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詰将棋おもちゃ箱詰将棋美術館
アート展示室 No.107 猫田いわしさん

詰将棋美術館
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棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
大菱 50手台

アート展示室No.107 猫田いわし

この形は大菱と呼ばれています。 詰上りが大菱になるあぶり出し曲詰は、久留島喜内の将棋妙案第94番、桑原君仲の将棋玉図第91番をはじめ、多数作られています。 しかし、初形曲詰の大菱は、ミニコミ誌を除けば河内勲さんに2作(おくろう記第39番、72番)あるぐらいで、かなり珍しい。

本作も作者の猫田いわしさんのTwitterで5月9日に図面が掲載されています。

37角・77角と68龍から想像できるように、手順はアート展No.106と同様龍追い趣向なのですが、こちらは逃げ方が難しい。 実際に手順を進めて確認していきましょう。 初手は65龍の一手で、24玉とと金を取るのは46角、14玉、13角成、同玉、15龍以下で詰むので16玉と逃げるしかなく、25龍以下龍追いに入ります。

  65龍、16玉、25龍、27玉、26龍、38玉、28龍、47玉、
  48龍、56玉

37角の周りをまわって48龍のとき、作意は10手目56玉ですが、36玉が悩ましい。 とりあえず、作意手順の方を先に進めましょう。

  57歩、65玉、68龍、74玉、64龍、83玉、84龍、72玉、
  81龍、63玉、75桂、74玉、84龍、65玉、64龍、76玉、
  66龍、87玉、

57歩に67玉や68龍に75玉・76玉は、上を回るのを省略できるので、短絡して早い。
また、75桂のとき54玉は51龍、65玉、55龍、76玉、66龍で作意に合流して同手数ですが、51で取った歩が余ります。

  86龍、78玉、79歩、69玉、66龍、58玉、68龍、47玉、
  48龍、36玉、46龍、27玉、26龍、38玉、39歩、49玉、
  46龍、58玉、48龍、67玉、68龍、76玉、66龍、87玉、
  86龍、98玉、88龍 まで55手

角の周りを回転するのを歩打で打開するのは覚えのある手筋。 78玉、38玉の両方とも塞がれて収束します。

さて、ここで、10手目36玉を考えてみましょう。 こちらのルートでは先に39歩、79歩を打つことになります。 具体的には、
46龍、27玉、26龍、38玉、39歩、49玉、46龍、58玉、
48龍、67玉、68龍、76玉、66龍、87玉、86龍、78玉、
79歩、69玉、66龍、58玉、68龍、47玉、48龍、56玉、
ということで、結局は56玉の順に入ることになります。
78には行けないので、作意と同様に進めると88龍まで55手で詰み。
では変化同手数かというと、この順では86とが消えているため、75桂、74玉のとき85龍以下51手の早い順があります。 そのため、75桂には54玉が最長で、51龍以下55手駒余りになるので、10手目は56玉が正解というわけです。

86とを消させないよう、68龍に76玉のところで56玉と逃げれば?
57歩、45玉、48龍、54玉、43龍、65玉、63龍、75玉、
64龍、75玉、66龍以下79歩を打って右辺で49手で詰み。

56玉とするタイミングがいろいろあってややこしいですね。 特に36玉以下でも39歩、79歩を打ってから作意同様に進める変別順があるのが間違いやすい。 展示室では変別解は正解としているので問題はありませんが、上記の事情で10手目は限定されています。

盤面いっぱいの大菱の初形曲詰から迷路のような龍追いと、パズルのようなアート作品でした。 そういえば、芦ケ原伸之さんに「PUZZLART(パズラート)」という本があるのを思い出しました。

それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。

松崎一郎さん:
軽快なテンポでチョー気持ち良い。
山下誠さん:
きれいな大菱の初形。前作とセットの易しい龍追い手順。
S.Kimuraさん:
どちらの分岐に進めば最善なのかが分からずかなり悩みました.
おかもとさん:
こちらも初形曲詰+龍追い。 62歩は飾り駒?
占魚亭さん:
楽しい龍追いパート2。 やさしい構造。
inokosatoshiさん:
綺麗な初形。 しかし私の棋力では、51と・62歩配置の意味づけが分かりませんでした。 教えていただければ幸いです。

51とは解説の通り、10手目56玉のとき36玉の変同と22手目74玉のとき54玉の変同を駒余りにするための配置。 62歩は、84龍のところ84と以下の余詰防ぎで置いたと思いますが、51とを置いたことでなくても大丈夫になったのかな。

小山邦明さん:
アート展示室No106とセットとなる手順も易しい楽しい作品でした。
二つの難しい初形をあっさりクリアしていますが、このような手順を思いつくまでは、きっと大変だったと思います。
池田俊哉さん:
37と77の角を軸とした龍追いで、79と39への歩打ちも趣向チックな手順も楽しい。 こちらも大型初形曲詰の一つの方向性を示した形なのかな

アート展示室No.107 解答:8名 全員正解

  池田俊哉さん  inokosatoshiさん  S.Kimuraさん  おかもとさん
  小山邦明さん  占魚亭さん  松崎一郎さん  山下誠さん

当選者は、展示室で発表しています。