ハンドヴィブラート
 

 ギタリスト
にとって必要不可欠なテクニックである。ブルースギタリストと比較すると若干弱めの感がある。あくまで隠し味といったところか。スキャロプトのためビブラートは非常に掛けやすく、大胆なチョークアップとダウンを披露する場合もあるが、大半は無意識に行う、いわゆる痺れビブラートと思われる。人差し指で掛けている映像が一番よく見られ、1弦を除き引き下げる方向に掛けている。
 
 特異なところでは、スキャロップを存分に活かした意識して行う強烈なビブラートや、3弦〜5弦あたりでフレーズの最後をたまに小指でヴィブラートさせている映像をよくみる。左記・下記画像のように、小指の補助として薬指が覆い被さるようにポジショニングするとよりブラックモアっぽく見える。スキャロプト指板のためヴィブラートによるnotesはクウォーターチョーク混じりで#気味になる。
           
          
 
 また、チョークアップを行いながら、更には低音弦での引き下げチョークを行いながらも当然に掛けており、指にはある程度の力技が必要となる。
  アコギを弾くようになってから、指先以外をフィンガーボードから離し、大胆に左手を弦と平行に揺らすビブラートを時折行うが、基本的にはストラト同様上下に弦をゆらしているようだ。

           

 その発展系ともいうべき大胆な技法にスラー・ヴィブラートが挙げられよう。主に80年代中期以降の再結成Purple頃にみられ、感情が昂ぶった状態で視覚的に訴える指技で速弾きの合間に盛り込まれることが多い。方法は至って単純で、半音階を強力、かつ、素早くスラーU&Dを繰り返すことにより、トレモロというか、トリルというか、独創的かつ大胆なヴィブラート効果を生み出している。

           

ハーモニクス 

 気が向いたときに、思いついたようにプレイしているようだがあまり聴けない。スタジオではTemple Of The KingMakin' LoveMidtown Tunnel VissonEyes Of FireMond Tanz あたり、ライブでは16th Century Greensleeves、Catch The Rainbow (1981年ツアー時あたりは気に入ってたのか結構やってる)、Anya(1993年のツアーは思い出したように比較的飛び出すかな・・・)あたりで開放弦のまま出せるナチュラルハーモニクス音が聴ける。このように意識したハーモニクスをやる時は時期によって偏りがあり、盛り込む日が続いたり、全然やらなかったりとメンタルな部分の問題だろう。BNのアコギプレイになってからは、盛り込む頻度は多くなったようだが・・・・・彼のプレイにおいては、ヴァンヘイレンが効果的に使用しているのと比較するとお遊び程度といったところだ。
 
         

 フレージング中、開放弦とフィンガリングの当たりの関係により、特に人指で押弦したまま下弦の開放を鳴らす場合に指の腹が開放弦に当たった状態となり、よくキンキンといった金属音的なハーモニクス気味の音が聴けるが、これも当然ハーモニクスを狙ってのプレイではない。この一見弾きそこないのようなトーンも、現在ではブラックモア節の象徴の一旦を担う重要な音だ。自然と出すのは非常に難しい。Powerのソロ中強烈なハーモニクス音が鳴っているが、出てしまったハーモニクスで本人も再現は難しいと思われる。
 ランダムに突拍子もないタイミングで開放弦を挿入するフレーズは80年代以降の典型的な指癖フィンガリングポジションであり、当該Powerのフレーズは4弦5フレと3弦開放の連続重音にて4弦5フレを押さえた人差し指の腹が3弦5フレのハーモニクスを伴うように触れているためによる出音である。管理人の録音源は本人より当該倍音の迫力不足が否めないとはいえ、とりあえず鳴らすことに成功した。そもそも同曲はメインのGコードカッティングでミュートハーモニクスが鳴りまくってる曲でもある。
 さらに80年代後半あたりに入ると、下記譜面のフレーズのように人差し指を押弦固定したままフレージングすることが多くなる技法の導入により、開放弦を鳴らしたつもりが人差し指による隣接開放下弦ミュート効果の金属倍音を伴う典型的フレーズ群が増加、益々スタッカート気味に引っ掛かった感じのフレーズが特徴となる。特に再結成レインボーで顕著にキンキン!とENGLが倍音を奏で音符は途切れまくっていた。
  
   
 
 またトレモロの項で既述した80's年代以降に行うようになったハーモニクス音を伴ったトレモロも、Keyに対して完全にスケールアウトしていることから、適当に浅く押弦してハーモニクス音を出しているだけである。(2010年発売のAutumn Sky収録曲Joureymanのエンディングギターソロでも実施)
 ピッキングハーモニクスについても意識して出しているのは皆無に近く、結果的なものとしてStarstruckのスタジオバッキング中(49秒付近)、Monstars Of RockのBluseあたりで聴ける。ダウンピッキングにて行うことの多いピッキングハーモニクスの使用については、アップピッキング中心の彼の奏法に照らし合わせると耳にできないのは当然の結果と言える。そして何より、RBのサウンドは歪が少なめの設定(しっかりピッキングしないと誤魔化しの効かないほど軽い歪)であることからもピッキングハーモニクスは発生しにくいと思料する。
  

ミュート Mute

 バッキング時低音弦に使用するケースが多く、ブラックモア独特のテクといったワケではない。右手の腹部分を弦に軽く触れ、ピッキングによる衝撃音のみを奏でるといった感じ。シングルノートのリフは特にミュート気味にしないと、前述したとおりダラダラーとした感じになってしまう。Freedom Fighterのリフはオクターブリフだが典型的なミュートリフ。また、第3期DeepPurple時のSmoke On The Waterの前奏を遊びでアドリブってる部分や、Lazyの導入部分、Mistreatedのライブソロ等、ボリュームを絞ってのプレイ中によく飛び出す。フィンガリングそのものを浅くしか押さえない方法も混ぜつつミュートフレーズをアドリブする。これらの奏法がスタッカート気味の節にも繋がっているようだ。
 アコギプレイにおいても、インプロヴィゼーションの一環としてアルペジオをミュートしつつ奏でることがある。通常時のフィンガーピッキングフォームと比較すると右手小指側の腹で弦に触れるためか各指先は上向き気味になっている様子が確認できる。

  

ダブルノート

 ユニゾンのダブルノートは70年代によく聴けた。Highway Starの有名なキメフレーズではクロマティックに上昇していく。その他Hard Lovin' Man、Made In JapanのStrange Kind Of Woman 、Child In Time、Demon's EyeSelf PortraitSnake Chamerあたりでも登場するが、80's年代以降はほとんど聴きあたらない(Anya のオブリガート、Highway Starくらい????あまり記憶にない・・・・が、Live-Album Past Time With Good Companyの16th Century Greensleevesでは聴かせてくれる)。方法は下弦をチョークしつつ同時に上弦の同音を押弦するだけ。
 
 80's年以降は2弦5フレと1弦開放や3弦4フレと2弦開放を同時に鳴らしたり、順番に連続で重ねて鳴らすユニゾンをよく弾く。また、ディストーション混じりに開放弦の多重音感をあえてかもし出す。Rock FeverNot ResponsibleEyes Of Fire等のソロでは意識した開放弦音をフレーズに重ねてフレージングしている典型例だ。
 
               

 この他、3度のダブルは全体を通して頻繁に使用する。今度は下弦をチョークして上弦は小指もしくは薬指で3度の音を押弦する。これはキメにかかわらずあちこちに登場するが、80's年代以降のChild In Timeでは、パフォーマンスとしてギターのネックを持ち上げながら連発し、やがてベースとドラムもそのリズムに合わすというのをよくやってた。1995年ツアーのToo Late Fof Tearsでも演っていた。この他にも4度だとか6度だとか、開放弦を効果的に使用したダブルノートだとかが聴ける。ピッキングで弾き去ったり、フィンガーピッキングで弾いたりと様々だ。
   
 
 また、複数の和音を組み合わせた心憎いフレーズも行う。BNのインスト曲The Messenger(←参照)の最後のメインフレーズは4度、3度、3度、3度、3度、2度、ユニゾン、オクターブ、オクターブ、オクターブ、6度、6度、6度、4度の順にダブルノートしており、パっと聴いただけでは単なる重音にしか感じなかったのが、コピーしてみてその音使いの奥深さに気が付き感服した次第である。

  
 ダブルノートをピッキングする右手の指使いについて追記しておく。3度4度等のダブル重音は当然に親・人、ピック使用時は親・中で爪弾くことが大原則となる。興味深いのは、ベース音とダブルノート音を交互に演奏する場合について、ベース音は親指で弾き、対極のダブル部分は・・・・やはり親・人(親・中)なのである。これはなかり親指に負担を強いることとなる。ブラックモアはそれこそ涼しい顔で指癖のごとくベースとダブルの両方に親指を使用している。

   

 明確なダブルノートとは澄み分けるべきかもしれぬが、素早いフレーズによるフィンガリング中、運指の都合上重音となる場合がある。開放弦挿入に伴う重音は頻繁に盛り込まれてくるわけだけど、両方を押弦したままによる増5度の重音を1弦飛ばしの人指・薬指にて重ねた指使いをBNのアコギMinstrel Hallのメインフレーズに認めたので紹介しておく。
    

 同様な指回しに4フレ跨ぎの1弦飛ばし完全5度の重音(←リンク先映像0:05〜0:06あたりの一瞬)も確認できたので追記する。こちらは少し苦しいポジションとなるけど、長3度音も直後に重ねたフレーズとするための運指と思われる。2000年代中期以降は、人指・小指4フレ跨ぎの固定ポジションにもうひとつ音を重ねる奏法、コードアルペに留まらず素早いソロのフレージング中にも頻繁に見受けられ指癖として小脳に刻み込まれている。
 
 

ブラッシング

 これもブラックモア独特のテクというわけではないが、べっ甲ピックは固すぎてブラッシングには不向きであり、しっかり握っていないとピックはどこかへ吹っ飛んでしまう。Powerくらいかな全体に効果的に導入しているのは・・・Space Trukin' やFlight Of The Rat、その他ライブなどで一過性に登場する位でお披露目といった程度。派手なピッキングストロークはあまり似合わない。
 BNのアコギプレイについてはコードストロークの機会(Ghost Of Johnなど・・・)は多くなるけれど、ソフトなニュアンスが多く、その場合フィンガーでのブラッシングであろうと想像できる。フィンガーブラシにも特徴があり、右腕を上下に振るというより、軽く折り曲げておいた指先を爪の甲で掃きだすように下方に押し出す感じで、戻しは弱めに弦を引っ掻く感じに実施する。Liveパフォーマンスとして聴衆の誰もがインパクトを受けるほど派手なブラッシングで最もたるものはDiamonds And Rust (Live)のラスト附近アンサンブルブレイク後の一発だろう。フラメンコ並の強力ブラシを実施している。