオガマ | エゾシオガマ(中)と タカネウスユキソウ |
ハクサンフウロ |
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ハクサンフウロとアキノ キリンソウ (テント場) |
リンドウ | (本谷橋の下) |
ヤマホタルブクロ (横尾の下) |
【行程】 8/13金 自宅21時過ぎ発⇒新宿23:00発夜行バス⇒上高地6:00着 8/14土 雨 上高地バスターミナル7:05→7:54明神→8:40徳沢9:15→10:12横尾10:38→11:43本谷橋11:50→13:26涸沢下(涸沢ヒュッテ・涸沢小屋の)分岐→13:35頃涸沢ヒュッテ→13:40涸沢テント場(泊) 8/15日 曇 涸沢6:30→パノラマコース→見晴台7:05→ザイテングラート取付き7:50→8:54穂高岳山荘8:58→10:05奥穂高岳山頂10:10→10:50穂高岳山荘11:21→12:15ザイテングラート取付き12:18→涸沢小屋→13:30涸沢テント場(泊) 8/16月 曇後晴 涸沢テント場→涸沢ヒュッテ6:22→6:29涸沢下分岐→7:44本谷橋7:47→8:38横尾8:48→9:39徳沢9:53→10:31明神11:03→11:48上高地バスターミナル 上高地12:40発バス⇒新島々から電車⇒松本15:19発特急あずさ⇒立川17:39着⇒自宅18時過ぎ着 【標高差】 上高地1505m→涸沢約2300m→奥穂高岳3190m=±795m±890m=±1685m 【歩行時間】 [ ]内はコースタイム 1日目 上高地→涸沢 [6時間10分] 6時間35分(約30分休憩1回含む) 2日目 涸沢→奥穂高岳 [3時間20分] 3時間35分 +山頂休憩 5分 奥穂高岳→涸沢 [2時間] 3時間20分(約30分休憩1回含む) 3日目 涸沢→上高地 [5時間10分] 5時間26分(約30分休憩1回含む) |
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【参考資料】 山と高原地図「槍ヶ岳・穂高岳」(2010年版)、日本百名山を登る・下(昭文社2003年) |
2010/8/24 整理 8/27、2011/9/3 修正