慶大(医)入試問題

 

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問  題:

 ロケットは,燃料を燃焼させてガスを噴射することで推進力を得る。質量 $M$ のロケット本体に質量 $m$ の燃料が積まれ,静止座標系に対して速度 $\overrightarrow {V_{0}} $ で運動している。このとき,全ての燃料が極めて短い時間に爆発的に燃焼してガスが放出された。静止系に対するガスの速度は $\overrightarrow {V} _{0} - \overrightarrow {v} $ であった。静止座標系に対するロケットの速度 $\overrightarrow {V}_1 $ は $\waku{1}$ である。
 加速する前のロケット本体の運動エネルギーは $\overrightarrow {V_{0}} $ を用いると $\waku{2}$ であり,加速後のロケット本体の運動エネルギーは $\overrightarrow {V_{1}} $ を用いると $\waku{3}$ である。したがって,運動エネルギーの変化は $\overrightarrow {V_{0}} $ と $\overrightarrow {v} $ を用いると $\waku{4}$ である。
 さて,半径 $R$ ,質量 $M_\mathrm{G}$ の球形物体と質量 $M$ (ただし $M \ll M_\mathrm{G}$ )の質点の間に働く万有引力 $F$ は,万有引力定数を $G$ ,球形物体の中心から質点までの距離を $r$ (ただし $r \gt R$ )とすれば, $F=\waku{5}$ である。したがって,万有引力は無限遠方まで作用し,質点 $M$ は球形物体から逃げ出せないように思えるが,実際は違う。 $r$ が無限大のとき位置エネルギーがゼロになるように位置エネルギーの基準を選べば,球形物体と質点間の位置エネルギー $U$ は,両者の距離が $r$ のとき, $U=\waku{6}$ である。したがって,球形物体に対する質点の相対速度を $\overrightarrow {V} $ とおくと, $|\overrightarrow {V}| \ge \waku{7}$ のとき,質点 $M$ は球形物体から離れて無限遠方へ行くことができる。このための最小速度を脱出速度という。地表の重力加速度を $10\mathrm{m/s^2}$ ,地球の半径を $6400\mathrm{km}$ とすれば,地表での脱出速度は, $\waku{8}$ である。


 星Sは未知の星であり,質量や半径に関する正確な値はわかっていない。そこで,ロケットに乗って未知の星Sの探索に向かった。このとき,ごくわずかしか残っていないのに,ロケットが脱出速度以下で星Sに向かって航行している可能性があることがわかった。このままでは星Sの引力に捕獲されてしまうかもしれない。 わずかな望みを託して星Sの引力からの脱出を試みるとき,下記の中で成功する可能性が最も高い方法と,失敗する可能性が最も高い方法を選び,理由を付けて説明せよ。ただし,星Sの半径は小さいので,ロケットが星Sに衝突する可能性は無視できるとする。
  $\maru{1}$ .何もしないでそのまま星Sの引力に従う。
  $\maru{2}$ .ロケットの向きはそのままで,直ちに燃焼ガスを噴射する。(図1)
  $\maru{3}$ .直ちにロケットの向きを90度回転させて,燃焼ガスを噴射する。(図2)
  $\maru{4}$ .直ちにロケットの向きを180度回転させて,燃焼ガスを噴射する。(図3)
  $\maru{5}$ .星Sに十分接近するのを待って,ロケットの向きはそのままで,燃焼ガスを噴射する。
  $\maru{6}$ .星Sに十分接近するのを待って,ロケットの向きを90度回転させ,燃焼ガスを噴射する。
  $\maru{7}$ .星Sに十分接近するのを待って,ロケットの向きを180度回転させ,燃焼ガスを噴射する。




【答】
1.  $\overrightarrow {V} _{0} + \bun{m}{M} \overrightarrow {v} $ 
2.  $\bun{1}{2} M |\overrightarrow {V} _{0}|^2 $ 
3.  $\bun{1}{2} M |\overrightarrow {V} _{1}|^2 $ 
4.  $m(\overrightarrow {V} _{0}\cdot \overrightarrow {v} ) + \bun{m^2}{2M} |\overrightarrow {v} |^2 $ 
5.  $G\bun{M_\mathrm{G}M}{r^2}$ 
6.  $-G\bun{M_\mathrm{G}M}{r}$ 
7.  $\kon{\bun{2GM_\mathrm{G}}{r}}$ 
8.  $1.1\times 10^4\mathrm{m/s}$ 
問. 成功する可能性が高い方法:  $\maru{5}$
   失敗する可能性が高い方法:  $\maru{7}$
 問題 解説