詰将棋研究室は、超長編作品や裸玉の完全性をコンピュータで検証したり、詰将棋をいろいろ研究するコーナーです。研究展示室ではそれにちなんで300手以上の超長編作品や裸玉を出題しています。
山崎健さんは、研究展示室No.2「アンフィスバエナ」に続いて研究展示室2回目の登場。
本作は作者より解説をいただきました。
解説 山崎健
こんにちは、山崎健と申します。
今回、加藤さんより自 作の解説をしてみては?と勧められ、僭越ながらチャレンジさせて頂きます。
本作、飛車によると金の多重連取りがテーマです。
角によると金の多重連取りは、山本昭一さんの看寿賞受賞作メガロポリスを皮切りに1980年代より多数作成されていますが、
飛車によるものはあまり作例がなく、変幻自斎さんの作品集蘊奥67、163番(いずれも残念ながら不完全作)、
および拙作詰パラ2011年1月号出題作くらいしかないようです。
本作はその詰パラ2011年1月号出題作(以降前作と称します)の改良図となります。
それでは手順を見ていきましょう。さっそく趣向手順がはじまります。
26角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛打、16玉、37角、36と、同飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、56飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、66飛、26角、
同角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛、16玉、37角、66と寄、36飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、66飛、
まず6段目のと金(および歩)をドリルで穴をあけるようにはがしていきます。
前作が飛車の開き王手に対し飛合で応じていたのに対し、本作では一度角合で応じその後飛車に持駒変換をするようにしたのが工夫です。
尚、盤面66が歩なのは17手目56飛に対して26角合しその後作意に戻るという中別れを防ぐためです。
25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、86飛、26角、
同角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛、16玉、37角、86歩、36飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、86飛、26角、
同角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛、16玉、37角、86と右、36飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、86飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、96飛、
飛車が96までくることができました、ここまでが第一段階です。
第一段階で、角で開き王手をした際に5、7段目のと金で飛をとるとどうなるのか気になりますが、それは次の第二段階でわかります。
尚、48、 66手目で25玉と逃げると次に飛を96に降った際に、1歩手元に残るので早詰となります。
26角、
同角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛、16玉、37角、86歩、
96飛に対し25玉と逃げると36金以下、14玉と逃げると13成桂以下、いずれも上部に追いだし、92金の質駒を入手することにより詰みます。
そこで玉方の応手は26角以下進み、100手目で98歩合!となります。
これにより92の質駒から照準を外し手数稼ぎするのが最善の応手です。
ここでわかるように、第一段階で5、7段目のと金で飛車をとると第二段階でその分歩合いができなくなるので早詰となります。
但し盤面85の歩だけは第一段階で消費しておいた方が第二段階で歩合ができるため長手数となります。
同飛、同と引、『36飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、86飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、96飛、26角、
同角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛、16玉、37角』、76歩、同飛、同と直、
攻方は再度96に飛を振り92の質駒に照準を合わせますが、玉方は以下同様に歩合し延命を図ります。
第二段階のと金のはがし順、歩合の位置はまったく限定されておらず、どの順番、どの位置ではがしても問題ありません。
『36飛、25玉、・・・76飛・・・96飛・・・16玉、37角』、76歩、同飛、同と引、
『36飛、25玉、・・・76飛・・・96飛・・・16玉、37角』、66歩、同飛、同と直、
『36飛、25玉、・・・66飛・・・96飛・・・16玉、37角』、66歩、同飛、同と引、
『36飛、25玉、・・・66飛・・・96飛・・・16玉、37角』、56歩、同飛、同と直、
『36飛、25玉、・・・56飛・・・96飛・・・16玉、37角』、56歩、同飛、同と、
五段目、七段目ではがすと金がなくなり、第三段階にうつり ます。香の前に歩合いをせざるを得ず、その香を取得することにより収束します。
36飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、56飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、96飛、26角、
同角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛、16玉、37角、56歩、同飛、同香、36飛、25玉、
26飛、14玉、15歩、同玉、56飛、26角、
同角、16玉、34角、25飛、同角、同玉、35飛、16玉、37角、56香、36飛、25玉、
26飛、14玉、13成桂、同桂、16香、15歩、同香、同玉、25飛、16玉、
15飛、27玉、18銀、同玉、17飛、同玉、19香、18歩、26銀、16玉、
17歩、27玉、39桂 まで327手詰
収束はとてもさばきが悪い上、322手目で飛合とされると残念ながら2手変長駒余りとなります。
修正検討したものの修正は困難なようなのでこのまま出題とさせて頂きました、申し訳ありません。
前述のとおり本作は前作の改良図であり前作に対し+140手の長手数化に成功しました。 改良のポイントは以下の3つです。
- 角⇒飛の持駒変換の追加
- 9筋に質駒を置くことによる、歩合い+連取り機構の追加
- 香をはがすことによる収束
実は詰パラの解答発表時にも少し記述があったように上記Aの改良は増田智彬さんからアドバイスを頂いたものです。
このアドバイスがなければ本改良図は実現できませんでしたので、この場を借りて厚くお礼申し上げます。
ありがとうございました。
又、今回自作を解説させて頂き、あらためて詰将棋を解説することの大変さを実感しました。
いつも楽しい解説を作成頂いております加藤さん、および詰パラの担当者には頭がさがります。
自作解説は大歓迎です。 投稿時や解答の時にでもお申し出ください >作家のみなさん。
本作のようにTETSUの手に余る作品の場合には解説をお願いすることもありますので、よろしくお願いします。
詰パラ2011年1月号発表作の大幅な改良。 といっても、単に持駒変換の追加だけではなく、と金のはがし方も異なり、質駒を狙って毎回9筋に飛を振り歩合をさせるところは全くの新規。
前作とは別個の新作とみるべきでしょう。
非限定も多い中で、85歩だけは先に消去する方が長いなど最長の応手を探すのが難しく、作意通りの327手解は池田俊哉さんお一人!
それでは皆さんの感想を(解答到着順)。
- 池田俊哉さん:
- 「ようやく何とかなったと思います。 「詰パラ2011年1月(大院作)の発展形」と言う「悪魔のヒント(笑)」で右側のとから順番に消去したが、それでは240手近辺どまり。
96飛から歩合を強要する形を思いついて何とか300手台。 そこから85歩の受方邪魔駒消去を思いつくまで約一週間... 短く詰んで悩んだ、というのは2009年11月詰パラデパートの近藤氏作以来です。あの時も今回も手数ヒントに助けられた格好。
要は「角遠打による多重連取り」の「飛開きバージョン」ということになるのでしょうか。 非限定の多さや収束のキズなどの減点事項はありますが、前者は飛を使った形では仕方ないこと、後者は花駒を良しとしなかった作者のポリシーによるものと思います。上記より賞候補になるのは難しいかも知れませんが、何らかの形で広く紹介したい作品ですね。」
ヒントで迷わせてしまってすみません。 でも、それだけ本作が飛躍的発展だったということですね。
- きたさん:
- 残念ながら320手台にならかなったので、どこかで間違ったようです。どこかでもっと手が伸びるんでしょうね。
それでも充分楽しかったけど。
225手解。 きたさんもヒントで迷わせてしまったかも。
- 隅の老人Bさん:
- 残念、300手は越えたが、どうにても320手を越えずに詰んでしまう。
お願い、誰か替わりに逃げて頂戴。
上記手順の逃げ方で早く詰む順があるようでしたらご連絡をお願いします。
- S.Kimuraさん:
- 開き王手で,と金を1枚取るところまでは行きましたが,その先が分かりませんでした.
楽しい手順ですので、並べてご鑑賞ください。
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