2006・5・11〜29 「オーストラリア・キャラバン・ツアー」 ”Wonderbus Japan”

MOSSMAN TOWNSVILLE BRISBANE Canberra


出発直前

8日夜、恐れていたことが起きた。
別送で送るため、午前中に引き取ってもらった荷物。木枠の消毒問題で新しい箱に詰め替えなければならない、と連絡が入った。わざわざ稽古の前に皆に集まってもらいトラックに担ぎ上げたのに…。

190×100×90cm の「大箱」と呼んでいるベニア作りの箱。
2001年の初海外公演から使用しているもので、6枚のパネルとボルトナットで簡単に組み立てられるようになっている。オリジナルの大きな太鼓から、様々な小道具・衣装類まで詰めて運び、現地では箱を裏返して組み立てると、U-Stageのロゴと招き猫の絵を書いた看板にもなる優れもの。
つまりU-Stage 草の根公演にとっての要。

荷物を詰めると重量は200kg 近くになるが、キャスターが付いており、移動も出来る。空港で押していると「こんな大きな箱、どうするんだ?」と好奇の眼の集中攻撃に会う。これを交渉して”手荷物”扱いで運んだことさえある。

しかし、オーストラリアは荷重に煩く、一個のバック荷重が32kg以下の規定にはかなり厳格だ。
2004年の時も持ち込めず、細かく小分けし、大きな太鼓は皮を外し、胴にはエアーマットを巻いただけで、移動した。そのため輸送紛失や破損の問題など大変な心配をした。そんなこともあり今回は別送となったのだが…。

木類の持ち込みに関しては、 旅行会社のKさんから数ヶ月も前に注意され、何度も念をおしていたのに…。
9日、朝一で成田へ行き、詰め替え作業。
木枠は頑丈で心配ないが、その分重量は大幅に増え、サイズも少し大きくなった。問題にならなければいいが…。

CAIRNS

12日(金曜日) トラブル、トラブル…。

成田でのチェックインは問題なくすみ、C86番ゲートで搭乗時間を待っていた。最近あまり評判の良くないJAL だが、経験からは食事もサービスも良く、快適なはず。しかし時間になっても搭乗アナウンスは無い。しばらくすると、我々の便は「整備のために出発が大幅に遅れる。」とアナウンス。そしてケアンズ経由シドニー行きが出るので、それにチケットを振り代えると…。仕方が無い、大幅に遅れるよりはましだ。チケットを変えてゲートを移動、Q64 便に乗り込む。機内は相当込んでいる。そりゃそうだ2機分の客がこっちに…、うん? 空席が多かったので間引きしたんじゃないのか? と言う疑問がわいてくる。せっかくのJALがカンタスになってしまった…。

案の定、食事はイマイチ、何よりも椅子が硬い。そして日本人スチワーデスはキビキビ動いてくれるが…。後は…。労働に対する感覚の違いかな。
などと考えていたら、眠ってしまったらしく、あっという間にケアンズだ。外は雨模様、少し揺れるも、無事着陸。

入国審査は感じがいい。 とりわけ英国との関係を考えると、笑顔の審査官なんて考えられない。”観光”と言うことですんなり通る。
問題は荷物チェック、ここが心配。お菓子を持ち込んだだけで、200jの罰金なんてビデオが流れている。木製品にはさらに煩いのに、三味線やら太鼓やら、いくつもある。

サックスやトランペットを見て、何人かの係官が「ミュージッシャンか?」と聞いてくる。「俺はベースを弾いている。」とか、雑談ののりで…。
三味線は無事通過したが、ダンボール箱に入れたゴロス太鼓と、いくつかの個人荷物を止められた。かなり心配。 だがゴロスを止めた人も、カバーを全部外し太鼓の様子を見ただけでOK。良かった、係官は「時間を取らせて悪かった。」なんて謝ってくれる。その上バッチなど土産までくれた!

荷物をまとめて出ようとすると、別の担当官が私に近づき「ミュージッシャンか?」と。そうだ、と答えると「オーストラリアで何をする?」 ここからが大変…、つまり入国ビザの問題。日豪交流年のオープニングイベント、”観光ビザ”でいいだろうと言われてきたのだが…。パスポートは各国の入出国印で一杯だ。他のイミグレーション担当官に変わり、04年の時は芸能ビザを取っているのに、今回とらないのはオカシイと。そりゃそうだ。

結局、ビザを取り直すことと、それを出迎えのオーガナイザーに確認することでやっと入国を許される。
英国のイミグレーションでエライ目にあったことに比べれば、天国のようだ。こっちが悪いのだし…。

担当官と一緒に、入国。しかし迎えの”アンドリュウ”らしき人物は見当たらない。飛行機も変更になったし、到着時間も変わったから…。
担当官は私の持っていた書類を”コピー”するため全部持って行ってしまった。
あちらこちら電話をかけているうちに、伊藤ちゃんがアンドリュウを発見。挨拶もそこそこに、担当官と相談。やはりビザの取り直しのようだ。

Holiday Lodge 食堂 大箱を開け振り分け
 8:00 モーテルに入りイングリッシュ・ブレックファーストの朝食を食べ、別送荷物の到着を待つ。
トラック到着後、すぐに大箱を開けるが長いネジでしっかり留められているから、それをドライイバー一本で開けるのは大変だ。
衣装・小道具類を振り分け、チンドン太鼓を組み立てる。
 9:00 入国管理局へ向かう。 渡された書類は、”本”だ。 アンドリューも呆れている。
モーテルに戻り少し眠る。部屋はセミダブル・ベッドが2台入り、キッチンまで付いている。勿論、バス・トイレ付き。
そこををシングルユースだから、えらい贅沢だ。しかし、インターネット環境は作れない。衣装をつけ待機。
13:50 Wonderbus の現地メンバーを乗せたバスが到着。挨拶もそこそこに、現場に向かう。
14:40 取材カメラなどを待つ間に、練習で演奏を始める。すぐに人が集まりだす。こりゃ反応がいい。
練習しているうちに、カメラも登場、そのまま撮影状態。終了後、いくつかインタビューを受ける。
18:00 ツアーメンバー全員で、夕飯を食いに。 食べ放題のバイキング。貧乏性の我々は、つい食べ過ぎてしまう。
モーテルへ戻り、ビザ申請書類の作成。入国しているのに…。

13日(土曜日) 曇りのち晴れ

10:00 町の中心にあるショッピングセンターに、ビザ用の写真を撮りに行く。
現像を待つ間に、ビーチ・サンダルなど買い物
写真を書類に添付し、完了。役場に出すのは月曜日だから、ケアンズでの公演は終わっている。
11:00 皆と別れ、インターネットの店へ
持ち込みPCは、規定料金の上に2ドルだそうだ。
日本に比べると、相当重くて遅いが、無事アクセス完了。
13:00 海岸をブラブラする。リゾート地にやってきた雰囲気を味わう。(写真下)
アイリッシュ・パブを見つけ大好きなビターを一杯。
15:00 古道具屋を散策したり、公園になっているお墓をブラブラする。
古いケルチック・クロスの墓や、どこの国かは判らないが、日本の墓石に近い形のものもあり、
遠い昔からの移民の町であることを物語っているようだ。
19:00 モーテル近くの中華で食事。日本から「交流基金サポーター」もやってきた。
中華はテイクアウトの奥にパーティー用の部屋がある。あまり使っている様子は無く高級感とは程遠いが、Wonderbus の前夜祭には相応しい。
キース・鞘抜・店員・エリ カメラマン・ケンちゃん 挨拶する、香織さん

 Wonderbus Japan とU-Stage公演の経緯
 
私は1998年まで、日本映画学校で担任をしていた。副校長だったC先生は映画祭などで豪州との関係が深く、学校を辞めて以来海外公演に力を注ぐ私をご紹介くださった。 2004年に交流基金シドニーが事務所を引越、そのお披露目会に呼ばれ、オペラハウスなどでの大成功に繋がった。
そのおり、「バンドワゴンによる日本紹介地方都市巡業」を提案させていただいた。するとちょうど同じようなことを考えてた、と言うことで話はトントン拍子に。私の”夢”として、長期にわたって各地のイベントや学校などを訪れる「英国4ヶ月ツアー」の”豪州版”を想定していた。今回も、このWonderbus を皮切りに、後は自前で各地をプロデュースできれば可能であったのだが、残念ながら私の都合で、5月一杯で帰国せざるをえず、このような予定になった。それでも、後半はWonderbus 本体とは別れ、単独での学校訪問ワークショップをアレンジして頂いた。関係者にはただただ感謝!

会場近くのラグーン

14日(日曜日) 曇り後晴れ
曇り空だが、雨はとりあえず大丈夫そうだ。

ラグーンに向かう
オープニング
本体は体操を
交流基金:ちさと・木村氏
広い会場を走りまわる

 6:00 海岸脇の小道を会場近くまでジョギング。
10:30 会場に到着。直ちに搬入、楽器組み立て、会場設営。 やっとイベントの全体像が見えてきた。
13:30 サウンドチェック。 お客はどんどん集まってくる。だが、突然舞台にプロジェクターが設置されたり、混乱も激しい…。
14:00 ラグーンと呼ばれる、海岸沿いにある無料プールをチンドンで流す。反応はすこぶる良い。チラシはあっと言う間に無くなる。
14:30 オープニングに「ワルチング・マチルダ」と「プラウド・メアリー」 会場を盛り上げる。
ところがこの後延々と挨拶が続く…。せっかく盛り上がったのに…。
後で判ったことだが、小山市とケアンズ市が姉妹都市になり、そのお披露目会を兼ねているようだ。
Wonderbus は交流を目的としているので、ケアンズ市との関係が重要。Wonderbus の日程に合わせて、ケアンズ市が「お披露目会」をアレンジしたらしい。 我々は交流を目指した在ケアンズの方達との共同プログラムだと思っていたが…。小山市から何組かの出演者も来ており、お互いに方向性が分かっておらず、戸惑いチグハグしている。
17:00 地元の子供たちの演目が終わったせいもあるのだろうが、お客がどんどん帰りだす。
進行表には「神道セレモニー」となっているが、舞台上で神主が祝詞をあげている…。”見世物”にしたいのか、意図を慮ってしまう。
17:40 だいぶ押していたのを、Wonderbus 本体が頑張ってまいている。しかし客が会場を離れていく流れは変わらない。このままでは、我々が登場した時に空席だらけになってしまう。会場後ろの森影からあらわれて驚かす予定だったが、急遽、姿を現し客離れを食い止める演出に変更する。
案の定、帰ろうとしていた客も戻って来た。いつものように写真撮影に応える。
17:50 「竹雀」でスタート。舞台直前に「ワルチング・マチルダ」に。客はまた集まりだす。
チンドン屋の説明をして、「ヒツジ…」の予定だったのに忘れてしまい「プラウドメアリー」に。
口上 イマイチ食いつきが悪い。 
鞘抜 十一 津軽三味線。 舞台裏で早変わりをしていると、演奏がおかしい…。後で判ったが、3弦の糸が切れ、2本で弾いていたようだ。ウーン、凄い。流石だ。
太鼓「波」「終演」2曲。 スタンディングで拍手してくれる人、多数。 しかしお客の絶対数が少ない。
18:30 舞台裏、何組かのお客さんが尋ねてくれる。一応に絶賛! 私の英語があまりにも「日本人英語で笑った!」だって。
19:00 盆踊り。チンドンで生演奏。
20:00 撤収。積み込み。
21:30 打ち上げは、ラグーンでバーベキュウ。しかしビールは飲めない。法律で野外での飲酒は禁止されているらしい。
「酒無くして、なんの打ち上げだ!」 さらにストレスを抱える…。
ケアンズ市のケリーさんから何度も来年も来て欲しいと言われる。何処へ行っても”終演後の熱気”は変わらないからな…。

15日へ