ヘイアンとオレは隊長に連れられて、ダサシュワメード=ロードにあるレストランへ行った。
増水で水びたしのダサシュワメード=ロードを歩くのは、ひどく不快なものだった。
だが、レストランは建物の2階にあって風通しがよく、道に面したベランダからほどよい採光もあった。調度も整っていて、やや気品のあるところだった。
毎度のごとく
オーダーから30分もしたろうか、どう考えても1分でできるラッシーが運ばれてきた。
がしゃん。
ウェイターは準備に30分かかったラッシーを、一瞬でテーブルにぶちまけてしまった。ヘイアンのスカートまでボトボトだ。
狼狽したウェイターは、一息深く吸い込んだ。そして、自信ありげにこう言った。
「ノ〜〜〜プロブレム」
空気が、止まった。
一拍おいて、3人が3人、拳を
グーにして咆哮した。
「イぃッツァープロぉブっレぇぇエム!!」
「ナ・ニ・が、ノ〜プロブレムだぁコラぁ!」
「今すぐ謝れーアホー!」
いかにも不服そうに視線をあちらこちらに逸らした後、ウェイターは蚊の鳴くような声で謝った。
「……ソーリィ」
「早よ拭くもん持って来んかーい!」
……ウェイターはしばらくして布切れを持って来たが、もう自前のものであらかた拭き終わっていた。
3人の冷たい目線んー。
ウェイターはばつの悪い顔をして、ラッシーまみれのグラス――まだ3分の1ほど残っていた――を指差し、猫なで声で聞いてきた。
「あ、アー。……
ドゥユーウォント、ワンモア?」
「当たり前だ!!」
何を言ってるんだこいつは。
……
また、何分もかけて、彼が戻ってきた。今度はこぼさずに置けたようだ。
しかしその後、ストローから唇を離したヘイアンは、諦めるような声でつぶやいた。
「……なんかコレ……ミョ〜に水っぽい……」
ヤロォ――――
薄めたのかよ!