衝立将棋も古くから人気のある将棋。 昔、「奨励会には衝立将棋の七大棋戦がある」なんて話を聞いた頃もありました。 衝立将棋での入玉の扱いは「双方入玉は指し直し」となっていますが、入玉自体を禁止するローカルルールもあります。
本作もこのルール。
衝立将棋の普通の将棋と違うところは、相手の駒が見えないこと。 駒を取ったり取られたり、またチョンボや王手などから、相手のそれを推理するのが衝立将棋の醍醐味です。 衝立詰でもここは同じで、最初の配置だけは分かっているものの、受方の応手は推理するしかありません。
入玉禁のルールでは、6段目の玉は盤端にいるのと同じですが、詰方は57金と打ったりできるのですから、詰方に有利なルールといえます。 しかし、衝立詰ですから、例えば57金と打ったとき、55玉・65玉、どちらに逃げたか分かりません。
ここは詰方に不利なところ。 詰方は、どちらに逃げられていても王手になる手(66金、45飛、75飛など)、または、片方では王手になり片方ではチョンボになる手(55飛、65飛)、のいずれかを選ばなければなりません。
44のと金を取られては詰みそうにないので、45飛か55飛ぐらいですが、いずれも64・74に逃げられて続きそうにありません。
それでは57飛は? 応手は46玉・65玉・66玉の3通り。 どれにも対応するには、56金か66飛しかありませんが、65玉から74玉で逃れ。
「57飛 ? 47金(飛)× 75金(飛)× 67金 65玉 75飛 64玉 53飛成//
初ついたてが入玉禁……なるほど、7筋以下が玉取禁になる、と。」
57飛のあと47金は、65玉や66玉と逃げられていたとき王手になりません。 王手にならない手はチョンボではなく、これは詰方の失敗です。 残念。
入玉禁で狭い玉ですが、65−74、55−44の二つのルートを阻止するには、ちょっと工夫が必要。 それが、46飛から65飛の飛車の二連捨てです。
46飛は同玉なら45飛から金打があるので取れないことを見越した一着。
続く65飛に対しては3つの可能性があります。
1) チョンボ。 この場合玉は65にいるので、75金、55玉、45とまで5手(チョンボは手数に入りません)。
2) 65飛が取られる。 この場合65同玉なので、75金、55玉、45とまで7手。
3) 46飛が取られる。 この場合46玉なので、47金まで5手。
ということで、7手の2)が正解です。
46飛+、(−)、65飛+、(65)、75金+、(−)、45と++ まで7手
[ 46飛、55玉、65飛、同玉、75金、55玉、45と まで7手 ]
(−)は受方の手で何も取られなかった、(65)は65の駒が取られたことを示します。
また+、++、×は、それぞれ王手、詰み、チョンボを示す記号です。
衝立流の記法ですが、解答は[ ]内のように普通の記法でもかまいません。
変化:
46飛+、(46)、45飛+、(−)、57金++
46飛+、(46)、45飛+、(36)、37金++
46飛+、(−)、65飛×75金+、(−)、45と++
46飛+、(−)、65飛+、(46)、47金++
簡潔な配置から飛の二連捨てで巧みに玉位置を限定する、衝立詰の入門にピッタリの好作でした。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- 橋本孝治さん:
- これは衝立詰というより、衝立+入玉禁という複合ルールの感じ。
入玉禁だけでもいろいろと変な作が作れそう。
入玉禁止って、詰将棋向きのルールのような気がしますね。
- たくぼんさん:
- イマイチルールの把握が出来ていませんが、53飛は55金でダメなのかな
53飛、(−)、66飛の筋でしょうか。 65−74玉と46玉−56合に広がって、王手がかけられなくなりそう。
- どかん5号さん:
- 「衝立詰」「入玉禁」という初めてのルールに思考回路も混線、手さぐり状態。
合っていればうれしいのですが。
お見事、正解です(^^)
- 小峰耕希さん:
- 狭い中でもいろいろと変化・紛れがあって面白かったです。
2手目でもし初手で打った46の飛が消えれば▲45飛以下早く、
消えなければチョンボ覚悟で▲65飛って訳ですね。
本局を解いていて思ったのですが、普通は「玉は下段に」、
でも入玉禁の場合には上部に追い出した方が捕まえ易い?
- 涼秋さん:
- 5五玉か5六玉かの確定にチョンボが使えるのに気付かず手間取ってしまいました。
- もずさん:
- ついたてよりも入玉禁止の感覚がつかめなくて大変でした。
65飛に46玉なら47金で詰むわけですか。
- S.Kimuraさん:
- 慣れないので,初手4六飛に同玉として詰むことを理解するのに時間がかかりました.
- 井上順一さん:
- 衝立詰はひさしぶり。入玉禁なので、初手一発で玉が急に狭くなる。
作者ttdiamondさんのホームページ、ついたてDiamondでは、衝立将棋の研究や実戦譜、そして衝立詰将棋もたくさん紹介されているので、是非ごらんください。
ところで、本稿を書いているうちに3手目75飛がかなり危ないのに気がつきました。 チョンボ(反則)は4回必要ですが、27手で詰むようです(分岐棋譜で示しました)。
作者 「ご指摘のように反則4回で詰みますので,反則許容回数を3回として修正させてください。」
|