Preface/Monologue2023年 5月


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上野原市・軍刀利神社参道入り口のサイカチの木

ここまでのCover Photo:上野原市・軍刀利神社参道入り口のサイカチの木

1 May 2023

最新の分県ガイドを安く売っている店があり、遠くの県のを何冊か買い込む。

行きたい山を増やすのは楽しい。

5 May 2023

連れと戸隠へ。二泊三日の予定で晴れるのは初日だけの予報なので、では行きがけの山に登ろうと長野IC二つ手前の麻績ICで高速道路を下り、筑北村の四阿屋山を。

草湯温泉冠着荘の前にある農産物直売所脇の狭い舗装路に入り、一車線の簡易舗装道を詰めたところで砂防ダム脇の坂井ルート登山口に着く。車が駐められるか心配だったが、一番手だったのでこのあたりならというところに駐車。見た限り3台がよいところでは。

谷あいを詰めて尾根に乗り、徐々に傾斜のきつくなる登りで山頂へ。途中、隣の聖山を前景に北アルプスの山並みが望める場所があり、鹿島槍ヶ岳や五竜岳がまだ白銀に覆われた姿を青空の下に浮かべていた。しかしそれ以上に気に入ったのは山頂のわずか手前に建つ四阿屋山神社の前で開ける眺望で、いつ見ても不気味さを感じる冠着山を間近に、その向こうに善光寺平、その左手に飯縄山を初めとする北信五岳が望める。その眺めを前に湯を沸かしてコーヒーを淹れ、二人で飲んだ。

この年は季節が前倒しに推移しているようで、以前に同じ時期に来たときには満開だった麓の桜がみな葉桜になっていた。山中では咲き残りのカタクリをいくつか目にしたが、本来であれば盛りのころなのではと思う。

6 May 2023

飯縄山近辺を散策。事故発生。

少し前の予報では雨模様だったのだが、曇ってはいるものの昼過ぎまでは降らなそうなので山を歩くことにした。戸隠中社の上にある水路の道を辿っていくと、瑪瑙山に向かわずまっすぐ飯縄山に続くらしい山道がある。ガイドマップには記載がないが、入ってみるとよく踏まれていて傍らを流れる水音も楽しく、少々探検してみようと連れと二人歩いて行くと、沢筋を渡るところに出くわす。

遙か頭上を見上げると、飯縄西登山道が載っているらしい尾根筋が壁のように随分と高い。下り坂の天気なのであの高みまで行く気はせず、かといってまだ大して歩いていないので沢の向こうまでは見てみようと渡りだしたところ、ルート選定を誤って足を滑らせ、次の一歩のリカバリもその次のも効かず、対岸の岩がごろごろしているところに半身で勢いよく倒れ込むという結果に。

かけていた金属製フレームの眼鏡の右隅が岩にぶつかった、というのを意識して、あわやレンズが割れて失明、という事態が脳裏をよぎったものの、眼鏡のフレームが歪んだだけで済んだ。沢のほとりで連れが盛んに大丈夫かと呼びかけている。ショックでか、そのショックを落ち着かせるためでか、まぁショックなのだろう、「大丈夫、落ち着いて」という意味で手を振るだけでなかなか返事の声を出せなかった。傍らの岩に眼鏡のフレームを押しつけ歪みをできるだけ直す。

いつまでも半身を水の中に漬けているわけにもいかず立ち上がってみると、耐えようのない痛みはなかったので骨折はしてないようだった。もう濡れるのを気にすることなく浅い流れのなかを登山靴でじゃぶじゃぶと渡り返し、左手中指第二関節の擦り傷に絆創膏を貼って来た道を引き返した。指は痛かったがあとは大丈夫そうだったので濡れた服を乾かしながら(撥水機能のおかげで水浸しにはならずに済んでいた)瑪瑙山のスキーコースのある稜線に登り、雪のまるでない飯縄山を見上げて昨日同様に二人でコーヒーを飲んで宿に戻った。濡れたところを風に吹かれて風邪気味だったため、薬を飲んで夕飯まで寝た。

転んで無事だったかというとそうではなく、よくみてみると、両膝、両手中指と薬指、右腕は痣になるような打撲を被っていた。当たると痛いところもあり、ちょっとしばらく岩場のあるような場所には行けなさそうに見える。こういうことが重なるようになると、車であれば免許返納を考えなければならなくなるのだろう。

7 May 2023

朝から雨の戸隠高原を下りる。

昨日の怪我は幸いに運転するには支障がなかった。下界に下りる前に戸隠西岳を正面に仰ぐ鏡池に寄ってみたが、雨雲で山は全く見えず、湖畔に建つレストハウスもいきなりこの日から休業となっていた。だからか人影がまるでない。新築されたトイレに入っただけでいつもは賑やかな観光スポットを後にした。

長野市街に下りてきて、高速道路に乗る前に松代温泉へ。国民宿舎松代荘の露天風呂はリニューアルされていて広くなり、開放感が3倍くらいになっていた。連休最後の日曜で、しかも悪天候だからか、長野自動車道も中央高速も渋滞知らずで走ることができた。松本近辺は土砂降りだった。

14 May 2023

南関東、まだ5月半ばだけど、もう梅雨なのかと思えるような降雨。
土日だから切に。


最近は低山登山が流行だとか?低山歩きはもちろん以前からあるものの、「流行」とされるというのは経済なり行政なりへの影響が目立つようになってきたということなのだろう(つまり少数派ではない)。トレランや低山趣味など、『山』に遊ぶ人たちがかなり多極化してきている気が。

トレランといえば、光岳を一日で往復する人たちが毎日のように多数いる、というのを聞いてびっくり。山岳レースとの相乗効果の一端?

21 May 2023

越生の大高取山周辺を駅から周遊。


報恩寺、越生神社と尋ね、そのまま車道を辿って正法寺にも詣で、世界無名戦士之墓まで上がり、大観山170mの標識を目にし、越生の街並みを眼下にする。

”戦士之墓”、駅を下りた先で見上げる山の上に見える左右に長い白い建造物がそれで、2020年に登録有形文化財になったらしい。「歴史的景観に寄与している」との評価であるとか。いくつか新しくなっていたベンチの一つに腰を下ろして小憩。


大観山から山道を辿って西山高取へ。ここも展望がよい。しかしいましがた休憩したばかりなので足を止めず大高取山に向かう。昨日までの雨のせいかところどころ滑りやすい。人気の山のせいか、広めの斜面では踏み跡が二通りにも三通りにも分かれる。木の根が出ているコースをいやがるハイカーが脇に逸れてこうなったのだろう。

辿る道筋は眺望はなく植林が優勢だが、下草が変化を付けているので無味乾燥な行程というわけではなかった。三角点のある大高取山は越生方面の狭い展望よりも西の飯盛山方面の山並みが高くて愉しい。そちらの眺めをよくするとかで植林の伐採が行われていた。いくつかあるベンチの一つに腰を落ち着け、湯を沸かしてコーヒーを淹れたころ、新たな一本が倒された。

大高取山頂からは桂木観音を往復して”だいこうじ跡”なる展望地に立ち寄り、幕岩展望台を経て再び西山高取直下へと戻り、行きに通らなかった高取山の山頂に寄って越生神社に下った。西山富士と虚空蔵尊にも廻っていればこの小山塊の名所巡りはほぼ完璧だっただろうけど、そこまでの元気はなかった。


午前中はあちこちに人の姿があったが、とくに目立ったのは桂木観音から大高取山山頂を経て越生梅林方面に向かうルートを走る多数の老若男女で、どうやらこの区間は本日行われていた長距離マラソンのコースの一部だったらしい。数名のスタッフが桂木観音下のチェックポイントかなにかに下りるために逆走してきて、途中で出会う参加者たちを拍手を混じえて激励していた。

27 May 2023

板東三十三観音の第三十一番札所である笠森観音に詣で、その先の笠森グリーンルートを歩く。


笠森観音へはJR外房線茂原駅からバスで半時ほど。バスは満席。みな終点まで行くのかと思ったら、途中で大半が下りる。下車時に運転手さんに教えてもらったところ、長福寿寺というお寺に行くらしい。地元では「象の寺」で通るのだとか。初めて聞いたときは「像の寺」かと思い、何の像かと思っていたら、それこそ象の像らしい。歴史あるお寺だが、金運UPで有名な模様。

笠森観音の観音堂は、”四方懸造”という、言うなれば京都の清水寺の舞台が一方向だけでなく四囲を取り囲むという造りなのだという。写真を見るとなにやら高いところに建っているなと思えるものだが、現地に行ってびっくり、巨大な観音堂が岩塔の上に載り、長さの異なる柱が何本も床から伸びて支えている。

いったいどういう方法でこんなものを造ったのか…支える柱の数は61本、しかも長さがみな異なるという。柱相互は当然ながら横木で連結しており、上端で支える観音堂の床は水平に保たれている。あらかじめミニチュアセットでも作って検証したのだろうか。


観光客はわりとよく来るのだが、階段で観音堂に上がって周囲を見渡す回廊をまわり、金色の前立観音を拝んで帰ってしまうように見える。この日は重機を出して観音堂隣の木々の枝打ち作業をしていたため麓の一周はできなかったが、それでも観音堂の建つ岩塔の裏に回って見上げることはできた。正面からだと階段施設で見えにくい柱がよく見える。

しかも手前には岩塔を抱え込むようにこれまた巨大な木が根を張り、観音堂を守るかのように旺盛に枝を天に広げている。まるで飛行石を抱えたラピュタの巨木のようだ。これを見ないでおくのはもったいないと思うのだけど、笠森グリーンルートへの入り口でもある場所まで来る人は見ている限り誰もいないのだった。



笠森グリーンルートとは、笠森観音から南に延びる細い稜線を歩いて行くもので、とくに際だったピークがない。ついでに言うと展望もなく、”百山望”という地点があるが一山も見えない。”観湖台”という地点があるが水面は見えない。ある意味、面白いルートではある。葉の茂る季節になったからかもしれないが…。

そこここに見える木々の枝振りを見て愉しめるかどうかがコースの評価につながるのではと思う。稜線は雑木林が続き、細かいアップダウンも連続して、単調になることはない。今の季節であれば風も涼しく、木陰が続くので暑すぎることがない。一つだけ難点を我慢すれば悪くない。

その難点とは、擬木階段が多すぎること。この傾斜に階段を造るか、というほど、坂とみれば階段にしていてかなり歩きにくい。階段のない平坦路でほっとするものの、とくに笠森霊園を回り込むあたりでは意外とナイフリッジ気味で、土の斜面ではあるけれど両側がかなりの傾斜になっている。なかなか油断できない。


笠森観音はバスがわりと多く来るのでよいけれど、山間を抜けて舗装道に出ながらさらに上り坂を行き、キャンプ場を見送り、山上の公園も見送り、ようやくバス通りに出たところのバス時刻が夕方5時過ぎしかない(まだ3時くらいなのに)。なのでゆるやかながら一尾根超えて、小湊鐵道バスの長南営業所までさらに半時ほど歩く必要がある。ここからならバス本数は多くなる。

この交通の便の悪さのせいか、顕著なピークがないせいか、5月はもはや歩くシーズンではないせいか、決定的な理由は分からないが、好天の土曜の昼前だったが山中で出会ったのは4組だけ(うち3組は単独行)という静けさだった。なのに足下はよく踏まれていてヤブの被るところはなく、その意味では快適だった。


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