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*「戸板康二ダイジェスト」制作ノート・更新メモ、2003年4月更新分(015)を当時のまま載せています。リンク切れはご容赦。




#015
夢声を少し、朝日新聞の「東京だより」(07, April. 2003)


Index【日日雑記・戸板康二書名索引】に、2003年3月分のデータを追加。

Chronology【私製・戸板康二年譜 1915-1993】を追加修正。

先月、長らくの念願だった『夢声自伝』上中下(講談社文庫)を手に入れることができた。戸板康二がきっかけで興味津々になった人物はとても多くて、徳川夢声はその代表的な一人。さらに、この『夢声自伝』、文庫解説はズバリ戸板康二だ。『あの人この人』[*] の「徳川夢声の話術」で、三國一朗の『徳川夢声の世界』を紹介しながら《自伝とこの本とを併読すると、ほぼ、あまり類例のない独特の徳川夢声という人物像が理解できる。》というふうに、戸板さんは書いている。というわけで、『夢声自伝』を手に入れたあかつきには、ぜひとも三國一朗の本も読んで夢声ワールドにひたろうと張り切っていた。でもまずは『夢声自伝』とホクホクと読みふけっていた矢先、濱田研吾さんの私家版出版物『職業“雑”の男 徳川夢声百話』が話題沸騰になっていることを知った。ああ、なんというグッドタイミング。で、嬉しいことにわたくしも『職業“雑”の男 徳川夢声百話』を手に入れることができた。そして、これがまあ、本当にもう素晴らしい書物で、この本を傍らに夢声元年を迎えることができた我が身の幸運を思いつつ、このところ夢声のことばかり考えている。……と、前置きが長くなってしまったが、今回の更新で年譜に追加したのは、夢声のこと少し。他にもちょこまかといろいろ。

東京だより/朝日新聞社編 古本屋さんでなんとはなしに手にとった本をめくってみると、その中に思いがけなく戸板康二の名前発見! というのは、わたしの古本屋における三大歓喜のひとつである(あとの2つは探索中)。先日、ひさしぶりに行った西荻の音羽館で遭遇したのが、この『東京だより』(朝日新聞社、1961年)。タイトルに惹かれてなんとなく手にとってみると、まず扇谷正造の序文があって、それによると、この本は朝日新聞に日曜版ができた1年目に持ち上がった企画の「作家、評論家の "眼" でみた東京だより」というコラムを1冊にまとめたもの、その執筆陣は、花森安治、戸板康二、芝木好子、曽野綾子と朝日新聞の門田勲の5名とのこと。えー! こんなところに二人のヤスジが! と大喜びして即買うことになったのだった。扇谷正造は《戸板氏は、ちょうど直木賞をもらった直後であった。はじめ東京の芝居ばなしということで始まったのだが、首尾範囲の広い趣味人なのに驚いた。結局、「芝居・その他」ということになった。》というふうに紹介している。演劇以外の分野でも様々な活躍をし始め、それらを順調にこなしているまっただ中の戸板康二の仕事。『東京だより』で戸板康二が執筆した「東京だより」のテーマは、「3人の女優」「新派の女 東京の女」「都下前進座村」「俳優座の俳優学校」「ナイター」「女剣劇」「うたごえの店」「講道館」「科学警察研究所」「縁日」。『街の背番号』[*] を彷彿とさせる、戸板康二にしか書けない切れ味の、街の香りただよう垢抜けしたエッセイのオンパレードなのだ。




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