Q5 整備新幹線に「許可」は不要なのか


A5 特別法の規定で「みなし許可」

 運輸省鉄道局監修の『鉄道要覧』は全国の鉄道・軌道を網羅している書籍で、乗りつぶし派鉄道ファンの基本文献の一つといえるでしょう。この本には開業線だけでなく、鉄道事業免許(2000年3月からは許可)・軌道特許を得ている未開業線も掲載されているのですが、一つ不思議なことがあります。15ページ(1999年度版の場合)から始まる「鉄道(普通鉄道・JR)」の項に、現に工事中の整備新幹線が一切記載されていないのです。整備新幹線の建設に当たっては、許可(免許)は不要なのでしょうか。
 ご承知のように、新幹線の建設については、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)という特別法が設けられ、計画・建設に関する基本手続きが定められています。これは、新幹線が国家の交通インフラの骨格を形成する重要な路線であることから、通常の鉄道・軌道のように建設・営業を事業者の自主性に委ねるのではなく、(事業者の同意を得つつも)国が主導的に計画を立案・推進することが必要と判断されたためです。

 こうした理由から、着工に至る流れが、新幹線の場合は他の鉄道と異なります。通常の鉄道では、まず、事業者が計画を立案して許可を申請し、運輸大臣(2001年1月からは国土交通大臣)が運輸審議会に諮った上で許可するという流れになるのですが、新幹線に関して全幹法では、国(運輸大臣)が整備計画を立案し(第七条)、建設主体に建設を指示する(第八条)という流れを規定しています。その上で、鉄道事業法との整合性を保つため、全幹法第十四条では、建設の指示が行われた時には、鉄道事業の許可を受けたとみなす「みなし許可」の規定を設けています。みなし許可のパターンは、営業主体と建設主体が同一か否か、建設主体が独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(2003年9月までは日本鉄道建設公団)か否かによって異なりますが、現在工事中の整備新幹線は、いずれも建設主体が鉄道・運輸機構なので、開業後に営業主体となるJR各社が第一種鉄道事業のみなし許可を得ていることになります。

 それでは、みなし許可の取得日はいつでしょうか。
 各種資料には整備計画を定めた日付は記載されているものの、建設を指示した日はなかなか見つけられなかったのですが、『新幹線―高速鉄道技術のすべて』(高速鉄道研究会、2003年)所収の表(29ページ)や、『「政府の失敗」の政治学―整備新幹線建設と旧国鉄長期債務問題―』(舩橋晴俊ほか、2001年)所収の年表(226ページ)によると、いわゆる整備5線は、いずれも整備計画を決定したのと同じ日に、運輸大臣が鉄建公団(現在の鉄道・運輸機構)や旧国鉄に建設指示を出しています。従って、整備計画を定めた日こそが、鉄道事業のみなし許可を得た日ということになります(中央新幹線は、整備計画の翌日に建設指示)。
 なお、全幹法附則第十項には、スーパー特急などの暫定整備計画に基づいて建設を指示した場合には、(当初の)整備計画に基づく建設指示は効力を停止する、とあります。従って、スーパー特急方式で建設中の区間(北陸新幹線・石動〜金沢)や整備予定の区間(九州新幹線・武雄温泉〜長崎)のみなし許可の日付は、暫定整備計画の決定日とするのが妥当と考えます。
 整備新幹線各区間の整備計画・暫定整備計画の決定日はこちらを参照して下さい。 

(2012年02月01日最終更新)


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