趣向詰とは、広い意味では曲詰や一色詰など形や使用駒に趣向を凝らした詰将棋も含みますが、通常は手順の中に繰り返しを含む詰将棋のことをいいます。
繰り返すとなぜか楽しくなるのは音楽に通じるところがありますね。
せっかくの楽しい趣向詰を、易しすぎるからといって、難しい序や収束を付けたりすることも多いのですが、
くるくるおもちゃ箱は、そういう余分な要素をできるだけ省いて、純粋に趣向自体を楽しむコーナーです。
詰パラ読者の半数以上が暗算でも解けることを目標レベルにしています。
同様の手順を繰り返しながら玉が移動していくのは一番ポピュラーな趣向です。
この場合、初形で規則正しい配置になっていることが多く、本作だと、詰方の銀香や受方の桂歩が2筋ごとに並んでいるのが、
1サイクルで2筋横に移動する繰り返し手順を予想させます。
最初に2筋移動する手順を読めば、2回目からは何も読まなくても楽しめるわけですね。
初手は24銀の一手。
14玉に23銀不成、13玉と進みますが、ここで15玉と逃げられたら?
15玉には26金、24玉、35金と捨てるのがいい手で、捕まります。
13玉には、25桂から33桂成と行ければ初形から2筋移動させることに成功。
25桂にはちょっと抵抗して24玉と逃げますが、それでも34銀成、同玉、33桂成とすればOK。
24銀、14玉、23銀不成、13玉、25桂、24玉、34銀成、同玉、33桂成、同玉、
これで1サイクルの手順がわかりました。
香をまたいで移動するので、またぎ捨てと呼んだりする趣向手順です。
実際には34銀成のときに15玉と逃げる変化がちょっと面倒だったり(26金、14玉、15金、同玉、37馬、26歩合・・・)するのですが、
作意っぽい手順が見つかったら、変化は作者がちゃんと読んでいるはずと気にしないのが、くるくるでは優秀な楽しみ方です。
変化飛ばしの術というやつですね。
さて、ここからはお楽しみタイム。
44銀、34玉、43銀不成、33玉、45桂、44玉、54銀成、同玉、53桂成、同玉、
64銀、54玉、63銀不成、53玉、65桂、64玉、74銀成、同玉、73桂成、同玉、
84銀、74玉、83銀不成、73玉、85桂、84玉、94銀成、同玉、93桂成、同玉、
4回繰り返して玉を13から93まで大移動させることに成功しました。
持駒歩1枚で詰むの?と心配ですか。 大丈夫、収束用に38の馬がいます。
94歩、同玉、49馬、同金、84飛、95玉、85飛、94玉、 83飛成、95玉、84(85)龍 まで51手
作者 「銀桂を捌く10手サイクルのまたぎ捨てです。香車の開き王手・両王手が全く無いのはやや珍しいかも知れません。」
金銀桂香は4枚ずつあるので、2筋ずつ移動する趣向は将棋盤だと4回繰り返せて、駒数もぴったり。
まだまだいろいろな趣向の可能性がありそうですね。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- 山下誠さん:
- 出て打って捨てるを几帳面に4回繰り返し。春から楽しい趣向でした。
- 長谷繁蔵さん:
- 40手台になったので再考、25歩合を発見。
34銀成を省いて33桂成は25歩合で逃れ。 2回目、3回目は香を取られるし、4回目は87歩合で逃れ。
- おかもとさん:
- 10手サイクルの横追い。変化がちょっと面倒でした。
- 波多野賢太郎さん:
- この趣向手順、うまくできてるなあと思いました。銀と桂が消えていくので気持ちいいですね。
- 池田俊哉さん:
- 銀桂で香をまたいで移動していく。銀をすぐに取らず迂回するあたりの感触が良い。昔風に言えば「10 x 4」+11でしょうか
- たくぼんさん:
- くるくる展示室なんだから33手目に43香成なんて考えるようでは作者に失礼でした。最後まで統一感のある見事な趣向でした。
- 小山邦明さん:
- くるくるのメカニズムを見つけ出すのはいつも楽しいです。
- S.Kimuraさん:
- くるくるになるまでが大変でしたが,玉が複雑な動きをして,9筋まで逃げるのが面白かったです.
- 占魚亭さん:
- 銀桂繰りがいいですね。収束が一寸緩いかな。
- 隅の老人Bさん:
- 銀と奪った桂を使って王を左辺へ。
最後は49飛を取っての易しい収束、これぞ「くるくる」です。
- ハマGさん:
- 肝心の橋渡し役34銀成がわからず難航しました。
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