夜 風 (全55篇) |
花一輪 細い路地へと入り 少しゆくと 地下へと続く小さな階段がある 下りれば 黒ずんだ木の扉 ゆっくりと開ける 中は広く、穏やかな光に満ち 涼やかな空気が 失われぬ静けさとなって漂っている 集う旅人たちは、それぞれに 歌い、踊り、語り 眺め、聞き、くつろぎ この場のひとときを 旅の安らぎとしてともに過ごしている 私もまた、この場所で 旅先で経験したことを語り、歌いする 他の旅人の話や歌に聴き入る 笑ったり、少し涙したり 時には怒ることもあるけれど 帰るべき場所を失っている私には 寄りうべきところがある ということが、何よりもありがたい この聖なる場所が失われぬことを この場に集う旅人たち それぞれの道が、この場と同じく 穏やかな光に包まれ 安らぎへと至らんことを |
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