Preface/Monologue1998年11月


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3 Nov 1998
晩秋の長野県戸隠高原に連れと二人で行ってきた。
予想に反して雪はどこにもなかったが、降ってもおかしくない時期だと宿の主人は言う。
カラマツの黄葉の名残が輝く高原の空気はかなり冷く、
付近を散策するには冬用登山スラックスでちょうどよかった。
(でもかなり歩き続けていると、しまいには上半身はTシャツ一枚だけになったりする。)

山は、黒姫山か飯縄山に登ろうと思っていたのだが、
結局野尻湖近くまで脚をのばして斑尾山に登った。稜線はやや葉が落ちていたが、
全山紅葉と言ってもよい状態で、しかも登ったのが平日なものだから山は貸し切り状態で、
たいへん贅沢な山歩きだった。
4 Nov 1998
一昨日、一月半ぶりに山に登ったものだから今でも腿の裏の筋肉とかがちょっと痛い。
インドアのクライミングをしているから少しは鍛錬になっているかな、と思っていたが、
私の場合、やはり山歩きの筋持久力は山歩きでつけないとだめなようだ。

ともあれ、山の空気はうまい。山の冷気は気が引き締まる。
かさかさ、がさがさ、落ち葉を踏みしめ掻き分けて歩く土の道の感触は、
月並みだが、毎日アスファルトの上ばかり歩いている足裏に心地よい。

あたりを見回して季節が感じられることにも心安らぐ。
木々の葉がだいぶ落ちて、白樺の幹の白さが夏に比べて余計に目立つ。
久しぶりに山の中を歩く連れも、心持ち気分が高揚しているようだ。
「これくらいの距離なら大したことないよ、歩こう!」
8 Nov 1998
今日もインドアのクライミングジムに行く。
今回はボルダリングではなく一ヶ月ぶりのロープを使ってのクライミングで、
一緒にクライミングスクールで講習を受けた初心者ばかりが集っている。

さて、いざ登りだしてみると、
対象の壁はいつものボルダー壁と違って当然高いので、
トップロープとはいえ数メートルも登るとかなり怖い。

渋滞しながら登った私を見て、
「かなり疲れているんじゃないの?」とか言っていた人も、
いざ自分の順番が来て登ってみると、「確かに怖いわ」。
聞いてみるとみな私同様に一ヶ月くらい登っていなかったのだった。

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ところで読売グループ傘下に加わることになった中央公論社だが、
中公文庫の山の本はどうなるのかちょっと心配ではある。
他にもいろいろ心配はあるが、それはまたいつか。
(山とは関係がないが、トレヴィルもなくなっていたのを本日知る。
良質の写真集を出していた出版社なのに、たいへん残念だ。)
11 Nov 1998
渡島駒ヶ岳に続いて雌阿寒岳まで噴火したようだが、
ここも小規模ですんだらしい。
さらに渡島駒ヶ岳と同じく、2年前にも噴火していたとのこと。
もっともそのときは水蒸気爆発だったそうだが。

こういう小規模の噴火でも新聞での扱いがかなり大きいのは、
危険地帯を知らせるという意味合いと同じか、あるいはそれ以上に、
噴火そのものがやはり珍しく、興味をそそるからなのだろう。
火山が多い日本とは言ってもそう何時もあちこちで噴火しているわけではない(桜島は例外か)。

珍しいと言っても、相当大規模なものでないかぎり、海外での噴火現象は報道されない。
アメリカのセントへレンズ山とかフィリピンのピナツボ山とかは
まだ記憶に新しいが、それ以外はあまり知らない。

きっと小規模の噴火は世界のあちこちで頻繁に発生しているのだろう。
噴火のタイプもいろいろだと思う。
いっぺん、アイスランドに行って、雪と氷の大地から裂け目状噴火の火柱が
連続して立っているのを見てみたいものだと思う(それほど強い希望ではないが)。
13 Nov 1998
昨日も定例になった週一回のafter5クライミングに行ったのだが、
なかなかアクシデントの多い晩だった。

まずは、スラブで両手を離してエッジに立ち込み、脚のあいだにあるホールドを
取ろうとして無理に腕を伸ばしているうちに首と脇の下がつりそうになった。

次いで、垂壁を登っている最中に落っこちて
右の足裏全体でマットのないところに着地した。
これは落下距離1メートル以下なので助かったが....

最後には、スラブで滑って腕と膝をホールドにぶつけて擦りむいた。
それもクリップ後のクライムダウン時に滑ったのだから恥ずかしい。
腕を曲げるとひりひりするので、
薬などないから皮がむけたところを舐めて済ましていた。

しかし脇の下がつりそうになったのには驚いた。初めての経験だ。
17 Nov 1998
一昨日の日曜日、
丹沢は広沢寺の岩場に行ってクライミングを楽しむ。
自然の岩場は埼玉県の日和田山に続いて二度目だが、
今回は登高距離もやや長く、初心者としてはかなり緊張した。

それでも、登り着いた終了点に腰を降ろして振り返ると、
足下の灰色の岩壁の向こうに
取り付き点からは見えなかった小ピークが見えて、
その山肌が紅葉に彩られていてとても優雅な気分になれるのだった。
20 Nov 1998
目前に迫った11月下旬の連休は西上州に山歩きに行く。
友人たちと行くのだが、連れが久しぶりに参加する。
連れは冬用の山用スラックスを持っていなかったので、
斑尾山に行く前に買ったのだが、
自前で裾上げをしたところ、左右の裾の長さが違ってしまっていた。
斑尾山は人がいなかったのでそれでも構わなかったが、
今回は同行者多数のためそうも言っていられず、縫い直した。
だが長さを揃えたつもりでいたものの、
いざ着用に及ぶとやはり長さが違うように見える。
裾を上げた長さを念入りに揃え、さらにやり直しても違う。
何回か繰り返すうち、二人ともいいかげん嫌になってきて、
もういいや、と投げ出してしまった。
それにしてもなんでだろう。ストレッチ素材だからだろうか。
23 Nov 1998
3連休を利用して西上州(群馬県)で山歩きの毎日を過ごした。
稲含山、四つ又山に小沢岳という1,000メートル前後の山ばかり三座を登る。
山は高さではない。最終日の、つまり今日登った小沢岳など、
沢ルートを選んだのだがこれがまた誰も登っていないような道で、
何度も道に迷いながらようやく山頂手前の峠にたどり着いたのだった。
着いたら着いたで、反対側の集落から通じる林道が上がっていて
拍子抜けだったりもした。帰りはこちらを下ったが格段に楽な道だった。

本日はまた、一番バスに乗って登山口に向けて出発してみると、
昨夜はせいぜい冬枯れ程度だった山の上がうっすらと冠雪していて、
どうなることかと思いもした。
雪線に達する頃には昼になり、
空が晴れて太陽が顔を出したおかげで雪はみんな融け、
難儀をすることはなかった。
帰りに乗ったタクシーの運転手さんが言うには、
「今日の雪は一ヶ月は早いね」とのこと。
たいていの年は12月の下旬が初雪らしい。
山の中腹には紅葉も残っていたので、ちょっとした三段染めだった。
西上州としては珍しいものを見たとも言えそうだ。
27 Nov 1998
睡眠不足で山に登るのもつらいけど、
クライミングもけっこうつらい。危険だとさえ思える。
昨日、会社帰りにそういう状態で登りに行ってみたものの、
一週間前は登れた課題ができなかったり、
立ち込むときに力が入らなかったりで、
あまり満足できる内容ではなかった。
身体のキレが悪い、というのは
こういうときのことを言うのだろうな。
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しかしもう師走が目の前だ。
まだ年賀状も作っていない。
早く書かなきゃ。
28 Nov 1998
 東北地方の日本海側では雪が降っているし、浅間山も谷川岳も真っ白になっているので、そろそろ表紙の写真の模様替えをしなくては、というわけで変えてみた。とはいえ雪はまったく写っていないが、まぎれもなく冬の写真である。その証拠に木々に葉がまるでない。遠くの山は奥多摩の御前山で、この山域では大岳山と並んで好きな山の一つ。

 もう低山でも葉は落ち空気は澄み、見通しがよくなる季節だ。天気は安定しているし空気は乾いてさっぱりしているし、いい季節だと思う。問題は早朝にふとんから出るふんぎりがつくかどうかと、登山口に行き着くまでの列車の中の寒さなのだった。今年の冬は冬らしい冬だということだし、昨年以上に気合いがいりそうだ。
29 Nov 1998
今日もインドアでクライミング。

昼前の11時に行ったら、すぐあとから10歳と8歳くらいの女の子が二人、父親に連れられてやってくる。父親は当然登るのだろうな、と思っていたが、お姉ちゃんの方も全身用のハーネスをつけて登りだしたのには驚いた。しかもトップロープとは言え、5.9を登っている。身長のハンデがあるから実は5.9以上の意味づけになるはずだ。これにも驚いた。よし私も、というわけで5.10aに取り付いてあえなく敗退。隣の5.9を登って何となく面目を保った気になったのだった。

でも子供と真剣に競争していたわけではないので、念のため。

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