大笠山(富山県/石川県)

  おおがさやま 標高1822m。

 富山県と石川県の県境上にある山。 遠くからも目立つ山で、 猿ガ馬場山に登ったときも笈ガ岳とともに大笠山が見えていた。 深田久弥も著書「日本百名山」の後記で、 「北陸では白山山脈の笈岳か大笠山を是非入れるつもりであった。  ・・・ しかしまだ登頂の機会を得ないので遺憾にも割愛した。」 と書いているほどの山である。
 筆者にとっても、 大笠山は東京からは遠い上、 歩行時間も長いので、なかなか登る機会がなく、 三百名山登頂の最後の山になった。
 そんなわけで、2007年の10月の連休になって、 やっと機会が巡ってきて、 岐阜県の鷲ガ岳に登った翌日に、 大笠山に登ることが出来た。
 当日の朝、高岡市の宿をまだ暗いうちに出て、 登山口の桂湖の奥の桂橋に着いたのが、 ようやく明るくなりはじめた5時半過ぎ。 登山口の大畠谷橋手前にも駐車スペースがあるが、 桂橋を渡ったところに登山者のものと思われる数台の車が停まっていたので、 私もその横に車を置く。 すぐに支度をして歩き始める。 予報によればこの日一杯は晴れで、 天気がくずれる心配はないので安心だ。 大畠谷にかかる吊り橋を渡るとすぐに梯子のある急坂である。 10分ほど急斜面を登ると一息つけるやせ尾根に出るが、 その後も尾根に付けられた登山道は登りの連続である。 6時半、ようやく山の端から太陽が顔を出し、 ブナ林に日が差し込む。 前笈ガ岳のピークの前あたりからヒノキの大木が混じるようになる。 前笈ガ岳のピークにはベンチがおいてあり、 一休みする。 広々としているが、大笠山の方向は木々で視界が遮られている。 ここから避難小屋にかけての尾根道は、 標高差は大してないのにアップダウンが多く疲れる山道である。 途中で笈ガ岳や大笠山が望める場所があり、 カメラを取り出して撮影する。 笈ガ岳に、 反対側の冬瓜平から登ったのは6年前のことだ。
 避難小屋は、尾根の上の木を切り開いて建てられている。 中を覗いて見ると、 広くはないが快適そうだ。 小屋の脇にはパイプで水が引かれている。 今回のルートはひたすら尾根の上を歩くので、 水があるのはここだけである。 冷たい水で咽喉を潤すと、 疲れた体に生気が蘇る。 登山口を相前後して出発した金沢の女性も休憩している。 すでに何回も大笠山に登っている様子で、 このあたりの山の事情に詳しい。 話をしていてずいぶんと参考になった。 しばらく休んだ後、 頂上に向けて歩き始める。 上部は最近草刈りが行われていないらしく、 笹を掻き分けながら歩く場所もあるが、 道の状態はそう悪くない。 頂上に近づくに従い木の丈も低くなり、 やがて縦走路に出会う。 縦走路を少しばかり歩くと頂上だった。
 これで三百名山の最後の頂を踏んだわけである。 簡単に踏める頂上より、 登り応えのある大笠山で三百名山を達成できたのは、 区切りとしてはよかったと思う。
 白山、笈ガ岳はもとより、 乗鞍岳から剣岳にかけての北アルプスも見える。 風もなく、10月にしては気温が高く、 休んでいても寒くない。 急ぐ理由もないので、ベンチに腰掛けてのんびりと過ごした。 いつものことだが、 コンビニで買ったおにぎりと家から持ってきたミカンが山での昼食である。 そんな様子を見ていたのか、 一緒に休んでいた金沢の女性からブドウやら、 インスタントのラーメン、それにコーヒーまでご馳走になってしまった。 一時間頂上にいて下り始めようとしたら、 数人の登山者が到着した。 一人はブナオ峠からの単独登山者だった。
 下りは往路をまた戻る。 登りで長く感じた尾根は下りも長い。 急な滑りやすい斜面では登りより下りに神経を使うものだが、 この登山道には近くにつかまるのに都合のよい木の枝が多くあって大助かりだった。 登山口の大畠谷橋に帰り着いたのは15時を回っていたが、 まだ日は高かった。
 この日は、大笠山が三百名山登頂の最後を飾るにふさわしい 量感のある山であることを実感することが一日だった。
 さて東京への帰り道をどうするか。 高山から松本に抜けて中央自動車道を使うか、 富山に出て北陸自動車道から上信越自動車道を使うか迷ったが、 富山経由で帰ることにした。 三連休の二日目の夕方は道路が渋滞すると分かっていたが、 案の定渋滞があり、帰宅したのは夜中の12時だった。

 歩行記録  2007/10/07 登り 4h30m 下り 3h55m


 登山口にかかる大畠谷橋。 この前の冬には雪で被害を受けたため、 修理に時間がかかり、 今シーズンの利用開始が遅れたようだ。
 橋を渡ると正面の尾根に取り付けられた梯子を登って、 尾根に取り付く。いきなりの急登である。
 写真はすべてKONICA MINOLTA DIMAGE A2で撮影。

 前笈ガ岳を過ぎると、 笈ガ岳の東面が眼前に現れる。 堂々とした構えだ。

 上の写真と同じ場所で、 大笠山も全貌を現している。 なるほど笠のようにも見える。

 小さいが快適そうな避難小屋。 土台のコンクリートが傾いているのは、 雪のせいだろう。 脇に水が引かれている。 冷たい水がおいしい。

 紅葉には少し早かったが、 ナナカマドの実は、 一足先に色づいていた。

 尾根を突き上げると、ブナオ峠からの縦走路と出会う。

 大笠山の頂上部は、 丸くなっている。 頂上まであとわずか。

 大笠山の頂上。 これで三百名山の登頂達成。 といっても特別な感慨があるわけではなかった。
 この写真は、同じルートを登ってきた金沢の女性に撮ってもらったのだが、 三百名山の話をしたら、記念の幕などを用意していないのですかと聞かれた。 そういえばちょうど15年前の1992年10月に百名山を登り終えたときには、 仲間が用意した大きな横断幕を背に大勢の友人と記念写真を撮ったものだった。 だが、もうそういう儀式にはあまり興味がなくなってしまった。

 頂上から見る白山(右奥)と笈ガ岳。 光線の具合で水墨画のような雰囲気だ。

 頂上にはベンチと方位盤が置かれ、 そう広くはない。 見えている山は白山。

 頂上から戻って少し下ると、 登路につかった尾根が見下ろせる。 この写真は縮小しているので分かりづらいが、 避難小屋の緑色の屋根も見えている。

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