Preface/Monologue2000年8月


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3 Aug 2000
蒸し暑くない、静かな夏の山に行きたい。

「名山」に静かな山なし....いや、要は工夫次第だ、と思う(ことにしている)。 
6 Aug 2000
尾瀬の西方、奥只見湖の南にある平ヶ岳に山中一泊。往復したのは正式ルート。このルート、日帰りの人も多いが、さすがに長丁場なので山頂を往復して周辺の宿に泊まり、翌日帰宅するという人が多いようだ。そのせいか日帰りする人は日曜より土曜のほうが多かった。

しかしいや蒸し暑いのなんの。朝から風はない、日は射す、積乱雲は湧き起こる。連日昼前に尾瀬の福島側から雷鳴が響きわたる。4時30分に登山口を出発して、20キロからの荷物を背負って山頂手前の池ノ岳というところに着いたのが12時前。5時間のコースタイムを7時間強。バテましたわ。そこから目と鼻の先のテント場に行くあいだに、雷雨襲来。びしょぬれになりながらテントを立てて逃げ込むと、山頂を放り出してそのまま夕方まで寝てしまう始末。

池ノ岳の山頂湿原にとりどりの花が咲いていなければ、もう少し早くテント場に着いて雨を避けられたかもしれない。金色の穂を並べたようなキンコウカ、真っ白い綿毛(本当に真っ白!)を風になびかせるワタスゲ、アズキ色のヒゲを茎の先に5つばかり、風車のようにつけたチングルマ。これらがあちこちにかたまってお花畑を作っている。以前から群落を見てみたいと思っていたものばかりで、下り坂の天気にめげず写真撮影にせいを出していたのだった。
10 Aug 2000
一昨日、退社後に山行予定メンバーで東京の神保町に集まり、来週からのトムラウシに持っていく食料の買い出しをした。あれこれ選んでいる最中に「昼はカロリーメイトでいいよー」と言ったらそのあと会話に入れてもらえなくなった。くっそー。けっきょく昼は行動食を各自選択して持参することになったのだから、あながち間違ったことを言ったわけじゃないぞ。

そのあと一緒に行った人が伸縮3段ストックを買うというので売場を移動する。似たように見えて、値段が4000円,6000円、8000円と違うのがある。「どこが違うんだ?」と手にとってみると、まず6000円のはストックにクッション機能がついている。さらに8000円のは、素材がいっそう軽いものになっている。このストックはとにかく軽量で、「杖」としての強度が信じられないほどだ。しかしこれなら長時間持って歩いても手首が疲れないだろうと思える。最近はすごい製品が出ているものだ。
13 Aug 2000
休日出勤で朝から晩まで仕事。12時間くらい働いて夜の8時過ぎに職場を出る。

帰る途中、中央本線から別れてくる電車に乗ると、テントマットをくくりつけたザックを足元に置いた女性がいた。自分と同じくらいの年格好である。ふだんはこの時間に山帰りのひとをもう少し見かけるのだが、今日は彼女ひとりしか目に入らない。台風のせいで天気が悪いため、たいがいの人は出歩くのを見合わせたのだろう。

少なくとも昨日からの山だったはずだ。疲労の色は明瞭だったが、充足感に浸ってもいるのだろう、落ち着いた雰囲気を漂わせていた。日曜の夜、軽薄さのない山姿のひとを見かけると、なんとなく安心するのだった。
16 Aug 2000
明日から盆休み利用の北海道遠征である。メンバーは5人。登るのはトムラウシ一山だが、テントを使っての二泊三日。前後に道内の宿泊まりなので日程は五日間。最終日には然別湖とかを見に行ければ言うことなし。

その準備で直前まで落ち着かない。食事メニューを見て「朝食のパスタの具は何だ、まさか一緒に書いてあるマーボー春雨じゃないだろうな」とか言う人(確かにそりゃ心配だ)、共同装備のガスバーナーを持ってくるはずが家にないことに前々日に気付く人、等々。だんだん装備分担に不安が増してくるのだった。
22 Aug 2000
一昨日の日曜日、やや日が高くなった朝に軽装で登って来てみると、賑やかな団体がちょうど下り始めたところで、山深いトムラウシは再び静かな朝の気配に戻っていくようだった。

快晴の空の下で北海道中央部を覆い尽くす雲海と、その上に浮かぶ山並み。まだ暑さを感じさせない太陽が朱の光線を放射し、直下の山々を逆光で黒く染めている。

いま足元にある山体に連なるように手前から彼方に並ぶのは十勝連峰。白い絨毯の上に青々とした端正な三角形を連ねている。彼方には道内の岳人に畏敬されている日高の山々。目の前にトムラウシの岩屑の頂上部、その向こうには大雪山や東大雪。踊り出したいくらいの気分だ。「写真を撮ってあげるよ」。「うん、頼む」。
(注 踊っていたところを撮ってもらったのではありません(笑))。

暑くもなく寒くもない穏やかな朝の、静かな山頂で、これだけの眺望。上がってくるガスはひとかけらも見えない。しばらく眺めに浸ったあと、下から持ってきた市販の麦茶を登頂記念に飲み、テント場で作っておいた朝食を広げたのだった。
27 Aug 2000
ひさびさにプールで泳ぐ。腕の力が落ちている。山ばかり歩いて、水泳もクライミングもご無沙汰だったからだろう。

泳いだあと、地元の空き地で開催されていたフリーマーケットを冷やかす。男の子が自分の集めたカードを出品していたのが微笑ましい。子供の頃から経済活動に親しむことができて良い社会勉強になることだろう。しかし倒産した問屋から押収したような商品(もちろん箱詰めされている)を並べている店も多く、そういうところは手作り感がなくて見てもつまらないのだった。
連れは手作りの着物を何着も超格安で手に入れて「これは芝居の稽古に使える!」と喜んでいた。わたしは個人輸入を実践しているらしい人からエスニックTシャツを千円で購入。二人とも価格対効果のうえで十分満足できる結果になった。

例によって突発的に書くサッカーの話。各紙が絶賛していたが、昨日のJリーグーオールスターはピクシー(ドラガン・ストイコビッチ)の独り舞台の感があった。とくにJ-West1点目、ピクシーからのパスと言い森島のボレージャンピングボレーと言い鳥肌の立つすばらしさ。西沢への得点のお膳立てをしたのち、自ら25メートルのフリーキックを直接ゴールに叩き込んで本日の主役を決定づける。
こういう選手が日本にいて、世界の技を見せてくれる。なんて幸せなことか。ピクシー!お願いだから、そんなすぐに引退するだなんて言わず、もっとプレーを見せ続けていっておくれ。
31 Aug 2000
さーてそろそろまた山に行こうかなー今度の土日に山梨あたりでテント泊がいいなー、と思っていたら、突如として週間天気予報で見る日曜の降水確率が50%にはね上がる。おっかしーなー昨日まではずっと20%が続いていたはずなのにー、と心のなかでぶーたれても仕方なく、....
さてどうしたものか。

ところで。

行政下にある島の火山が噴火を繰り返し、その島民が不安に苛まれているというのに外遊先のホテルのプールで泳いでいる知事。

多数の乗組員を乗せた潜水艦が海底に座礁し、救助がなかなか進まない状態であるのに休暇を取っていた某国大統領。

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