何が変わるか香港返還

英国領香港


 数年前から友人に「1997年7月1日のお昼12:00にスターフェリーの九龍側のターミナルで待ち合わせしよう」と言っていたが、そう言っていた当人自身が「言葉遊び」感覚であった。
ほんとに行くとは自分自身でも信じていなかった。

 1年前、HISに「来年の6月28日発の香港往復チケット予約入れてください」と頼んでおいたら、年明け「香港便チケット取れました」と連絡が入った。とりあえず足は確保できた。そして6月になった。チケット代を支払い、休暇申請を行ったが宿泊の問題は棚上げにしたままだった。「まぁ、何とかなるだろう」で出発当日となった。

 フライトはキャセイパシフィック503便。関空10:45発。

 チェックインカウンターで手続きをしていると、航空券に「Super Economy 」というシールを張られた。
 「なんですか、そのSuper Economyというのは?」
 「これは日本円建てで航空券を買われたお客様にラウンジを使用していただくサービスです。ただいま、キャンペーンを実施していますので、こちらの券でカンサイラウンジをご利用いただけます。」と、ボーディングパスと同じ大きさのカードをもらった。

 ラウンジなんて、ビジネスクラス以上でしか利用できないのが通常で、いままで縁の無いものであった。ラウンジでゆっくりさせてもらい、搭乗案内のアナウンスで機内へ。
 いつものように通路側に席を取り、さて離陸。
 機内はガラガラであった。見回したかぎり50%ぐらいの搭乗率だろう、実際、私の右2席は空いているし、中央の4席には一人、反対側3席には1人というであった。
 「取れない取れない」と言われていた返還時の香港便がこんな状態とは、これなら無理にPEXでなくてもディスカウントチケットでも充分だったのではないかと思う。
 帰国後、聞いた話では、確かに予約は満杯になっていたらしいが軒並みキャンセルが出て結果としてこのような状態になったらしい。 

4時間のフライトで、来年には無くなる啓徳空港に着陸。
 空港から何件かの安ホテル、ゲストハウスに電話するが、いずれも「Full」という返事ばかり、こんなところでまごまごしていたら泊まる場所が無くなる、A1 バスで重慶大厦へ、入り口で「お兄さん1泊500HK$部屋あるよ」と声をかけられた。ともかく、まだこのような客引きがいるということは部屋はなんとかなるということである。客引きを無視して、2件ほどあたるが「Full」。そして3 件目B棟の9Fの快楽旅社「ハッピーゲストハウス」でツインをシェアすることで1泊120HK$でベッドを確保できた。
どうやら、そこも最後の滑り込みだったらしく、その直後に来た人には「Full 」と断っていた。
今回一番懸念していた宿の問題が解決してホッとした。しかし、疲れた・・・

 夕方になりスターフェリー乗り場へ、4年振りの香港である。物価も上がり、いろいろ変化もしていると聞いていたが、スターフェリーは何も変わっていなかった。
 海風をうけて、サンミゲールを飲みながら対岸の中環をみていると「やっと香港にくることができた」と実感することができた。湾仔方面には、返還式典で使われるというコンベンションセンターが見えている。中環に着き、ピアから皇后像広場までフィリピンから出稼ぎにきたメイドさんで溢れかえっていた。それにプレス、観光客で大混雑であった。「そっか、今から香港は5連休なんだ」。この後も出稼ぎメイドには悩まされることになる。
 休日の香港の中環は「リトル・フィリピン」と言われるほど出稼ぎメイドで溢れるのは有名であるが、今回それ以上に目立つのは警官、プレスとフリーカメラマンであった。プレスは記者証を首から下げているのですぐわかるがフリーカメラマンも機材ですぐ見分けることができる。
 おかげでいつもなら目立つ私の機材も今回は目立たなくてありがたかった。

  



   




場合によっては「プレス」と偽って撮影も可能であった。いや〜助かった。

キャットストリートを歩き。





 日も落ちて中環からフェリーで再び九龍サイドへ、「中国回帰歓迎」の香港島の派手なネオンを見つつ尖沙咀へ戻り廟街へ、相も変わらず賑やかで怪しげなこの通りはボクのお気に入りである。ここも各国のTVクルーが何組も取材していた。「ここまで取材に来るか」と感心してしまった。中国国旗と香港の区旗を揚げている店が多く、「返還」を感じさせる。 廟街中程にある、ここに来たら必ずよる海鮮料理の大牌當で、「しゃこをボイルで、後ビール1本ちょうだい」とオーダーし、「相変わらずここはうまい」と食べて勘定で驚いた。「130HK$」「えっ、しゃこ一皿とビール1本だぜ」「しゃこ100HK$、ビール30HK$」まわりを見ていると同じような料金を払っている。どうやら私だけがぼられているわけでもなさそうである。いつもなら皿を指して「これはいくらか」と確認してから頼むのに、慣れているからといって値段も確かめずに頼んだ私の失敗だった。

  



奥の天后廟まで行くと、相変わらず怪しげで胡散臭かった。

  



彌敦道のネオンも一層派手になっている。





 翌日、中国の経済特区シンセン(センの漢字がない・・)に行ってみた。
大混雑の列車で国境羅湖まで行き、国境の小さい川を渡ると右手に「香港回帰まであと2日、あと何万何千何百何秒という電光掲示板があった。そして中国側へ。簡単な書類の記入と100HK$でシンセン地区だけ5日間有効なVISAを取得。駅を出ると左手は「どぉ〜ん」という感じで大陸方面のシンセン駅があった。

「なんちゅう大きさや,北京駅や上海駅より大きい」駅の大きさそのものが中国だった。
陸橋を渡るとまっすぐな道路、高層ビルとまさに新興都市である。ともかく歩いた。炎天下のなか歩き回った。そして感想「つまらん!!」。

   







   

 日曜ということもあり市場以外は人気がないし、ビルばかりなので観光客がブラブラ街歩きして面白いと感じる場所ではない。交差点の陸橋から遠くを見ても高層ビルが続くばかりであった。「かえろ!!」わずか2時間の中国滞在で香港に戻った。
国境を渡るとき雨が降り出した。








  

重慶大厦の入り口の客引きがいなくなった。ここも満室になってしまったのか。 夕方、旺角に行った。全面移転間際のバードストリートを覗き、通菜街(女人街)に行った。ここも相変わらずのにぎわいだった。こちらは廟街より徹底していて、店ごとに中国国旗と香港区旗を1セットあげていた。両方ともにテレビクルーが来ており、ほんとあちこちでプレスを見かける。

  




消滅まじかのバードストリートを覗き・・・









小籠包を食べて一息いれた。

雨は降ったりやんだりの状態で安定しなくなってきた。
 夜、思い立って「ビクトリアピークに行ってみよう」と思い、スターフェリー埠頭に行った。乗り場はすごい行列!!。そしてピークトラムもすごい列。ともかくなんとかピークに到着。最近よくTVや雑誌で紹介されるPEAK TOWERから雨上がりの夜景をみていた。 しかし、コンパクトカメラや使い切りカメラでストロボを発光させて夜景を撮っている人が多いこと。残念だけどそれでは夜景は写らないのですよ・・・気の毒だけど。





  

一人の年配の日本人が自分でナレーションを入れながらビデオ撮影していた。「30年ぶりの香港の夜景は・・・」思わずその人の顔を見つめてしまった。
「30年前。まだ海外旅行自由化の前じゃないか!その時どういう理由でこの人は香港にきたのだろう。そして30年後どのような思いでこられたのだろう。」撮影が終わると鞄からビールを出して飲み始めた。なんかいいなぁ、こういうの・・・

 そして30日になった。
新聞各紙ともぶ厚くなり(日本の元旦の新聞のさらに倍の厚さ)、ビクトリア湾に行くと朝からプレスの三脚が並び、すでに場所取りは始まっている。また、英国領香港としての最後の式典があちこちで予定されている。どこも人人人・・・。
天気は降ったりやんだり、スターフェリーも座席に座れず立っている人がいる。こんなに混んでいるスターフェリーなんて、初めて見る光景であった。そして中環。プレスと観光客と警官とフィリピンのメイドで歩くのもままならない状態であった。郵便局は「最後の日」というので長蛇の列。
 私は、普通の市場が見たくなり北角に向かった。そこにはいつもの人達の姿があった。が、店の奥のテレビは式典の中継一色であった。そして気になるのかテレビの方にチラチラ視線がいっているみたいである。

 どこを歩いても「回帰」一色である。到着した日から街中で「香港植民地旗」を探していたが、中国国旗を見かけることはあっても植民地旗は見ることはなかった。
 雨は相変わらず降ったりやんだりの状況である。

 黄大仙は、多くの人が祈っていた。何に祈っているのか。雨がひどくなっても祈りは続いていた。





  

 宿に戻る前に旺角に寄って晩御飯を食べ、フィルムを買い足した。10本持ってきたが、すでに7本使っておりこの調子で撮影すると足らないこと明らかであった。しかし安い! KodakのエクタクロームEliteII36枚で1本30HK$、エクタプレス36枚5本で100HK$。思わずEliteIIを10本買ってしまった。

 8時頃に積み残しを出すほど混雑した地下鉄で尖沙咀に戻り地上に出ると、なんとあのネイザンロードが歩行者天国になっていた、すごい数の人がビクトリア湾に向かっている。そして「どぉ〜ん」という音が響いた。
「ちょっと待ってくれ、花火は明日じゃなかったのか・・・!!」
回帰狂騒曲は最終楽章に突入した。

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