夜 風
(全55篇)
花一輪


細い路地へと入り
少しゆくと
地下へと続く小さな階段がある
下りれば
黒ずんだ木の扉
ゆっくりと開ける

中は広く、穏やかな光に満ち
涼やかな空気が
失われぬ静けさとなって漂っている

集う旅人たちは、それぞれに
歌い、踊り、語り
眺め、聞き、くつろぎ
この場のひとときを
旅の安らぎとしてともに過ごしている

私もまた、この場所で
旅先で経験したことを語り、歌いする
他の旅人の話や歌に聴き入る
笑ったり、少し涙したり
時には怒ることもあるけれど
帰るべき場所を失っている私には
寄りうべきところがある
ということが、何よりもありがたい

この聖なる場所が失われぬことを
この場に集う旅人たち
それぞれの道が、この場と同じく
穏やかな光に包まれ
安らぎへと至らんことを
夜風/その1(24篇)
夜風/その2(10篇)
夜風/その3(21篇)
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