欧米文化の波に乗って、牛乳はいまや多くの国でよく飲まれ、料理にも利用されています。戦後の栄養不足時代に全国的に普及したわが国でも、さらに骨粗鬆症対策の一環として、カルシウムの吸収率が高く、しかも「完全食品」である牛乳が推奨されています。しかし、本書(原書は1983年)の「まえがき」や「訳者あとがき」によると、米国ではすでに、牛乳が健康に悪い食品であることは専門家の間では常識になっているとか。 牛や山羊の乳はもともと、アルプス以北のヨーロッパ(魚が捕れず、森ばかりで畑を作るのが大変だった)に進出した人種が、カルシウム不足を補うために摂取するようになったものであり、それでこの人種に乳幼児期を過ぎても乳糖(ラクトース)を分解する酵素(ラクターゼ)を失わない人の割合が多いのです。したがって、少なくとも欧米人にとっては、牛乳は優れた食品なのだろうと思っていました。マーヴィン・ハリスの『食と文化の謎』(下表参照)にも、牛乳中のカルシウムは吸収率がきわめて高いと書いてあるのですが、本書によると、牛乳中のリンが腸管内でカルシウムと結合し、カルシウムの吸収を阻害するので、多くの野菜よりも吸収効率が悪いとのこと。 ジョンズ・ホプキンス大学医学部小児科部長で、小児科学術研究協会会長でもある著者は、カルシウムの吸収率が低いことに加えて、牛乳の危険性として以下の諸点を挙げています。
こんなに危険だらけ(「危険」というほど大袈裟でないものもありますが)であることがわかっているのに、多くの米国人は牛乳を飲むことをやめません。米国人は1日に1リットルの牛乳を飲み、食費の7分の1が牛乳・乳製品。これは、酪農業界、乳業業界が政府や議会にさまざまな圧力をかけているからだそうです。業界を挙げての巧妙な宣伝術、情報操作も暴露されています。かの国の軍需産業と同じですね。
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