#045
生誕九十年(14, December. 2005)
■ 戸板康二先生生誕九十年にあたって心機一転して、更新を再開するべく、まずは制作ノートのレイアウト(のようなもの)を変更、前回更新分までを別ページに格納しました。右下のインデックスでも明らかなように、まともな更新ができないまま年末になっているのだった。ああ、おまえはなにをして来たのだと、吹き来る風が私に云う……。
■ List【戸板康二の仕事・全著書リスト】を改訂。
■ 戸板康二ダイジェスト開設当初からあった著書リストを初めて全面改訂。この著書リストは「演劇界」1993年3月号の戸板康二追悼特集に付されていた「戸板康二著書一覧」をもとに作り始めた。「演劇界」の著書一覧にあるのは生前最後の刊行の『句集 良夜』(1992年12月)まで。「演劇界」に掲載のあるタイトルのうち、当サイトの List【戸板康二の仕事・全著書リスト】で削っているのは、
- 『市川團十郎』(淡交社、昭和45年)
- 文春カセット『ちょっといい話』(文藝春秋、平成2年11月)
『市川團十郎』は監修者として前田青邨と大佛次郎の名前がクレジットされている大判の本で、戸板さんは十一代目團十郎のかなり長めの評伝を寄せている。共著とか編集となると、どこまでを著書一覧に加えるかよくわからなくて悶々、東京創元社の『名作歌舞伎全集』などもあるし、どうしたものだろう。と、まあ、著書リストに入れなかったものは今後はできるかぎり年譜でフォローできればいいなと思う。文春カセット『ちょっといい話』は作成当初はハテなんじゃろなと、本ではないからと深い考えもなくリストからはずしていたのだけど、後年、『ちょっといい話』をいくつかピックアップしたものを、なんと三國一朗がナレーション! と知って、大笑いだった。なんという珍品、なんという逸品。戸板康二と三國一朗のコラヴォレートとはマニアにはたまらない。わたしもぜひとも欲しいと、古書展などでカセットテープを見る度にいつも目を皿のようにして探しているけど、いまだ発見ならず。
逆に、追加しているのは、以下の2冊と1993年以降に刊行のすべての著書。
- 『歌舞伎教室』(ポプラ社、昭和28年7月)
- 『歌舞伎俳優』(河出新書写真篇、昭和31年4月)
『歌舞伎教室』[*] は児童向けの入門書でなかなかいい感じ。初めて入手したときは嬉しかった。久保田万太郎と二人で編集とはっきりとクレジットされているので、ぜひともリストに加えたかった。序文で万太郎は《この本は、日本演劇協会の評論部会に属する人たちの手によって、出来上がったものであります。》というふうに結んでいる。『歌舞伎俳優』[*] は監修者として表紙にクレジットされているので、リストに加えた。岩波写真文庫 [*] と同じようなつくりだけど、河出の方が「戸板康二」指数は高いし、本としてもなかなかの充実度。
■ ちなみに、戸板康二の書誌としては、国会図書館に小野正編『「戸板康二著書目録」稿 』(1994年12 月)が所蔵されていて、何年も前に一度だけ閲覧したことがある。タイトルと目次を記載している私家版で著者献本となっていた。奥付に記載の発行元に連絡すれば入手できるかもと当時思ったけど、なんとなく躊躇しているうちに何年もたってしまった。
■ これからも改訂を重ねていって、どんどん書誌をつくっていければと思う。今のところは自分の所有リストも兼ねた著書リストになっているけど、今後はどうしたものだろうとも思っている。戸板康二の著書がかなり集ってきたところで、最大の難所はどこになるのかな。『マリリン・モンロー 戸板康二戯曲集』が入手困難とのこと。この本、いつかの11月に平成中村座で勘九郎の『すし屋』を見たあと所用で立ち寄った自由が丘の古本屋で400円くらいで売っていた。「戸板さんの戯曲か、あまり面白そうじゃないな」と身も蓋もない理由で当時購入を見送ってしまい(戸板ファンとは思えない…)、以来、一度も見たことがないのだった。トクマノベルス版『グリーン車の子供』は一度だけネットで売っているのを見かけたことがある。それから、意外に全然見ないのが『歌舞伎人物入門』。演博で閲覧したところでは特に購入意欲が涌きそうもないような本だったけど、これは一度も見たことがない。いつか均一棚で見つけたいものである。
■ 来年2006年1月、『歌舞伎ちょっといい話』[*] が岩波現代文庫として刊行される。『歌舞伎への招待』[*] からちょうど2年。本のつくりとして完璧だった岩波現代文庫の2冊、3冊目の『歌舞伎ちょっといい話』はどういう仕上がりになっているのだろう。
現時点でわかっていることは、文庫解説は犬丸治さん(→ 歌舞伎のちから)ということと、岩波の新刊案内に、
昭和末から平成にかけての歌舞伎座の演目、出演俳優に因むエピソードがユーモアとウィットに富んだ短文で綴られ、九代目團十郎や六代目菊五郎ら過去の名優の面影も蘇る。該博な知識と歌舞伎への愛情に満ちた恰好の入門書。
というふうに紹介があるということ。刊行を知ったその瞬間以上に、刊行が今とってもたのしみな岩波現代文庫版『歌舞伎ちょっといい話』なのだった。
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