休日の山歩き 8 大菩薩嶺(だいぼさつれい) Daibosatsurei
[奥秩父] 大菩薩嶺(2057m) 大菩薩峠から
2008年11月2日(日)
大菩薩峠と富士山 合成 トップページ
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親不知ノ頭付近から大菩薩峠を見下ろし、富士山を遠望する

週末の3連休は天気がよくなりそうだ。山歩きは2回続けて北関東へ出かけたから、次は南へ戻ろう。そうだ、空気も澄んできたから、富士山がよく見える所へ行こう。ということで、大菩薩嶺に行くことにした。
ガイドブックでは、バスを利用して大菩薩登山口(裂石)から車道歩きでスタートするコースを紹介する一方、マイカーの場合は上日川峠まで車で入るとしている。後者の場合、歩き足りなくて例えば石丸峠の周回を付け加えるとすると、上りに唐松尾根、下りに石丸峠で、福ちゃん荘と大菩薩峠の間の由緒ある区間を歩かないことになる。そんなことを考え、ガイドブックも紹介する丸川峠を周回するコースを歩くことにし、車で丸川峠分岐の駐車場まで入り、下部の車道歩きを節約することにした。課題は、丸川峠分岐の駐車場の収容力だ。そのように計画し、中里介山の長編小説「大菩薩峠」のことなどをちょいと調べて、就寝した。

【登山口までの往路】
午前5時前に自宅を出発、中央道を八王子ICから勝沼ICまで走行し、大菩薩ラインの名が付いた国道411号で甲州市塩山を抜け、大菩薩登山口に至る(標高890m)。「雲峰寺駐車場」で「裂石公衆トイレ」を利用し、もう一つ駐車スペースを見送り、目的地の「丸川峠分岐駐車場」(標高1020m)に着いたのは午前7時前、ほぼカーナビの予想どおりだ。既に車が4台ほど止まっており、全部で10数台止まれそうだ。

【丸川峠分岐駐車場から上日川峠に登る】
靴を履き替え、7時に出発した。車道を歩き始めると、さらに上を目指す車が次々通っていく。車道に沿って山道があり、この道は一旦車道と出会った後、橋を渡って千石茶屋(ただし塩山市の標識では仙石茶屋)の前を通り、本格的な登山道になる。広葉樹(ブナ、ミズナラ)の葉が半ば落ち、半ば黄色や赤になって残り、林の中はすっかり秋の気配だ。人の背丈ほどの深さのある溝状の道をぐいぐい登り、汗をかきながら、高度を稼いでいく。木立の切れ目から見える車道も急傾斜で登っている。第2展望台からは紅葉した隣の尾根の後ろに南アルプスとおぼしき遠くの山並みが見えた(第1展望台には気づかなかった)。やがて木の下に笹原が広がってきて、登りが緩やかになり、木切れに「暖かいきのこ汁あと3分」と書いた広告?があり、ロッジ長兵衛のある上日川(かみにっかわ)峠に着いた(標高1530m)。

丸川峠分岐駐車場 千石茶屋 紅葉
丸川峠分岐駐車場 千石茶屋 紅葉

【上日川峠から大菩薩峠を目指す】
既に多くの人が行き交っている。さすがにこちらは大駐車場で、陽気な整理員が車をさばいている。なるほど、裂石や丸川峠分岐の駐車場が満杯になれば、ここまで車で上がるしかない訳だ。ここで汗を拭いて一息つき、大菩薩峠を目指す。峠から峠への道ということは、既に山の稜線を歩いているということで、確かに、傾斜が優しくなっている。小さい子供連れの家族も多く歩いている。上日川峠から登山をスタートする人は、だいぶ楽をしているはずだ。福ちゃん荘までは山道の右側を車道が並行して通っているが、その車道を6台以上のタクシーが上り下りしていた。案の定、福ちゃん荘に着くと(標高約1650m)、20人以上の団体が準備運動をしてまさに登山を始めようとしていた。さらに楽な登山か。ここから大菩薩嶺に直登する唐松尾根が始まるので、団体がどちらに行くか分からないが、とりあえず、団体より前にここを発つに如かず、で大菩薩峠を目指す。
葉の落ちた木立から日の差す明るい道を歩き、次の富士見山荘を急ぎ通り過ぎようとして、何気なく右を見てはっとした。「大菩薩名物富士見平の富士」という展望台があり、今朝一番の富士山が、左右に長く裾野を引いて、ゆったり横たわっている。雪が山頂から左下に向かって一筋あるだけだ。危うく大事なものを見落とすところだった。「富士見」という名前に要注意だったのだ。前回見た富士山は新潟県からだったが、ここはまさに山梨県、富士山の格が違う。しばしみとれた後、先を急いだ。次の勝縁荘までが車が入れる限界で、その裏手の坂を上っていると、先ほどの団体が追いついてきたので、急ぐことにした。途中、富士見ポイントがまた一つあり、やがて、介山荘のある大菩薩峠に着いた(標高1897m)。多くの人で賑わっている。

上日川峠 上日川峠 ロッジ長兵衛 福ちゃん荘
上日川峠。駐車場は手前右と奥の正面と右 上日川峠 ロッジ長兵衛 福ちゃん荘
富士見山荘 富士見山荘の富士山展望台 勝縁荘
富士見山荘 富士見山荘の富士山展望台 勝縁荘

【大菩薩峠からの展望】
大菩薩峠の標識は、山梨県の看板と、甲州市の角柱の2つが並び立っている。ここからの展望は、今登ってきた西面には麓の塩山の街並みと、南アルプスの峰々が横一線だ。南のすぐ下にはダム湖がある。東面には奥多摩方面の一部が見える。

大菩薩峠 介山荘の賑わい 親不知ノ頭から大菩薩嶺の方向
大菩薩峠 介山荘の賑わい 親不知ノ頭から大菩薩嶺の方向
大菩薩峠から一望する南アルプスの山並み 合成
大菩薩峠から一望する南アルプスの山並み。左に赤石岳など、中央に北岳など、その右に鳳凰三山、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳

【大菩薩峠から大菩薩嶺への稜線漫歩】
展望を楽しみ、弁当を食べて、大菩薩嶺に向けて、植生保護のため張られたロープの間の稜線歩きに入った。中里介山の記念碑などを見ながら登ると、南側の山に隠れていた富士山が現れてきた(このページ冒頭の写真)。次の親不知ノ頭でも展望を楽しみ、賽の河原を経て、南アルプスの展望などを重ねて楽しみながらの稜線漫歩。神部岩には、塩山市が2000年に設置した標高2000m地点の標識があった。雷岩では、多くの人が憩いの時を過ごしていた。そこから木立の間を少し登ると、今日の最高地点、大菩薩嶺だ(標高2057m)。樹林に囲まれているが、葉を落としており、少し明るい。多くの人が訪れては去っていく。

中里介山の記念碑 賽の河原 神部岩 雷岩付近からのダム湖と富士山
中里介山の記念碑 賽の河原 神部岩 雷岩付近からのダム湖と富士山
雷岩 大菩薩嶺 大菩薩嶺
雷岩 大菩薩嶺 大菩薩嶺の賑わい

【大菩薩嶺から丸川峠を経て駐車場へ下山】
ここから丸川峠を目指して、針葉樹(コメツガ)の間を下りていく。上り下りの登山者は、思っていたより多い。途中、富士見ポイントで食事をしていた男性は、地元勝沼の人で、大菩薩は今年4〜5回目で、こんなに南アルプスの山並みが見えるのは希だと言っていた。やがて丸川荘のある丸川峠に着く(標高1680m)。
ここから裂石を目指しての下山路は、ススキの平面を少し歩いた後、にわかに急坂になり、広葉樹の様々な紅葉を楽しむことはできるものの、長い急降下が続く。やがて両側から沢が近づき、沢沿いの道になり、朝の駐車場に出た(標高1020m)。帰り支度をしていると先ほど話をした男性も下りてきて、八ヶ岳の花の見頃のことなどを教えてもらった。

丸川峠 丸川荘 丸川峠のススキの原からの富士山 急坂の紅葉
丸川峠 丸川荘 丸川峠のススキの原からの富士山 急坂の紅葉

【行程】
6:59丸川峠分岐駐車場→7:10千石茶屋→7:40第2展望台→8:10上日川峠8:23→8:42福ちゃん荘→8:48富士見山荘→8:54勝縁荘→9:20大菩薩峠10:04→10:15親不知の頭→10:25賽の河原→10:45標高2000m地点→10:56雷岩→11:04大菩薩嶺11:18→12:12丸川峠→12:20急坂始まる→13:07沢沿い→13:20丸川峠分岐駐車場

【帰路は渋滞】
帰路は、午後2時に駐車場を出発し、中央道には下りずに、青梅街道の名が付いた国道411号を登って都県境を越えることにした。高速道路を使うより距離が短く、カーナビの予測では30分ほど余計にかかるが、中央道の都県境のトンネルの渋滞を考えると、結構得策ではないかと思ったからだ。途中、急カーブを登り、最後の富士見ポイントを経て柳沢峠を越え、順調に走行し、雲取山の登山口である鴨沢バス停から先は勝手知ったる道だ。各バス停では多くの登山者がバスを待っており、さすが秋のベストシーズン、1台では乗り切れないのではと他人事を心配しながら走ると、奥多摩駅を過ぎたあたりから断続的に渋滞しだした。世の中は甘くない。結局、カーナビの当初の予測より2時間弱余計にかかり、午後6時過ぎに自宅に着いた。

地図
【追記】
大菩薩峠から奥多摩方面の展望は、南アルプスに比べてあまり良い写真が撮れなかったので、省略していた。その後、鷹ノ巣山に登り、大菩薩嶺方面が望めたので、大菩薩峠の側からの奥多摩方面、石尾根の展望も載せることにする。 

【参考資料】
関東の山あるき100選(昭文社1998年)、関東日帰りの山ベスト100(実業之日本社2006年)

2008/11/7整理、11/17追記

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