雲巖寺の章



当国雲岸寺のおくに佛頂和尚山居跡あり。 竪横の五尺にたらぬ草の庵むすぶもくやし雨なかりせば と松の炭して岩に書付侍りと、いつぞや聞え給ふ。其跡みんと雲岸 寺に杖を曳ば、人〃すゝんで共にいざなひ、若き人おほく道のほど 打さはぎて、おぼえず彼梺に到る。山はおくあるけしきにて谷道 遥に、松杉黒く苔したゞりて、卯月の天今猶寒し。十景尽る所、 橋をわたつて山門に入。さてかの跡はいづくのほどにやと後の 山によぢのぼれば、石上の小庵岩窟にむすびかけたり。妙禅師の死関、 法雲法師の石室をみるがごとし。
「木啄も庵はやぶらず夏木立」
と、とりあへぬ一句を柱に残侍し。


雲巖寺仏頂和尚の歌と芭蕉句碑
(「芭蕉の里くろばね句碑拓本絵はがき」より)



<あし>
黒羽バスターミナルから町営バス雲巖寺行きで30分、終点下車(1日4便)。
バス時刻問い合せ先:黒羽町営バス
黒羽町までは那須黒羽の章を参照。




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