Preface/Monologue1999年7月


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新緑の物語山中腹
ここまでのCover Photo:物語山の新緑
1 Jul 1999
6月は結局一度も山に行かないで終わってしまった。昨年などは傘をさしてでも登ったものだが、少々気合いが減少したかもしれない。

山に入って、「我々はどこから来て、どこに行くのか」などと言う人はいない。そういう人は、一人で歩いたなら山道の分岐が出てくればすぐさま道に迷うだろう。だがひとたび下界に下りると、山で単独行ができる人でも局面によっては平気でこういうことを口にする。こういう意見に接するたびに、「いったいどこに行きたいの?」と密かに思う。
5 Jun 1999
一昨日の日曜日は久しぶりにトップロープでクライミングジムの壁を登る。だがジムによってはグレードに差があるのか、それともここしばらくさぼっていたせいで登れなくなったのか、5.7を登るのがせいいっぱいで、5.9など半分も登れない。核心部がちょうど中間点にあったのかもしれないが、それにしてもジムで登れないグレードが自然の岩場で登れるわけもなく、「道のり遠し」を実感するのだった。
20 Jul 1999
もう梅雨明けらしい。結局梅雨のあいだは山登りはしないで終わった。それでもクライミングの方は細々とだが続けている。さぼっていると、握力や立ち込みの力がすぐなくなってしまうのがよくわかる。

出たばかりの岳人8月号に、ネパールの6,000m峰クワンデ峰に登頂した親子の記事が詳しく載っている。この子供とは小学六年生。だが並の六年生ではない。5歳のときにピッケルを持って八ヶ岳阿弥陀南稜を登り、6歳のときに双子山ローソク岩で宙づりになり、「まだ岩をやるか?」と訊かれて「まだやる」と答え、ヒマラヤでは自分の体重の半分はある重さの荷を担ぎ、「高度順化活動は何回もやった」という。普段の生活では週に二回空手、一回はクライミングジムに行くとか。「ファミコンなんてやらない。あんなのどこが面白いんだろうって思うよ」。エベレストには最年少で行くのが希望で、「スポンサーが問題」と言い切る。まさにenfant terrible。

だが学ぶべきところは多い。特に基礎訓練を毎年繰り返し、普段でも体力維持を欠かさないところ、その意欲、挑戦心など。すべからく、物事は年齢ではない。儒教的価値観は山登りの役に立たない。

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