(S)2つの共振周波数(トーン回路コンデンサとケーブル)
ストラトの音色に影響する2つの共振周波数を、回路シミュレーションで確認してみましょう。
(S)結果の早わかりまとめ
最初に回路シミュレーション結果から分かる結論をまとめておきます。 詳細を確認したい場合はさらに読み進んでください。
  • トーンポットつまみ位置 10 のとき: ケーブル静電容量の影響が大きくなる (ケーブルが音に影響する)
  • トーンポットつまみを絞ると: トーン回路コンデンサの影響が大きくなる (コンデンサ容量が音に影響する)
(S)シミュレーション条件
等価回路(S)
ストラトキャスターのシングルコイルピックアップを想定した回路定数を設定しています。
等価回路(S)の説明
GT_circuit
シミュレーション条件(S)
トーン回路条件: ポット 500k-Ohm, コンデンサ 0.022uF
ボリュームポット 250k-Ohm
ケーブルの長さ3m想定、静電容量 300pF
スムーズテーパー 回路抵抗 240k-Ohm
スムーズテーパー 回路ハイパスコンデンサ容量 470pF
(S)シミュレーション結果(周波数特性)
ボリュームポット全開状態
トーンポット:つまみ位置 10 から 0 への変化
ボリュームポット全開状態なので、スムーズテーパー 回路は影響しません。

周波数特性グラフを見ると、2箇所の周波数でピークがあるのが分かります。
トーンポットつまみ位置 10 のとき 5KHz 付近に共振周波数があり、 つまみ位置を 0 に変えていくと共振周波数は600 Hz 付近に移動していきます (トーンが甘くなります)

GT_circuit_Tone_Sweep

共振周波数は、コイルのインダクタンス(H:ヘンリー)とコンデンサ静電容量(F:ファラッド) により決まります。 ただしトーンポットつまみ位置により、共振周波数に影響するコンデンサが変わります。

トーンポットつまみ位置 10 のとき
トーンポットの抵抗値が大きいため、トーン回路コンデンサに流れる電流が小さくなります。
よってトーン回路コンデンサの影響が小さく、ケーブル静電容量の影響が大きくなります。
シミュレーション結果では 5KHz 付近に共振周波数があります。
ストラトらしい高音域が効いた音色になります。
GT_circuit_ToneMax

トーンポットつまみ位置 0 のとき
トーンポットの抵抗値がゼロのため、トーン回路コンデンサに流れる電流が大きくなります。
よってトーン回路コンデンサの影響が大きくなり、ケーブル静電容量の影響が小さくなります。
シミュレーション結果では 600Hz 付近に共振周波数があります。
ワウペダルを踏み込んで止めたときと、同じような甘い音色になります。
GT_circuit_ToneMin

通常はピックアップのインダクタンスを簡単には変えられないので、 トーン回路コンデンサ容量やケーブル静電容量を選ぶことで2つの共振周波数を調整します。
ケーブル静電容量で高い方の共振周波数(例では 5KHz 付近)が決まり、 トーン回路コンデンサ容量で低い方の共振周波数(例では 600Hz 付近)が決まります。
コンデンサ容量、ケーブル静電容量を大きくすれば、共振周波数をより低く設定できます。
ケーブル選びの大切さがこの結果を見ても分かると思います。
(S)シミュレーション結果(トーン回路電流)
ボリュームポット全開状態
トーンポット:つまみ位置 10 から 0 への変化

シミュレーションでトーン回路コンデンサに流れる電流も見ておきましょう。
つまみ位置10で 約 3e-6[A]、つまみ位置0で 約1.5e-4[A] なので 50倍程度の差があります。
この電流値はシミュレーション上の値であり実際の電流値とは異なりますが、 ここで重要なのはつまみ位置により電流値に何倍差があるか、という点です。
つまみ位置の電流値比の差により共振周波数に影響するコンデンサが変わり、2つの共振周波数が できることが分かります。

GT_circuit_ToneCurr_Sweep