南会津・黒谷川大幽東ノ沢〜白戸川メルガ股沢下降


1998.9.12〜14 佐々木、小林

 会津の山々は学生時代から好きだったが、おいしい所は後回しというわけか、これまであまり足を踏み入れて来なかった。あちこち体にガタが出始めたこのごろ、気になるところは登っておきたい気持ちが湧いてきた。丸山岳への定番ルート・大幽東ノ沢から白戸川をつなぐ沢旅は、天候にもめぐまれて存分に楽しめた。

 9月12日(晴れ) 只見線の便の悪さから、東京発午前11時となる。いずれこの路線も第三セクター鉄道になるのだろうか。車を運転しない主義の山猫ワンダラーとしては、地方の公共交通衰退は由々しき状況なのだ。只見駅前ですぐタクシーに乗り、黒谷林道を大幽沢出合のゲートまで入る(5790円)。大方釣り人だろうが、車が10台ほど駐車していた。

 きょうは東ノ沢出合までなので足を濡らしたくなく、黒谷川本流の鉄橋を渡り大幽沢左岸の道を行く。結構アップダウンがあり、大粒の汗がしたたる。取水ダムでいったん沢に降り立つと、ちょうど釣り人が大物を釣り上げたところだった。細くなった踏み跡をさらにたどって東ノ沢出合までちょうど1時間だった。沢中を来てもほぼ同じだろう。裸足で対岸に渡ると先客の釣り人の幕があった。

 9月13日(晴れ) きょうは丸山岳頂上あるいは、さらにメルガ股沢まで下降したいので、6時前に出発。沢そのものは何もないので気楽だ。気をつけるとするとヌルで滑って思わぬケガをしないことくらいだろう。15分で大岩帯を抜けると左岸に段丘が続く。2時間ほどでゴルジュっぽくなり、へつったりしながら通過していくと小滝と深い淵にはばまれる。少し戻って泥つきルンゼ状から巻き道に上がり窪の沢出合まで巻く。

 東ノ沢出合に泊まっていた釣り人がいて我々を見て驚く。出発はこちらの方が早かったが、彼らは廊下入り口から早々に高巻き道に入ったため、廊下内で1本立てた我々を追い抜いたらしい。ヨシノ沢に入ると真夏のような強い日差しが注ぐ。二俣では西沢を下降してきた2人に会う。詰めで登れない滝とガレが現れてビバークし、頂上に行けず戻ってきたという。そんなとこあるんかいな。

池塘と丸山岳 西沢は傾斜が増していくつかの滝を越え、標高1400mの二俣で水量の少ない左沢に入る。すぐ垂直の3m滝がある。これを詰めるとほとんど藪漕ぎなしで主稜線の鞍部に出る。まだ13時15分で、のんびりと来た割には早かった。が、踏み跡があるだろうとの思惑がはずれ、炎天下のヤブコギに突入。小林さんはちょっとヤブコギがつらそうで遅れがち。

 そろそろ草原が点在するころ西ノ沢を登り東ノ沢を下る3人パーティーにヤブ中で会い、北沢側の窪に入るとすぐ丸山岳の登山道に出られることを教えてもらう。突然草原帯となり立派な道に出たが、鞍部から2時間のヤブコギは誤算だった。丸山朝日沢の気持ちよさそうな源頭を見ながら一登りで丸山岳頂上に着く。かわいい池塘がふたつ。その向こうに会津朝日岳がカッコいい。誰も来ない快晴の頂上にツエルトを張り、夕方まで回りの山々に見入る。

 9月14日(晴れ) またまた快晴で明ける。予備日を使う必要もなく今日中に下山できそうだ。頂上に別れを告げ6時15分発。「メルガ股沢〜袖沢乗越」は、昨年の永瀬パーティーのアンチョコがあるので安心だ。会津朝日への縦走路はすぐヤブに消えた。方向を確認して下り、メルガ股沢の沢床に下りる。4、6mの滝は右岸の枝沢との小尾根から巻く。永瀬氏らが泊まったところだが、石がごろごろしていた。4m滝は真ん中にかかる太い倒木を抱き、股ではさみながらズリズリと下りる。

 ちょこまかと現れる滝はフリーで下れるが、3mのCS滝は左岸から懸垂下降。水量比2:3の平沢を右岸から入れると、穏やかで下りやすくなる。三角沢を過ぎるとイワナが走るようになる。途中、日向ぼっこ中の大きなヤマカガシを怒らせてしまい、鎌首をもたげた勇姿にしばし見とれてしまった。左岸から入る沢に注意しながら下る。出合に赤布が下がる小沢が入ってきたが、これは北沢へ乗っ越す沢らしい。やがて水量を増し、落ち込みの多い闊達な流れになる。

 11時40分、北に流れが向く頃、4mの滝で目当ての袖沢乗越沢が出合った。梱包用のヒモが目印だ。左から登ると左岸が絶好の幕場となっていた(小屋掛け用シートあり)。30分であっけなく袖沢乗越。ろうまん、会津山岳会、ランタン会などの赤布でにぎやかだ。樹間をすり抜ける風が気持ちいい。

 もうひと頑張りでフィナーレだが、最後の下降沢(仕入沢)はひとくせありそうで気が抜けない。赤布に導かれ左の尾根をからんで沢に急降下し、10m滝下に降り立つ。6m滝は危なげな荷造り用細引を利用、続く5m滝は古いフィックスロープを使って下りる。長く感じられた下りも13時40分、目の前がぱっと開けてようやく袖沢本流に出る。対岸の袖沢林道に上がり、奥只見ダムまでさらに1時間25分歩き、17:12発のバスで上越新幹線浦佐駅にでた(900円)。

 【コースタイム】 (9/12)黒谷林道大幽沢出合15:10 東ノ沢出合16:20〜(9/13)5:50発 廊下8:00〜10 窪の沢出合8:25 西の沢出合9:40〜10:00 上の二俣(1400m地点)11:50〜12:10 稜線(鞍部)13:15 会津丸山岳 15:20〜(9/14)6:15発 メルガ股沢沢床6:30〜35 平沢出合9:42〜52 三角沢出合10:25 袖沢乗越沢出合11:40 袖沢乗越12:10〜20 袖沢林道13:40〜14:20 奥只見ダム15:45


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