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詰将棋おもちゃ箱くるくるおもちゃ箱
くるくる展示室 No.312 野曽原直之さん
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棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
合駒に注意 60手台

くるくる展示室No.312 野曽原直之

昨年9月中村宜幹さんとの合作で300手超えの大作「遍路」でデビューした野曽原直之さん。 次はアート展示室で三角形の軌跡曲詰、そして今回はくるくると、多彩な活躍を見せてくれます。

作者 「飛打飛捨合と馬鋸を組み合わせたもので、10手で1サイクルを構成しています。 (10n+1)手目33馬(n=1,2,3,4,5)は44飛合の逆王手で不詰となり、手順前後は利かないようになっています。」

本作、くるくるにしてはちょっとごちゃごちゃして取っつきにくいですが、実際読んでみると、案外手が少ないことがわかります。 勘のいい人なら初形の構図を見ただけで11歩を取りに行く馬ノコかな、とわかったかもしれません。 それで当たりですが、作者のことば通り、ただの馬ノコではありません。

試しに初手43馬と王手してみると、77玉や65合は87金までなので54に合駒する一手。 54成桂か54香の移動合、そして54金、54飛の合(歩は二歩、香桂銀角は品切れ)の4択です。

  • 54成桂の移動合は、87金から66飛。
  • 54香の移動合も同馬、同成桂となって同じ。
  • 54金合は、同馬、同香に77金と捨てる手が妙手で、65玉に66金打と重ねれば詰み。
  • 54飛合は、同馬、同香、77金、同玉、97飛、76玉、87角、77玉、65角まで?

あれ、全部詰んじゃった。 実は54飛合のときは97飛に87角合という捨て合の妙防があって詰まないんです。 大道棋みたいですね。

43馬がダメとなると、最初から77金、同玉、97飛と迫ったらどうでしょう。 これなら87角合はありません。 87金合は同飛、76玉に43馬とすればさっきと同じように詰み、ここは87飛合と受けるのが正解です。

  77金、同玉、97飛、87飛合、同飛、76玉、

77飛、同玉、97飛ともう一度打ったら?  また87飛合で、これは千日手。 しかし、この繰り返しで玉を76と77に交互に移動させることができます。 ということは、それと馬ノコを組み合わせることができるのではないか、とひらめいた貴方、大正解です。 実際に進めてみましょう。

  43馬、54成桂、77飛、同玉、97飛、87飛合、33馬、55成桂、87飛、76玉、

77飛、同玉のときすぐに33馬と行くのは、44飛合の逆王手で逃れ。 上記のタイミングなら飛が品切れなので大丈夫。 作者のことば通り、手順前後は利かないようになっています。

1サイクルが見えたところで、11歩を取りに行きましょう。

  32馬、54成桂、77飛、同玉、97飛、87飛合、22馬、55成桂、87飛、76玉、
  21馬、54成桂、77飛、同玉、97飛、87飛合、11馬、55成桂、87飛、76玉、

歩を取ったあと再び43まで戻ります。

  21馬、54成桂、77飛、同玉、97飛、87飛合、22馬、55成桂、87飛、76玉、
  32馬、54成桂、77飛、同玉、97飛、87飛合、33馬、55成桂、87飛、76玉、
  43馬、54成桂、

以下は取った歩を使って収束します。

  77飛打、65玉、66歩、56玉、47銀、同玉、25馬、56玉、46金 まで67手

最後は37玉、38金まででも同手数で正解です。

飛打飛捨て合入りの馬ノコ。 (少し難しかったかもしれませんが)このような高度な趣向をくるくるレベルで実現したのはすばらしいですね。

構図は全く違うものの、構造的には鈴木幸之助「ピストン」151手(風ぐるま1955年12月、収束に余詰)、の前例があります。 また飛打飛中合入りの馬ノコとして駒場和男「プレイバック」131手(近代将棋1995年11月)(改良図が「ゆめまぼろし百番」第55番「幻想図式」に収録)があります。

「ピストン」は、47銀、37玉、36龍、同とから「39飛、38飛合、55馬、46と、38飛、27玉、54馬、45と、37飛、同玉、」の10手サイクル。 巧みな構図で馬の移動距離を延ばしているのが参考になるところです。

棋譜ファイルはこちら ===> くるくる展示室No.312参考図 鈴木幸之助「ピストン」

それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。

山下誠さん:
素朴な馬鋸に、飛打・飛合の繰り返しを挟んで彩りを添えています。
波多野賢太郎さん:
馬で歩を取りに行く一連の手順に気づくまで結構悩みました。 1四に王がいるので逆王手に注意するなど、うまい手順だなと思いました。力作ですね。
長谷繁蔵さん:
もう少し捌けるのかと思った
69桂や76飛も考えました

これで長い収束を付けたら、くるくるではなくなってしまいそう。

占魚亭さん:
馬での王手時に飛合をさせたらダメ。
鈴木彊さん:
双玉図。馬鋸で11歩を入手して戻る攻め。歩を活用、玉を56玉まで追う。
玉が76と77の往復移動がほとんど。見事でした。
ぬさん:
飛が品切れになったタイミングを狙わないと、大変なことに……
S.Kimuraさん:
柿木将棋 for iPad は求解エラーを出して,音を上げていました.
それでも,最初の10手ぐらいまでは答えを出していたので,それを頼りに解いていきました.
もっとも,柿木将棋IXは,ちゃんと解くのですが,14になぜ玉がいるのかまでは,分かりませんでした.

逆王手を利用して手順前後を防止するためでした。

攻めダルマンさん:
なるほど飛合をなくしてからということなんですね。
隅の老人Bさん:
馬鋸に飛打飛合の入ったW趣向。11歩を取ってから馬を何処まで戻すかな?
最終地点は43。趣向が終われば、「くるくる」らしい易しい終局。
池田俊哉さん:
飛打飛合による複式馬鋸ほぼ一往復。詰め上がり左辺の大駒三枚残るのがおもちゃ箱らしいと言えばらしい
小山邦明さん:
馬ノコと組み合わせた面白い手順でした。
嵐田保夫さん:
珍しい序の入りから金合出来ない弱みを突いて『将棋図巧』第一番を髣髴させる飛打飛合を成立させ、なおかつ馬鋸を組み合わせるなど見事と言う他ない。 仕上げは平凡だが傑作と評価したい。

くるくる展示室No.312 解答:13名 全員正解

  嵐田保夫さん  池田俊哉さん  S.Kimuraさん  キリギリスさん  小山邦明さん
  鈴木彊さん  隅の老人Bさん  攻めダルマンさん  占魚亭さん  ぬさん
  長谷繁蔵さん  波多野賢太郎さん  山下誠さん

当選者は、展示室で発表しています。