波の回り込み

 

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1. 回 折:
 波が障害物に当ったとき,障害物の隙間や端から障害物の裏側にも波が回り込んできます。この現象を回折といいます。
 単スリットでの回折に関する詳細は 『単スリットでの回折による光の強度分布』を,またその画像については  ココ をクリックしてください。
 下図は,本シミュレーションにおいて,楕円状の反射物に入射した波が回折する様子を示します。

 一般に,障害物の大きさや隙間の大きさに比べて波長の長い波ほど回折が起こりやすく,障害物の裏にも波が深く回り込みます。逆に短波長の波ほど回折が起こりにくく曲がりにくい,すなわち直進性が増大します。


2. 屈折率の空間変化による連続屈折:
 波が障害物の裏側に回り込む現象は,波の進む速さが場所によって連続的に変化している場合などにも起こり得ます。

 本シミュレーションにおいて,『(屈折)波の回り込み 』を選ぶと,円(変形すると楕円になる)状の反射境界線(青色の太線)の周囲に薄青色の領域が表示されます。この領域では,薄青領域の外周部から青色の太線(反射境界線)に近づくにつれ,波の速度が徐々に遅くなるように設定されています。反射境界線の直前での波の速度は,周縁部での波の速度の $\bun{1}{\kon{5}}$ 倍(屈折率で $\kon{5}$ 倍)になっています。
 円のより内側ほど波の速度が遅いことにより,下図のように,外側の波が内側の波に追いつき追い越すような形となり,波は楕円を取り包むように進むことになります。結果として,波は楕円の裏側にも回り込んでくる・・・というわけです。

 下図は,波の回り込みが完了している時点での図です。この場合の波紋は,先の回折の場合の波紋(前々図)とはかなり様子の違ったものとなっていることがわかります。





 津波の速さは,概ね海の深さ $h$ の平方根に比例します(詳細は『浅水波(長波)の速さ』を参照)。
 もし,海上に浮かぶ孤島があるとすれば,およそ下図のように,島に近いほど海の深さは浅くなっているであろう。この孤島に津波が押し寄せたとすれば,島に近づくにつれて津波の速度は遅くなり,その分津波の高さは高くなっていきます(『波のエネルギー』参照)。


 一方島の裏側には直接津波が押し寄せるわけではありませんが,上で述べたような理由により,島の周縁に沿って波が回り込んでくる・・・ということになります。もちろん,実際の津波はこんな単純な話ではありませんが,海の水深変化によって津波の速さが変わり,これによって津波の進行方向が様々な向きに向きを変えていくことは理解できるでしょう。

 このように,波の速さが連続的に変化していることが原因で起こる現象は他にも挙げられます。

 海岸に打ち寄せる波は,海岸線にほぼ平行になっています(ココをクリック)。
 下図は,本シミュレーションにおいて,『(屈折)傾斜する波面 』での画像です。直線境界線(青い太線)直前での波の速さは,薄青色領域外での速さの $\bun{1}{3}$ 倍になっています。図の左方から入射してきた波の波面が,徐々に境界線(青い太線)に平行になるように傾いていく様子がわかります。



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