二月十四日(日) 旅のフィナーレ 国後の夜明け
四日という短い日程で望んだ今回の旅も、あっという間に最終日の朝を迎えてしまった。
何という光景だ! 前日は沖合にあった流氷が、足下の海岸にまでびっしり押し寄せている。頭上には星が輝き、対岸の東の空は赤く染まり始め、国後の島影が黒いシルエットをつくっている。さらに、伊藤さんがコッタロの展望台で見たという「暁の三日月」が端正な光で全景のアクセントとなっている。夢に見た国後の黎明だ。 夜明けのドラマが展開された一時間あまりの時間は、あっという間に過ぎた。意識の中では本当に僅かな時間だ。ただ、撮影中はわからなっかたが、手袋もしないで冷気にさらしていた指先は、その後、相当長い時間しびれが残った。 真っ青な空と純白の氷海を背に、後ろ髪を引かれるような思で羅臼をあとにした。僅か四日間、伊藤さんは六日間の旅であったが、今回もまた、密度の濃い贅を尽くした道東紀行となった。 中標津空港を離陸した飛行機は、まもなく広大な屈斜路湖と神秘の摩周湖に見送られて羽田へと向かった。
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