15:37 フラワーショップ・パパメイヤン:店主の話
「いやー。この鉢はウチの商品だったけどねぇ・・・ものの割に軽くて丈夫だし、ちょっと高級感ありそうな肌してるだろ?優れものなのは、水を受け取る皿が要らないってことさ、2重底になってるから。最近売れ筋なんだよね。サイズも5種類あるんだよ。色も白と焦げ茶の2色。え、そんなことはどうでもいいって?あんたそんなんじゃ商売人にはなれないよ。どうしてもってんなら、カードの控え伝票を探すけど。あ、でも捜査令状はあるんだろうね?一応プライバシーだからさ。
え?
警察の人間がいるかどうかって??ちょっと待ってよ。それくらいなら調べてもいいけどさ。あんた達の身内だろ?教えたことが本人に知れても庇ってくれるだろうね?よし、じゃあいいだろう。
うーん・・・・いないねえ。
ここんところアンブレラの社員がよく引っ越してくるせいで町の連中の顔ぶれも増えたんだよね。いちいち客の顔なんて見てないしなあ。それに現金払いならキャッシャーレシートしかないからねぇ」
鉢植えは確実に増えている。
気がつくと、どこにでもあった。現像室の前に並んでいたし、駐車場の隅や、留置場にもあった。警察犬の飼育場にもあった。
署内をくまなく探したクリスは、植物に3つの種類があることに気がついた。緑色と青と赤。赤はともかく、青の葉とはなんとなく如何わしい。しかし青い植物は造花ではない様子。しかもそれらは混在せずに、ご丁寧にも1株ずつ分けられて、鉢の中央にいる。
「あやしい」
絶対絶対あやしい。
さわってみると土は弾力性があり、時々水分を含んでいる。誰かが世話をしていることは確実だ。
「資料倉庫のコピー機でこいつを見つけた。あんたの気になる鉢植えたちに関係してないか?」
数日後、マービンが差し出したのは1枚のメモだった。
日の当たらない屋外・日の当たる屋外
騒音のある地下の部屋
タバコくさい部屋・人の出入りが激しく、タバコくさい場所
日が当たらず静かな場所・日が当たらずうるさい部屋
臭気のある部屋・湿気の多い部屋・排気ガスの多い場所
「何難しい顔してるの」
チャイナランチのテイクアウトをぶら下げたジルだった。
クリスは目の前に差し出された紙袋をありがたく受け取る。
「暗号を解読してんだよ」
「ふうん」
「これって、例の鉢植えの秘密だと思わないか?」
「鉢植え?ああ、あの草みたいなののこと?あなたまだあれにこだわってたの?」
真っ赤なチリソースまみれのエビを箸で突き刺し、クリスは力説した。
「だってあやしいと思わないか?日に日に増えてるんだ。最初はほんの少ししかなかったのに、いつのまにか赤だの青だの色つきのもある」
「別に置いてあって誰かが怪我をしたわけじゃないわ。実害のないことでしょ」
「将来、実害が出たらどーすんだよ」
「ハッ。草1本で?署長の骨董品の方がよっぽど危ないわよ」
ジルの言葉に何も言い返せない。クリスはしばし咀嚼することに専念した。
そこに同僚のジョセフが咥えタバコでやってきた。
「なあクリス、おまえ鉢植えのことで何か情報を探してるんだって?オレさー、見たぜ」
「マジかよ」
「ああ。昨日の夕方だけど、東の外階段のところにジョウロが置いてあったんだ」
3人はランチもそこそこに駆け出した。
「ここか・・・」
東館オフィスの裏口階段。確かにそこには例の鉢植えがある。
「つまり誰かが水をあげていたってこと?」
「そうさ。このピンクのゾウさんジョウロをつかって」
ジョセフはラブリーなジョウロを指差した。
「顔!顔見なかったか?誰がこんなことしてるのか・・・」
ジョセフはしばらく考え込んだが、
「悪いな、クリス」
「そうか。まあ、いい。これで署内の人間があの謎の鉢植えを置いていることは判った」
「・・・なんで今のでそこまで肯定できんのよ」
「あ。わかった。こうじゃないか、クリス。
日の当たらない屋外と日の当たる屋外ってのは、つまり外階段の鉢植えのことだ。1階は日に当たりにくいし、2階はよく当たる」
「あらジョセフ、さえてるわね。だとしたら騒音のある地下の部屋っていうのは地下にある電力室ってことかしら」
タバコくさい部屋。人の出入りが激しく、タバコくさい場所
「東のオフィスとロビーだろうな。喫煙場所だし」
日が当たらず静かな場所
「取調室の廊下ね」
日が当たらずうるさい部屋
「???」
「臭気のある部屋は犬小屋!湿気の多い部屋は留置所ね」
「排気ガスの多い場所ならパーキングだ」
「じゃあ日が当たらなくてうるさい場所ってどこだ?」
「探してみれば?」
その後クリスはオフィスの自分の机の上に鉢植えを見つけて愕然とするのだった。
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[文責:佐々夕映]
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