東北・虎毛山塊・荒雄川保呂内沢西ノ股沢〜春川東ノ又沢下降〜
西ノ又沢〜皆瀬川虎毛沢左俣下降〜赤湯又沢右俣



1990.8.11〜14 佐々木、永瀬、平塚、神

西ノ又沢 8月11日(曇り夜雨) 夜半の台風通過で上野発の電車はベタ遅れ。我々の乗る夜行急行も1時間ほど発車が遅れた。陸羽東線・鳴子駅からタクシーで保呂内橋まで行く。台風の影響で保呂内沢は水量が多く濁っている。しばらくは沢沿いの道を辿るが、堰堤を2つ越えると踏み跡もなくなり、徒渉の連続となる。荒れた渓相から虎毛山塊特有の岩床が現れ、小滝をへつったり巻いたりして、やがて西ノ股出合だ。平ナメで本流と同水量で合流している。

 西ノ股に入るとすぐ、見ごたえのある30mのスラブ滝【左写真】となる。30m手前から右岸を高巻いた後は、しばらく単調な流れとなってしまうが、左に沢が曲がるとようやく滝が続く。いずれもスラブ状のぺろんとしたやつだ。2段15mは、永瀬氏が左を直登したほかは右から小さく巻く。2段12mは直登困難で、右岸の草付きを巻くが悪く、ザイル使用。8m、4mの2段滝は左から一緒に巻く。2段20mは左から佐々木が直登してみるが上段が悪く、落ち口でザイルの準備をしていたら、みな右岸からさっさと巻いてきた。悪場は終わり、ナメ床が断続的に続き楽しい。今日中に稜線を越えられそうもないので、940m付近のわずかな平坦地にツエルトを張る。薪を集めてたき火をするが、午後10時頃から台風が戻ってきたかと思うほどの豪雨となる。

 8月12日(曇り) 出発するとすぐ源頭になり、二俣を左に入って稜線に上がる。右を登れば山猫森に至るはずだが、今回は目的外。右下の小沢にいったん下って詰めなおす。県境尾根を越え秋田県側に急降下して、東ノ又沢左俣に入る。地形図上からも予想した通り、かなり急な沢だ。狭い岩床、小滝を慎重に下っていくと、目の前がパッと開けて、その下はやや大きな滝となっている。永瀬氏は可能なところまでクライムダウンしていく。我々は右岸の太木にザイルをかけて永瀬氏のところまで懸垂下降。神さんは初めての懸垂なので気をつかう。虎毛山が見え、春川本谷大滝がそれと分かる。次の懸垂はハーケン2枚で支点を作る。下は見えず、かなりの急な滝となっている。30mザイルダブルで下まで届くか心配だが、永瀬氏が先に下りてなんとかOKとなる。20mのナメ滝はフリーで下れる。左岸から30mのスラブ滝が合流。本流はゴルジュ状に小滝を連ねており、右岸ブッシュをまとめて支点にし、懸垂で下りる。さらに30mスラブ滝を懸垂下降すると、ようやくおとなしい沢となった。平坦な樹林帯となり左岸から右俣が3:2の水量比であわせる。ゴーロの後、きれいな亀甲模様の岩床が100mほど続く。三滝のひとつである最後の25m滝【沢登りページ扉の写真】は豪快で、左岸から水しぶきを浴びての迫力ある懸垂下降となった。すこし下ると春川本流だ。

春川 増水の影響か水が緑色をしている。15年前に初めて春川に来たときもそうだった。三滝の本流滝10mは水煙をあげている。左岸からは2段30m滝が落ち込み、なかなかの迫力である。お茶を沸かしている間、永瀬さんらが釣り糸を垂れるがあたりなし。三滝の水流ぞいは水勢強く、左からザイルをつけて登る。亀甲模様の岩床は健在だった。絶好の幕場だった万滝沢出合は草が生い茂り、奥の薄暗いところがテント場となっていた。時間的にもまだ早いので、先に進むことにする。最初の小滝を越えると、前回泳いだ滝だ。かなり削られて後退した姿になっているが、釜はより大きくなっているようだ。平塚君が右の壁伝いに泳ぎ、右壁を登る。後続はザイルでひいてもらう。岩がはがれやすいので、落ち口まで登ってザイルを固定する【左写真】。ビビッてしまった神さんのために、その上の屈曲するナメもザイルをつけたまま行かせる。思わず歓声を上げたくなるようなナメと釜のハーモニーを楽しみながら通過すると、右岸に数張りは大丈夫な幕営適地があった。西ノ又沢出合まで行ってみるが、結局戻る。

 ツエルトを張り終えてたき火をしていると、4人パーティーが通過していったが、やっぱり戻ってきた。夜は、彼ら「仙台山の会」パーティーと焚き火を囲んで語り合う。ぼくと同じ高校出身の人がいたり、平塚君の大学ワンゲル時代の友人も会員だということを知り、盛り上がる。ビール、ウイスキー、ワインなど、たらふく飲ませてもらった。夜は満天の星空となる。

 8月13日(快晴) 神さんのビビリぶりから、きのうのうちにダイレクトクーロアールは断念したので、西ノ又沢に入る。仙台パーティーはダイレクトクーロアールに入るという。左岸から西ノ又右俣にあたる戸沢山からの沢を入れる。ぼくらは中俣に入って最低鞍部から虎毛沢に乗ッ越すのだ。ダイレクトクーロアールを登らないのは惜しいが、この溯行ルートラインもなかなか美しいのではないだろうか。8m滝は巻くのも嫌らしく、平塚君に空身で登ってもらい、ゴボウで続く。岩床と小滝が続く。傾斜が出てきて岩滝を4つ越えると3段15m滝。左のクボから高巻きに入り、いったん小沢に下り登り返して落ち口先に下りる。虎毛沢へ向かう沢を分けると、鞍部へ至る小沢を見逃さないように地図と首っ引きとなる。790mの二俣では左の沢に入ると、狭いトヨ状の流れとなる。右から10mが注ぐ。もう一本先の沢だろうと思ってなお登る。振り返るとかなり標高を稼いでおり、登り過ぎたのでは不安になる。次に出会う小沢にとにかく入ってみた。3段25mほどの滝があり、ちょっと取り付きで緊張する。水が消え適当な所から右にヤブを漕ぐ。わりとあっさり尾根を越え、虎毛沢左俣の源頭部に下り立つ。やはり予定の一本上流を登ってしまったらしい。

 岩床を下っていくと、予定していた鞍部からの沢が合流してきた。きれいなナメ床が続き快適だ。どんどん下っていくと4段の大滝にぶつかる。上二段は傾斜のきつくないねじれたナメ状だ。懸垂でおりると下は釜になっていた。さらに廊下の中に5m滝があり、途中まで下り釜にドボンする。次の8mは右岸を下れる。単調な沢となると、右俣出合であった。お茶を沸かし、昼飯とする。大釜の3m滝で永瀬氏が釣り出すがダメ。さらに下流の釜で釣っているとき、平塚君がイワナを手づかみする。永瀬氏はばからしくなったのか竿をたたんでしまった。お馴染みの亀甲模様が現れると廊下状となる。トロは足を前に投げ出し、いわゆるラッコ泳ぎで下る。ネジレた6m滝を右岸から巻くと、両岸大スラブの広がる気持ちいい平ナメだ。天気もよくザックをおろしてのんびりしてしまう。神さんも緊張感がほぐれたのかトロで泳いで遊んでいる。難なく下っていくが、午後4時もすぎたので幕場を探しながら行く。巨岩のゴーロとなり左岸に白い崩壊壁が見える。かつて虎毛沢右俣に来たときに大イワナのいた4m滝を過ぎ、右岸段丘にいい幕場があったのでザックを下ろす。釣り師が使うらしく、古い釜があった。このあたりに魚影は全くなくなっていたのもうなずける。10年前にはずっと下流でも悠々とイワナが泳いでいたのに…。流木を集めて今夜も盛大に焚き火をする。

 8月14日(晴れ後曇り) 天気は下り坂のようだ。30分かからず赤湯又沢出合。出合の3m滝を左から越す。おとなしい渓相なのでどんどん進む。右岸から蒸気が上がっている。近付いてみると、噴気孔からシューシューと蒸気を出している。その先の左岸にももっと大きな蒸気が出ていた。左俣をわけると8mのナメ滝がかかる。まぎらわしい枝沢を確認しながら忠実に本流を進む。稜線が望まれると幾筋かのルンゼが稜線に向かっている。暑く汗がしたたる。振り返ると虎毛山がはるかだ。水が枯れて草付きの中の溝となる。階段状の岩場を越え、左寄りに潅木頼りに急傾斜を登る。バテた神さんを叱陀激励しつつ登山道に飛び出す。右の高松岳避難小屋前で休憩後、高松岳から急な登山道を下る。湯の又温泉で異常な熱さの温泉に入り、タクシーを呼んで横堀駅に向かった。

 【コースタイム】 (8/11)保呂内橋9:00 西ノ股沢出合12:15〜40 940m地点17:30〜(8/12)6:10発 県境稜線7:25 東ノ又沢右俣出合10:35〜55 春川本流12:05〜13:00 万滝沢出合14:40〜15:05 二俣手前17:00〜(8/13)6:10発 稜線乗越9:10 虎毛沢右俣出合11:45〜12:25 580m地点17:00〜(8/14)6:20発 赤湯又沢出合6:45 左俣出合8:50〜9:15 稜線12:15 高松岳避難小屋13:00〜13:50 湯の又温泉15:25



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