笈ガ岳(石川県/岐阜県/富山県)

おいずるがたけ 標高1841m。

 白山山系に属し、石川、岐阜、富山の三県のまたがる登山道のない山である。
 2001年の5月連休を利用して、会社の登山仲間のSさんと石川県側の中宮から頂上を往復した。  東京を発って一日目は、白山自然保護センター近くの中宮キャンプ場の駐車場に車を止めて夜を過ごした。  二日目の早朝、雄谷林道をつめ、登山口を探しながら車を進める。  林道の山側斜面には雪が残り、いったんは登山口を見逃して通りすぎてしまった。  登山口近くの林道の路肩には、登山者のものらしい3台の車が駐車していた。
 7時、2日分の食料と雪山装備一式を担いで登山開始。  最初の登りは貯水池への階段で始まるが、標識はない。  貯水池まではまっすぐな階段の直登で息が切れる。  その後しばらくは明瞭な踏み跡を辿る。  両側にはカタクリの花が咲き乱れ、疲れを忘れさせてくれる。  山毛欅尾(ブナオ)山中腹まで来ると尾根が広くなり、踏み跡が不明瞭となり、雪が現れる。  ブッシュも多少うるさい。   山毛欅尾山山頂は広々としていて、白山を初めとする周囲の山々の展望がよい。  無人のテントが数張ある。 ここから頂上を往復する人も多いようだ。  目指す笈ガ岳も大笠山と並んで見えるがまだ遠い。  山毛欅尾山から下って次のピークの西向き斜面は雪がなくブッシュである。  あとは幕営地となる冬瓜(カモウリ)平まで、雪の上を歩く。  正午少し前に冬瓜平着。 冬瓜山の北側斜面がなだらかな起伏になったところで、  幕営の場所選びには困らない。
 翌日は曇りで、笈ガ岳は雲の中である。  雨具を着けて出発。  冬瓜山の北側斜面を巻きながら高度を上げ、冬瓜山から続く尾根に出る。  しばらく雪の尾根の上を歩いた後、清水谷側の斜面を斜めに登って、石川県と岐阜県境の稜線に出る。  ここから雪の尾根を北上する。 笈ガ岳の頂上へは短い藪をくぐるとひょっこりと出る。  視界が悪く、頂上はまだ先だと思っていたので、意外な近さであった。  頂上は雪が消え、地面が出ていた。  今年は残雪が多いようで、冬瓜平から頂上まで地面が露出しているところはなかった。  しかし、気温が高めだったせいか雪面は柔らかく、アイゼンを着用することはなかった。  周りの景色も見えないので、一休みして写真を撮った後、往路を下山にかかった。  冬瓜平のテントを撤収して下山にかかるころから天気が回復し、 山毛欅尾山に戻ったお昼ころには周囲の山々が再び姿を現した。  登山口に着いたのは1時過ぎでまだ日は高かったが、せっかく石川県の山まで来たので、  温泉に入って汗を流して帰ることにし、中宮温泉の「にしやま旅館」に泊まった。  予約をしていなかったが、翌日が平日のためか部屋に空きがあるようだった。  中宮温泉は周囲を山に囲まれて、渓谷の水の音だけが聞こえる山奥の温泉場である。

山行記録: 2001/04/29,30 登り4h55m(登山口−冬瓜平)、1h20m(冬瓜平−頂上)  下り1h05m(頂上−冬瓜平)、3h40m(冬瓜平−登山口)

 山毛欅尾(ブナオ)山からの白山。

 山毛欅尾山から東に少し下った地点からの眺め。  左に大笠山、真中に笈ガ岳、右に冬瓜山が見える。



 冬瓜(カモウリ)山の北側に広がる冬瓜平と笈ガ岳。 テントを張る場所には困らない。

 霧に包まれた笈ガ岳頂上。

 山毛欅尾山、冬瓜平の間の尾根上で見かけたイワウチワの花。

 中宮温泉。
 ここの温泉宿は冬の間閉鎖し、 2001年は4月27日に営業を再開したばかりだった。  我々は営業していた4軒のうちの1軒「にしやま旅館」に泊まった。  家族で切り盛りしている旅館である。  午後付近を散歩していると、旅館の裏山で料理用の山菜採りをしている男性に出会った。  あとでわかったのだが、その男性が「にしやま旅館」のご主人だった。  泉質は含重曹弱食塩泉で、口に含むと少し塩辛かった。

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