大雪山系・クワウンナイ川


1979.8.8〜11 佐々木、小野

 3年前に増水のためほうほうの体で逃げ帰ったクワウンナイ川。過去2回行った北海道の山は雨にたたられたが、今回は4日間とも好天に恵まれとことん楽しむことができた。

 8月8日(晴れ) 上野発6日19時8分発の急行八甲田に乗り、青森から連絡船で函館へ渡って旭川に着いたのは7日18時29分。8日8時30分発のバスで天人峡に9時39分到着。長旅のせいか小野は「どうも乗らない」と、北海道に来た実感がわかないらしい。天人峡から少し戻って忠別川に架かる橋から本流左岸の踏み跡をポンクワンナイ川出合いまで辿ってクワウンナイ川に下りる。10時22分。踏み跡はさらに断続して続いているようだ。

 水量はさほどでもなく夏の日差しは強く、絶好の沢日和である。函を右岸から巻いていくと見覚えのある柱状節理があった。クワウンナイ川下部は荒れた河原が大半で所々分流している。特徴ある岩峰が左前方に見えてくる。800m二俣を過ぎるとイワナのポイントが目に付くので小野が竿を取り出す。なかなかあたりがなかったがやっと1匹釣れる。

 3年前の幕場を過ぎ、釣りをしたがる小野をなだめて化雲沢出合までとにかく行くことにする。940m台地のサイト地はなかなかいい幕場だ。15時20分着。ひとふんばりで二俣。右岸の砂地を泊場とし 釣りに出かける。小野は下流へ出かけ1匹、ぼくは泊場周辺で5匹釣り上げ、合計7匹の釣果。夕食・酒のつまみにはこれで十分だ。流木も豊富で一晩中焚き火する。ツエルトをかぶっただけのビバークも露がおりなかったのですこぶる快適だった。

 8月9日(晴れ) 5時55分出発。釣りをしながら進む。荒れた感じから左にカーブしていくと最初の滝が幅いっぱいに豊富な水を落とす(写真)。左岸を登ると滝の上は岩床が続きさらに10mほどの幅広の滝となっている。右岸を水線に沿って登る。そこはもう滝の瀬十三丁だ。シャーシャーと岩床を流水が洗い、厚みのあるコケのクッションの上を歩くのは何ともいえない気持ちよさがある。ナメ床が延々と続き奥二俣で黄金原からの沢が滝で合流すると、本流はほぼ直角に左に曲がる。こんどはやや傾斜が強まってナメ滝に近くなる。黄金原からクワウンナイ川左岸に延びる尾根に点々と残る雪渓が緑に映える。

 途中、小野のフェルトワラジのかかと部分が切れた。1200円もしたのにとしきりに悪態をつきながら修理していた。ナメに気を取られ放心してしまったのか、今度はぼくがその場にカメラを置き忘れてしまい、かなり登ってから取りに戻った。滝の瀬十三丁はそれだけすばらしかった。いったんゴーロとなりオーバーハングの滝はかなり手前から右岸を大きく巻く。一カ所岩が露出していて手がかりがない部分があるが強引に登る。沢に下りたところに幕場があった。

 さらに登っていくと陰鬱な感じの二俣の滝。本流は二段30m滝、右俣は小さいが岩をU字形にうがって水を落とす滝で、中間尾根から高巻く。さすがに源流の感となり足下をすくう水勢はなく、岩から岩へ飛んでいく。階段状の滝を左から巻くと、もうそこは高山植物が群をなし、稜線が近いことを知る。最後の雪渓と沼(ここはカール状の好サイト地でお花畑となっている)と別れて、大岩地帯から稜線へ出た。11時25分。「ああ、登ったなあ」と3年越しの沢恋にも決着をつけることができた。

 トムラウシ山(2141m)を目指して一段登ると殺風景というか端正ともいえる日本庭園に出た。ここからのトムラウシは岩礫の積み重ねのようで荒々しい。下ったところが雪渓も豊富な北沼だが、虫も多かった。ナキウサギが鳴く岩礫の中をヒーコラいいながら頂上へ。12時52分着。ちょうど現役が予定通りだと南沼へ来るはずなので行ってみた。パイナップルとイワナの手みやげをもっていったら大歓迎された。13時50分着。

平ケ岳から大雪山 8月10日(晴れ) 今朝はかなり寒かった。5時、現役の寝ている間に出発する。すごい雲海が広がっている。トムラウシは昨日登っておいたので巻き道を利用する。天沼で水を補給する。岩の突起が目立つ化雲岳(1954m)へゆるやかな勾配を登っていく。ヒサゴ沼からどこかのワンゲルパーティーがピープーと楽隊のようにクマよけの笛を吹きながらトムラウシへ向かっていった。化雲からの展望は素晴らしい。忠別川の深い切れ込みをはさんで大雪がグッと近くなった。縦走路を眺めると左手には断崖と雪渓が続き雄大だ。

 化雲から五色岳へ向かってほんの少しで湿原が現れる。多くの高山植物やキスゲが咲いており、うならざるを得ない。石狩岳やニペソツ岳の山稜のシルエットをバックにした景色も最高だ。ピークらしくはないが眺めのいい五色岳から忠別岳(1963m)までがきつかったが、途中のコマクサの大群落には驚いた。10時10分、息切れしながら忠別岳着。西側(忠別川側)はガクンと切れ落ちている。

 朝の炊き込みご飯を無理矢理腹におさめながら見るトムラウシはもうはるか彼方だ。雄大なコースの稜線漫歩となる。忠別沼のキスゲ群落もひときわ印象的で、平ケ岳(写真)周辺からは右下に雪渓から流れた水で沼がいくつもあった。大ケルンの立つスレートが丘からはもう白雲石室らしき建物も見えてきた。石室に登り詰めるころには今までで最高の密度で高山植物が咲いていた。大した疲労も感じなく余力を残して石室に入った。14時25分。

 8月11日(晴れ) できるだけ下山を早めようと4時10分出発。きょうもすごい快晴となった。白雲岳を回り込んでいくと大雪の峰が現れる。とがった山は烏帽子山。御鉢平をはさんで北鎮岳、比布岳も見える。間宮岳からキャンプ地のある鞍部へと下り、雪渓と登りにくいザクザクの斜面を旭岳(2290m)へと登った。「よく歩いたもんだ」とトムラウシ方面をあらためて眺める。下を覗くと噴煙を上げる地獄谷がすさまじい。ずっと下に勇駒満別温泉が見えた。8時17分、ロープウエー姿見駅着。12日11時すぎに帰京。

 【コースタイム】 (8/8)天人峡温泉10:00 ポンクワウンナイ川10:22 二俣11:45〜12:20 化雲沢二俣15:20〜(8/9)5:55発 最初の滝7:25 滝の瀬十三丁7:50〜55 オーバーハングの滝9:00 二俣の滝9:17〜47 階段状の滝10:05 稜線11:25〜40 北沼12:25〜30 トムラウシ山12:52〜13:35 南沼13:50〜(8/10)5:00発 日本庭園5:45〜55 天沼6:35〜50 化雲岳7:40〜55 五色岳8:45〜55 忠別岳10:10〜11:30 白雲石室14:25〜(8/11)4:10発 間宮岳6:00〜20 旭岳7:05〜30 姿見駅8:17


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