2003年度第1学期 1学年 理数生物 中間テスト問題(抜粋)

1. 以下の文を読み問に答えなさい.

 科学(理科)には三つの疑問が存在する.科学とはその疑問を明らかにする過程である.一つ目の疑問は「何が」という疑問(What)であり,それはこの世の中のあらゆる自然の現象・存在を観察し,それを記載する作業である.二つ目の疑問は「いかに」という疑問(How)で,記載された事実が,どのような仕組みを持つのかを明らかにする過程である.例えば,「植物の葉は緑色をしている」さらに,「植物の葉の細胞の中には緑色の色素を含む構造が存在する」ことを観察で明らかにして記載するのが「何が」の過程である.そして,「植物の葉にある緑色の色素は,どのような化学反応を経て作られるのか」あるいは,「なぜそれが緑色に見えるのか」という仕組みを,明らかにするのが,「いかに」の過程である.そして,三つ目の疑問は「なぜ」という,生物学に特有の疑問(Why)である.地球が物理法則に従って太陽のまわりを回ることに対して,「なぜ」という疑問は科学の世界では成り立たない.しかし,植物の葉に緑色の色素が存在する理由(「なぜ」)は「生物の進化」を考慮に入れれば仮説をたてることが可能である.

 科学は,以上の疑問に関して,@仮説をたてる.A仮説が正しいかどうかを検証する.B多くの現象で共通した仮説が検証され,その仮説が一般化(法則化)される.という手順が踏まれる.

(1) フックが手製の顕微鏡で「コルクが小さな部屋からできている」ことを明らかにしたのは,科学の三つの疑問「何が」,「いかに」,「なぜ」のうちどれか.

(2) フックは,顕微鏡でコルクをみて,そこに見える小さな部屋に何と言う名前をつけたか.英語で答えよ.

(3) 「生物はフックの見た小さな部屋からなる」という仮説は何と呼ばれるか.

(4) (3)の仮説を証明するためにはどんな検証が必要か.具体的に説明しなさい.

(5) (4)の答えの他に,一般に仮説を検証する手段としてどのような方法があるか.

(6) (3)の仮説が「誤っている」ことを示すためには,どのような証拠があればよいか.具体的に述べなさい.

(7) 「なぜ」植物は動けないのに動物は動き回るのか。上記の問題文を参考にして,植物が動き回らなくても良い理由を考え,あなたなりの仮説を簡潔に説明しなさい.

2.顕微鏡観察に関して,以下の文を読み,問に答えなさい.

 ヒトの目の分解能(見分けられる最低の大きさ)はおよそ0.1mmであり,それより小さいものは,虫眼鏡や顕微鏡を用いなければならない.顕微鏡はふつうレンズを用いて光を( a )させて観察する.鏡を用いて導いた光は試料を( b )して対物レンズ,接眼レンズを通って目に達する.細胞の大きさを測定するため,接眼レンズにミクロメーターを入れ,対物レンズを10倍にして,あらかじめ接眼ミクロメータの一目盛りがどれくらいかを対物ミクロメーターを用いて測定したところ,図のようであった.ただし,対物ミクロメーターの一目盛りは10マイクロメートルである.タマネギの鱗茎の表皮細胞を10倍の対物レンズで観察したところ,鱗茎の中心近くの細胞では,細胞の長さが接眼ミクロメーターの3目盛りと一致した.また,鱗茎の外側の表面近くの細胞では,長さが接眼ミクロメーターの8目盛りと一致した.接眼レンズはいずれの観察にも同じものを使った.

(1) ヒトの目の分解能はおよそ何マイクロメートルか.単位は記号で答えなさい.

(2) 文中のa,bに適する語句の組み合わせを下から選び,記号(ア〜カ)で答えよ.

   ア    イ    ウ    エ    オ    カ

a  反射   反射   屈折   屈折   透過   透過

b  屈折   透過   反射   透過   反射   屈折 

(3) タマネギの鱗茎のように色のついてない細胞をそのまま染色せずに観察する時,細胞の様子をよりくっきりと(コントラストを強く)観察するには,どのような操作をすれば良いか.

(4) タマネギの鱗茎の中心近くの細胞の長さは何マイクロメートルか.

(5) タマネギの鱗茎の中心近くの細胞を観察した時,そのまま対物レンズを40倍に換えると細胞の長さは接眼ミクロメーターのおよそ何目盛りと一致すると予想できるか.

(6) (5)のように換えた時,視野の中にはおよそ8個の細胞が観察できた.対物レンズが10倍だった時には,視野の中に何個の細胞が観察できたと考えられるか.以下の中から最も適するものを選びなさい.観察できた細胞はみな同じ大きさとする.

 2個   4個   8個   16個   32個   64個   128個

(7) タマネギの鱗茎の中心近くと表面近くの細胞に占める核の大きさの割合はどのようであるか.以下から選び記号で答え,それを選んだ理由も答えよ.

ア 中心>表面  イ 中心=表面  ウ 中心<表面

(8) オオカナダモの葉を観察するとその中の緑色の粒が移動する様子が見られた.10倍の対物レンズで観察すると30秒で接眼ミクロメーター5目盛り分移動した.

a.緑色の粒子がく現象を何と呼ぶか.

b. aの移動速度は秒速何マイクロメートルか計算して求めなさい.また,時速になおすとどうなるか.それぞれ最も適する単位を用いなさい.

c. aの現象は「なぜ」おこると考えられるか.この現象がおこることによる利点に着目して考察しなさい.

3〜6番略

7.顕微鏡でゾウリムシを観察したら、ゆっくりと収縮を繰り返す収縮胞という構造が見られた。「収縮胞には浸透現象で細胞内に過剰に入った水を、排出する働きがある。」という仮説を検証する方法を考えなさい。具体的な実験のデザインと、期待される結果を、簡潔に述べなさい。

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