FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 26


■アヴィニヨン演劇祭2004"OFF"

 昨年2003年のアヴィニヨン演劇祭は中止になった。と世間的にはいわれているけれど、それは通称INと呼ばれている、事務局がプロデュースする招待公演がすべてキャンセルになったということであり、OFFすなわち「アヴィニヨン・ピュブリック・オフ」に登録(ここでも厳密には「参加」ではない)していた劇団の大半は、それぞれが貸借契約をしていた劇場で、自主公演をうった。 

 その経過を経て、今年のOFFの開催時期が、INとは数日間うしろにずれてしまっている。会期終末ともなると秋風が吹きはじめ、街中に溢れていたポスタ ーが散乱して見る影もないという話も聞いていたけれど、これはOFFとしての自律への姿勢のあらわれなのだろうか。さっそくプログラムを見ていこう。

 無料で配付される大判のプログラムでは、これまでの公演ごとの掲載から大きく方針が異なって、100をこえる各劇場ごとに、プログラムが掲載されている。そもそもフランスの劇場は、単なる貸小屋にとどまらす、シーズンごとの演目をプロデュースするケースが通常である。夏の短い期間の臨時のプロデューサーしかいない、アヴィニヨンの多くの仮設の劇場にそれを求めるのは困難にしろ、劇場独自に公演プログラムの冊子を作成している。これまでの劇団との長年にわたる繋がりによって、それぞれの劇場の特徴が出てきていることは事実である。それらに、この全体プログラムも追随しはじめたと考えることができるのだろう。


 今年のオフは7月8日から31日の期間に開催され、それぞれのカンパニーは基本的には、この期間中毎日同じ劇場の同じ時刻に公演を行うので、それぞれの公演数は24回になる。今年も、まずは膨張を続けるこのオフの数字の列挙から。全公演演目652の内訳は演劇386、音楽劇47、ダンス26、カフェテアトル15、サーカス11、大道芸8、それに子供向け69など。劇団数は526なので、2つ以上の公演を行う劇団があることになる。フランス国内からの参加がほとんどだが、国外からの参加も1割弱。

 そして戯曲の作家数565では、紹介文の長さまで異なっていた現存作家とその他の作家の区別はなくなっている。これまでの(あまり知られていない)現存作家への優遇措置はなくなり、今年の作家リストを眺めていても、この公演のために書かれたという作品がほとんどである、551名という現存作家を見分けることはできない。これも大きな方向転換だといえるのだろう。

 それではその他の作家を中心に少し紹介をしよう。シェイクスピアは、英国のフットバーン巡業シアターの『テンペスト』などの4作品。フランス古典ではモリエールの10演目が全体でも多い。ロマン派以降では、生誕200年祭で多かったユゴーの『介入』など2作品をはじめ、ゾラ、モーパッサン、フロベール、サンドなどの小説からの翻案、またランボー、ヴェルレーヌの詩をもとに構成した演目も少なくない。その他もっともフランス的なフェイドー、ラビッシュのブールバール物も上演される。


 20世紀に入るとイオネスコ、カミ ュ、サルトル、コクトー、デスノス、クノー、ジュネ、コルテスなど。これらの文学史上の有名作品の舞台化の正否は各自ご判断を。音楽劇ではフェレなどのシ ャンソンをもとに構成したものも多い。
 現存作家ではダリオ・フォをはじめ、ギィ・フォワシィ、ミシェル・アザマ、ジャン=リュック・ラガルス、ミシェル・ヴィナベール、ブリスビル、アゴタ・クリストフの名前が並んでいる。


 外国物ではギリシャ悲劇をはじめとして、ドストエフスキー、ゴーリキ、チェホフやゴッチィ、ゴルドーニ、モラヴィアのほか、ブレヒトやカフカ、スタインベック、ワイルドなど。


 最後にオフで長年毎年、演出作品の発表を続けている「活動家たち」の紹介。
シェヌ・ノワール劇場のジェラール・ジ ェラスは、自作の『グアンタナムール』と子供向けの『水辺の星座』を上演。カルム劇場のアンドレ・べネデットも『路上の声』など2作品を用意する。レアル劇場のアラン・チマールはアルベール・コーヘンの『母の本』とモハメッド・カシミの『バベル・タクシー』を上演。東京でも公演したプロスぺール・ディスは、趣向をかえてブラッサンスの歌詞などをもとに音楽劇『ブラッサンスと妻』をビッグバン劇場に提供する。

 チケット料金はおよそ6~20ユーロ。オフの事務局その他でアデラントカードを購入すれば、約3割引になる。前売はなく、当日開演前に劇場に並ぶことになるが、遅れたりして入場できないと翌日分を予約するようにすすめられる。地元の地方紙などで紹介や批評記事が出ていたりするが、提灯か当たり障りのないものが多い。内容を知るには読んでみるのもいいかもしれない。カフェなどで勧められたりもするが、劇団関係者の場合も多いので、見極めることが肝心だ。通りに面したテーブルに座っていると、あっというまにちらしやカードの山ができてしまう。それではボン・ボワヤージュ。

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