「理数生物」授業日誌 5月

4月30日(水)授業
細胞膜とその性質「浸透現象」

演示 卵の膜を使った浸透現象

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細胞膜は「半透性」と言う性質を持っています。半透性の膜を隔てて濃度の違う溶液がある時,溶媒である水は濃度の低い方から高い方に多く移動します。これを「浸透」と呼びます。

殻の一部を取り除いた卵にストローをさしこみ水につけておくと,浸透現象で卵の中に水が入り,黄身がストローをのぼっていきます。(参考:田中,1998,遺伝別冊10号)


「卵の中はどうなっているの」(生徒A) 「そんなの聞いたのはこのクラスが初めてや」(B)

5月1日(木)授業
動物と植物の浸透現象

浸透圧の大きさ

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溶液はその濃度に応じて浸透圧というエネルギーを持ちます。浸透圧はP=CRTという式で求められます。Cは溶液のモル濃度で,要は溶質が何粒溶液中に含まれているかが重要なのです。

植物細胞は低張液に入れると水が入り,細胞壁に膨圧が生じます。この膨圧こそ,浸透圧(持っている力)が実際発揮している力なのです。


「キャベツの千切りは食べる前に水につけること」(B) 

2日(金)実習
「ユキノシタの細胞の浸透圧は何%のスクロース溶液と等張か」

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ユキノシタの細胞をいろいろな濃度のスクロース溶液にい入れて,細胞の様子を観察しました。「原形質分離」が観察できた濃度は「高張」です。ついでにポカリスエットで試してみました。

蒸留水に入れると,膨らんでいるように見えます。

15%スクロース溶液では,どの細胞も原形質分離を起こしました

「ポカリスエットはかなり濃い!」(一同)

6日(火)授業

「細胞膜のはたらき」

能動輸送と受動輸送

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細胞膜は完全な半透性ではありません。水以外にも小さな物質や脂質に溶けやすい物質は通過します。また,ゆっくりと時間をかけて透過する物質もあります。さらに,特定の物質を通すための穴(チャンネル)もたくさんあります。

膜を通過することのできる物質は,薄い方から濃い方へ「拡散」によって移動します。一方,細胞膜上には様々なポンプがあり,エネルギーを使って物質を薄い方から濃い方に透過させます。「輸送」は細胞が生きていくために大変重要なはたらきです。

「細胞膜はただの膜ではない,いろいろな装置がたくさんついた,機能に満ちた膜です」(B)

7日(水)授業

「細胞分裂」

細胞分裂の過程

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細胞が分裂する前には,「遺伝子の複製」が起きます。そして,細胞分裂では複製された遺伝子(染色体)が巧妙にちょうど二つに別れるようなしくみが働きます。わざわざ染色体が太く短くなって別れるのは,そのためです。たくさんの遺伝子によって作られる複雑な体を持った生物には,そんな分裂のしくみが欠かせません。

「明日の授業は実習。教科書の写真よりもきれいな細胞分裂が観察できます。」(B)

8日(木)実習 2時間連続

タマネギの染色体は何本?

「細胞分裂の観察」

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英語の授業を1時間いただいて,2時間連続の実習です。タマネギの根端細胞をとり,「固定」,「解離」,「染色」,「押しつぶし」そして「検鏡」をすべて生徒自身が行ないました。さすがに2時間あると,何枚も満足いくまでプレパラートを作り,じっくりと観察できました。染色体数(n=16)を数えることができた人も,何人かいました。下の染色体像はすべて生徒が作ったプレパラートを生徒自身の顕微鏡で見たものです。

1日で根が出ます 根をとります。

「解離」

60℃の塩酸に5分つけます。ウオーターバスを使いました。

力一杯押しつぶし

中期像

後期像(極から)

3つ並んだ終期像

レポートより「細胞分裂を極めた。」(多数) 「染色体数を数えられなくてくやしい」(数人)

9日(金) 授業

細胞分裂のまとめ

多細胞生物のつくり(植物)

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前日の観察では各種の処理に約1時間かかりましたが,残りの1時間は,じっくり観察することができました。みんな時間一杯,よりよく見ようと,押しつぶしをしたり,粘り強く顕微鏡をのぞいていました。「さすが理数科」と感心しました。
細胞質分裂は,動物は周囲から,植物では観察した通り細胞板が形成されます。

植物細胞は,分裂をする細胞と,もう分裂しない,分化した細胞からなります。分裂組織には,たてにのびる頂端分裂組織と,横にのびる形成層とがあります。

「『となりのトトロ』では,トトロの魔法で,変なところに分裂組織ができるようです。ちなみに私は『となりのトトロ』が大好きです」(B)

13日(火) 授業

植物の組織

「永久組織」

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植物には表皮系・維管束系・基本組織系の3つの組織が見られます。
ふつう表皮系の細胞には葉緑体はありませんが,「孔辺細胞」だけには葉緑体が見られます。
維管束系には木部の道管,師部の師管があります。維管束は,水や養分を通すだけでなく,これがあるため,体を支えることができ,陸上で地面から立ち上がることができたと考えられます。
基本組織には,光合成をする細胞など,様々な細胞が含まれます。

「師管の師の字はかつて篩と言う漢字が当てられてました,『ふるい管』だったのです。『師』すなわち,先生と言う意味とは無関係です」(B)

16日(金) 実習

植物の組織

「単子葉植物と双子葉植物の維管束の配置」

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今週は曜日変更授業で2時間しか生物がありませんでした。
今日は,前回の授業で学習した,植物の組織の観察です。単子葉植物の茎の断面をアマドコロというユリの仲間で,双子葉植物は,ヨモギで観察しました。また,ツバキの若い葉で,断面を観察しました。


アマドコロの茎の断面です。維管束が散在しています。

ヨモギの茎の断面です。木部と師部の間に形成層がよく見えます。

ツバキの葉の断面です。なかなかうまく切れませんでした。柵状組織が分かります。

維管束のたての切片です。縞模様の見えるのが道管です。

材料の準備中に実習教諭F先生がヨモギの葉に「虫えい」(虫こぶ)を見つけました。そっと切ったら,何かの昆虫のさなぎがありました。

周囲の組織は昆虫が入ったことで,ヨモギ自身が細胞を増やして膨らんだものです。

「今日は新品のカミソリを使います。よく切れるので気をつけること。ほら,こんなふうに」(B)不覚にも指を切ってしまった。

5月20日(火) 授業

1学期中間テストまでのまとめ

「キーワード」

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今週は水曜日から中間テストです。今日は1学期前半の授業と実験を振り返りました。

科学,細胞,核,ミトコンドリア・・・・・・・様々なキーワードがありました。個々の言葉の意味をただ覚えるのではなく,それらの言葉を使って,学習した内容を他人に説明できるようになることが,完全に理解できたと言うことです。試験には,様々な記述問題を出題します。よく考えて,自分の考えを述べて下さい。

「試験の問題を作った後の,まとめです。と,いうことは・・・・」(B),「今日まとめで言ったことは,試験に出ると言うことか?」(S君)「・・・・」

5月23日(金) テスト
中間テスト

「これまでの22時間,いくつの!をゲットした?」

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これまで授業と実習で学習したすべてのことについて,どれくらい理解しているか,どれくらい覚えているかを確かめる問題を出しました。また,この一ヶ月半の間に,どれくらい「科学的なものの見方,考え方」をみにつけ,そして「論理的に説明する」ことができるようになったかを確かめる出題です。問題の一部はこちらに掲載しています。

「けっこうできてるかな?」「びみょおー・・・・・」(自問自答:B)

中間テスト問題(抜粋)

5月26日(月)LHの時間

これまでの授業の生徒による評価

-時間外-

LHの時間を少しだけ借りて,これまでの授業を,生徒に評価してもらいました。記入してもらった項目は,「よい点」,「改善してほしい点」,「感想」と,授業満足度を5段階(「不満」,「やや不満」,「普通」,「やや満足」,「満足」)で点数をつけてもらいました。

多くの実習を取り入れている点や,実習の内容について満足している反面,座学では,一方的な講議で要点がはっきりせず,理解できないなどの,評価が下されました。今後改善するよう精進します。詳しい結果はこちらです。

▼授業評価結果へ

5月27日(火) 授業

中間テスト解説

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中間テストの解説を行ないました。テストとは,教師にとっては成績をつけるための手段の一つであり,生徒の理解度や,自らの授業の成果を計るものです。それは生徒にとっても同じことで,しかし,「何のために」と,問われればまず第一に,授業・実習の中身をどれくらい理解できたか,学習した内容をもとに,生物についていろいろなことを科学的に考えることができるかを,確認するものです。解説を聞くことにより,これまでの授業・実習の仕上げをすると考えて下さい。

「模範解答が欲しいのですが」(生徒),「作ってきたら添削してあげます」(B)

5月28日(水) 実習

減数分裂の観察

体細胞分裂とはどう違う?

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テッポウユリのつぼみが,予定外に早く大きくなったので,授業ではまだすすんでいませんが「減数分裂」の観察を行ないます。子どもを作る時に,卵細胞と精細胞が合体します。それらの細胞は「生殖細胞」と言い,「減数分裂」と言う特殊な細胞分裂を経て,作られます。体細胞分裂とどう違うのでしょう。分裂でできた染色体の数は?
生の材料を使いたかったので,授業よりも大分早く観察することになりました。しかし,生の材料だと固定がいりません。

テッポウユリのつつぼみ 一本取ってありあります。

やくの中身を絞り出し酢酸オルセインで染色

第1分裂中期がいっぱい

第1分裂中期像 ピントをずらせば12個の染色体が数えられます。

第1分裂後期・終期像

第2分裂中期・後期・終期像

とてもうまく見ることができました。全員が,減数分裂のすべてのステージを観察できました。
「減数分裂って,どんな分裂だった?」(B)「てんとう虫みたいでカワイイ」(女生徒)

5月29日(木) 授業

動物の組織

「動物ではほとんどの細胞が分化している」

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動物の組織には,体の表面におもに存在し細胞が密に集まった「上皮組織」,突起のある細胞が情報を伝える「神経組織」,収縮する細胞質を持つ「筋組織」,そして,細胞どうしの間が広く,そこに様々な特徴ある物質を持つ「結合組織」があります。

「明日は筋組織と結合組織を観察します」(B) 「どーぶつを解剖するのですか」(生徒) 「肉屋さんで材料を買ってあります」(B)

5月30日(金)実習

動物組織の観察

筋組織と結合組織を観察しよう

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スーパーで一週間前に購入したニワトリの骨付きもも肉を,筋肉と骨に分けて,筋肉は冷凍,骨は食酢につけておきました。
筋肉は針でほぐしてメチレンブルーで染色し,絞りを少し開いてみると,さざ波のような横しまが観察できました。「絞り」がポイントでした。


骨は食酢で柔らかくなっているので,カミソリでそぎます。染色はメチレンブルー。

硬骨組織はハーバース管と呼ばれる管を中心に同心円状の構造が見えました。細胞は小さな青い点です。

軟骨組織は数個の細胞(青い固まり)と隙間をうめる均質な物質でできています

今日もまた,カミソリで指を切ったのは・・・「私です。皆さん気をつけて」(B)

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