越後・北ノ又川本流(滝ノ沢)


           1990.9.15〜16 永瀬、山野辺、吉越、佐々木、吉田

 9月15日(朝曇りのち雨) 小出から予約しておいたタクシーで銀山平の石抱橋へ着くと、ようやく夜も明けかかる。北ノ又川沿いの車道を進み、途中から銀の道と呼ばれる踏み跡を利用して白沢林道に上がる。白沢沿いにかなり入ってから踏み跡に従って本流へ。白沢を渡ってから左から右に回り込んだあたりで本流へ下ればよかったが、進みすぎて道が不明瞭になったので少しヤブを漕いで本流に降り立つ。6時15分。異様な朝焼けが気になる。

 しびれるくらいの冷たい水だ。すぐ深いトロで、岩魚沢をすぎて右に曲がると本流はゴルジュに絞られ深い淵になっている。箱淵である。右岸から急登して大きく巻く。途中から下降を試みるが悪く小沢を利用して下った。夜明け時は青空ものぞいていたが、早々と雨が落ちてきた。小滝、淵が続く。

 8時25分、滝ハナ沢を過ぎると両岸草付のトロになり左岸の草付をトラバースしたあと腹までつかってトロを抜ける。いよいよ本降りとなり不安がつのる。9時、芝沢出合から本流はゴルジュとなり、左岸リッジ状から取り付いて長い高巻きを強いられる。踏み跡はかすかについている。対岸に険悪そうな大ビラヤス沢を見てから小沢を下降してみると、本流は次第に増水し始めてきた。徒渉も肩組しなければ危険となった。

 左岸を進むが板倉沢が本流よりもすごい濁流となって注いでおりビビる。出合付近の10cmほど冠水した平石を飛び石で板倉沢を渡る。再び左岸高みへ追いやられる。何とか本流を遡りたいと前進を試みるも(永瀬、佐々木)、もはや濁流はへつろうとする体をはがす勢いとなった。

ズタズタの雪渓 そのまま高巻きに入り、待たせている3人にもその場から高巻いてもらう。途中、先頭の永瀬氏が泥土に足をとられて滑落、20m下の本流まで落ちるが、たまたま急流でなく事なきを得る。

 再度本流に下降すると8m二条の豪快な滝に阻まれる。通常の水量なら直登も可能だろうが、この水勢では望むべくもない。右から小さく巻いてみる。下降支点のシュリンゲがあったが本流に下りても進めそうもない。そのまま高巻きを続けて小沢を下るとやや流れの緩やかなシッカイ沢出合だった。14時10分。肩組して右岸に徒渉する。

 ここから本流は核心部を迎えるようで滝が続いているので、右岸を大きく巻いてオオヒカバ沢出合を目指すことにする。所々に露岩が出てきてどんどん上に追い上げられる。カモシカ道らしい岩基部のバンドをつたってうまく進んでいくが、その先スッパリと切れ落ちて前進不能。

 本流から200mも上がっただろうか。左手前方に円形劇場のような地形の岩場が見える。仕方なく岩壁基部を戻り、さらに上へ上へと高巻いていく。左へ回り込むようにしてトラバースしていく。やや下り気味となり急峻な小沢を横切るとき、本流には10mほどの滝と、その下流で左に直角に曲がったゴルジュが見えた。ドウドウとものすごい水勢である。小沢を横断しさらに進もうとしたが、日没が迫ったので行動中止とする。18時。小沢をわたった岩の基部に戻りツエルト2張りを設営。狭く傾いているので横になれず非常につらいビバークとなった。

幻の滝15m 9月16日(晴れ) 7時出発。さいわい雨は夜半に止んでくれた。寒くてウツラウツラとしただけだった。天気は回復したし、だいぶ減水したようなので予定通り前進する(しかない)。ビバーク地は10m滝の高巻きルート上らしく懸垂下降の支点に使ったシュリンゲがあった。そのまま木にぶらさがりながら本流に降り立つと、そこはいい幕場だった。ウーン、昨日ここまで来ていれば……。ゴルジュ内の3m滝を右から巻き、さらに次の小滝を左の草付から巻く。小滝は現れるものの岩盤が発達した開放的な渓相で遡行ははかどる。シッカイ嵒沢付近は河原で良い幕場だ。8時5分。

 この先は雪渓の状態が気にかかり油断はできない。見事な直線のV字谷となって1kmも続くが、スノーブリッジがあれば悪い高巻きとなる草付が両岸に広がっている。稜線も指呼の間に迫ってきた。右に沢が曲がると狭いゴルジュにCS滝がかかり、右岸のリッジ状を30m登り草付をアイスハンマー頼りにトラバースして、最後は5mのクライムダウン。

 ゴルジュの小滝はなお続くが、いよいよズタズタの雪渓が現れ始めた(写真上)。上に下にと処理していくとどんづまりに垂直の15m滝(通常なら雪渓下の幻の滝?=写真中)があり、両岸高い草付壁となる。

滝沢を登る 左岸の赤いボロ壁を20m登って草付をトラバースしてから、小尾根上まで急なボロ壁を10m直上するが非常に悪い。アイスハンマーもろくに打ち込めず、ずり落ちてしまいそうだ。コエーッ! 先に登った吉田君からお助けシュリンゲを垂らしてもらい何とか登りきる。10時10分。小尾根の反対斜面は緩やかな草地で、すぐ下は滝沢とアサズキ嵒沢の二俣の大きな雪渓が広がっている。アサズキ嵒沢は悪そうな滝をかけてせり上がり、滝沢も連瀑となっていた。

 雪渓に下り横断して滝沢左岸の乾いた岩を快適に登っていく(写真下)。ようやく楽しい普通の沢登りになり余裕もでてきた。困難な滝はなくどれも2〜6m程度だ。水が消え草付をやや右寄りに登り、若干のササを漕ぐと鞍部より少し中ノ岳寄りの登山道に出た。12時30分。

 十字峡の分岐まで頑張って大休止、ゆっくりコーヒーをわかす。膝をがくがく言わせながひさしぶりの十字峡に下る。16時50分。ダム建設が進みかつての雰囲気はなくなっていた。野中へ向け歩き始めて10分で、幸運にもワゴン車に拾われて小出駅へ向かった。

 【コースタイム】 (9/15)銀山平5:05 北ノ又川入渓点6:15〜7:00 滝ハナ沢出合8:25 芝沢出合9:00 板倉沢出合10:40 シッカイ沢出合14:10〜30 B.P.18:00〜(9/16)7:00発 オオヒカバ沢出合7:25 シッカイ嵒沢8:05 滝沢手前高巻き小尾根上10:10 滝沢左俣先10:20〜40 稜線12:30 十字峡分岐13:10〜14:00 十字峡16:50〜17:00 ヒッチハイク地点17:10

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