Q5−2 無許可の鉄道はあるか


A5−2 北九州で発覚した例が

 『鉄道要覧』に鉄道事業許可路線として記載されていない整備新幹線も、実際には「みなし許可」を受けていることは、Q5に記したとおりです。
 それでは、遊園地などの遊技施設を別にして、一般の利用できる鉄道で、許可を受けていない路線というのは、あるのでしょうか?

 鉄道事業法によれば、鉄道事業を営もうとする者は、免許(2000年3月以降は許可)を受ける必要があります。この規定の実効性を保つため、同法第六十七条第一号に罰則が設けられており、無免許(無許可)で鉄道事業を営業した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科)に処せられます。したがって、理論的には、無免許で鉄道事業を経営するということはあり得ないはずです。

 ところが鉄道事業法の施行以後、「無免許営業」が明るみに出たケースが一つだけあります。
 1997年6月20日付「毎日新聞」(西部夕刊)などによると、問題となったのは北九州市が運営する貨物専用の「田野浦公共臨港鉄道」(外浜〜田野浦海岸、約3.7km)。元々は1929年に民間会社の「門築土地鉄道」が旧・地方鉄道法の免許を取得、開業した路線でしたが、廃止前年の1959年に旧・門司市(現・北九州市)が鉄道施設を買収。地方鉄道として廃止された後も、国鉄が運行を継続していました。その後、1987年4月のJR発足の際、北九州市が運営(実際の業務はJR貨物に委託)に改められたということです。

 鉄道事業法の附則第三条では、法施行時点で他社に線路を使用させている事業者は、施行後3カ月以内に線路使用条件を届け出るなど第3種免許を取得する手続きをするように定めていましたが、同市側が届出を怠ったため、結果的に「無免許」になってしまった模様です。運輸省(当時)もこのことに気づかなかったようです。
 この区間にはセメント輸送の貨物列車のみが走っており、JR貨物が、同社の第1種区間である門司港〜外浜0.9kmと一緒に運行・管理を担当しています。しかし、北九州市が第3種免許を取得したいなかったわけですから、JR貨物も第2種免許を取得していませんでした。
 同市は門司港レトロ地区の観光推進策として、この路線の一部(外浜〜和布利<めかり>0.6km)を使って、門司港〜和布利に観光用のレトロ列車を運行する計画を持っており、調査を進める過程で無免許問題が発覚した、とのことです。

 さて、その後、免許の扱いはどうなったかというと、99年5月27日、九州運輸局はこの区間(3.5km)をJR貨物・外浜駅の側線として認可、独立した営業区間として免許を取得する必要がなくなり、無免許状態も解消したそうです。運行は従来通りJR貨物が担当し、同市がJR貨物に無償貸与することになりました。(99年5月28日付「読売新聞」)。
 これで一応の決着はついたものの、これほど長い区間が側線というのも本来はおかしな話ではあります。将来、同市の旅客列車構想が実現した暁には、よりすっきりした措置がとられるのではないでしょうか。今後の展開を注目したいと思います。


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