●アルビレックス・ゲームレポート2008
第10節 vs大分トリニータ(AWAY) 2008/5/3
(文:オヤジ 2008/5/31)
4月を負けなしで終わったとほっとしたところで、谷底に突き落とされた。この敗戦はただの敗戦に非ず。大変重い意味を持つ敗戦であった。
鈴木監督はやはり大分を分析できなかった
前半12分の金崎のゴールは私を絶望の谷底へ突き落とすには十分な一撃だった。なぜなら、この試合も鈴木監督は大分を分析できずに試合に臨んでいるのだとはっきりと認識できたからである。そしてシャムスカ監督は的確にアルビを分析していた。前半12分のゴールは両者の差を如実に映し出すゴールだった。
アルビはスローインからのマイボールをものに出来ずにカットされ、そのボールは根本へ渡った。その時点で寺川が金崎のマークに付いていたが、ボール保持者の根本に注意が行き、金崎を放してしまう。
ただ寺川は根本へ厳しいプレスに行くわけでもなく、中途半端に根本がパスを放つのを見ているだけになる。このプレイが勝負を分けた。寺川は根本に行くか、金崎に付いていくかをはっきりすれば、結果は異なっていただろう。ここ数試合の寺川は決定的な判断ミスが続いている。
マークから解き放たれた金崎は爆発的なランニングからスペースに飛び出し、思い切り良く右足を振りぬき、ゴール。このゴールは昨年の梅崎(現浦和)の動きを想起させるものだった。
昨年の大分も梅崎や山崎(現G大阪)がスペースへ積極的に飛び出すことが攻撃の
基本パターンであったが、この試合も全く同じ形だった。パスを出した選手は根本、ゴールした選手は金崎と選手は替わっているが、仕掛ける攻撃は同じパターンだった。
アルビはポイントになるトップ下の選手の飛び出しとボランチからの配球のケアについて全く対策をせずに臨んでしまった。この試合は前半13分で勝負がついていた。このゴールの後、鈴木監督はトレスボランチを指示したが、混乱は解消できるはずがない。試合前に対策を講じなければならない問題を試合中に先延ばしにしただけだった。
この試合の大分の2点目も昨年のパターンだ。高松の役割をウェズレイが務め、山崎の役割が松橋優だった。ウェズレイが楔を受けて、松橋へスルーパス。高松のポストに比べても、むしろスムースなくらいだった。アルビのDFは為す術なく、ゴールを奪われた。
大分は1点目で鈴木監督とMFを混乱に陥れ、2点目によって柏戦以降、堅陣を誇ってきたDFを崩壊させた。アルビはこの2失点で機能不全となった。この時点で勝負は決まっていたのである。
シャムスカ監督はどのようにアルビを分析していたか
私は
京都戦のレポートでアルビの現状を以下のように分析した。
『現状のアルビを敵にするのであれば、中盤を厚くして試合を支配し(中盤の構成力は攻守ともにアルビは低レベルだ)、DFを釣り出してギャップをつくり、ラストパスを出す形が最も有効だろう。つまりアルビ相手であればMFで勝負を決するべきである。』
大分の1点目を振り返ると、上記の分析がそのまま当てはまるかのようなゴールではないか。2点目はFW同士のワンツーパスで見事にDFを崩しているが、ウェズレイは中盤の位置まで下がって、アルビのDFラインにギャップを作っている。
京都と東京Vは各々のFWへのパスのほとんどが足元へのものであり、アルビDFはセットした状態で相対することが出来、実に守り易かった。しかし大分は違った。同じ愚を冒すことはしなかったのである。的確な分析が成せる業だった。
また、私は
柏戦のレポートにおいてこのようにも分析していた。
『アルビは前半に(しかも早い段階で)失点することが多く、失点すればチームの雰囲気が一気に下降し、修正ができないほどになる。今のアルビと対戦するチームは前半からフルパワーで叩いて逃げ切ることが上策である。』
柏戦の頃とはチーム状態がやや異なるものの、高々1ヶ月前の話である。大分(シャムスカ監督)はこのようなアルビの現状を踏まえ、前半から豊富な運動量で必ず複数のパスコースを確保するように動き回り、それこそフルパワーで攻撃に出ていた。3点目を奪った後はバテたものの、その時点で既に試合を決めている。シャムスカ監督にすれば、これ以上プラン通りの試合は他にないだろう。
大分戦は必ず指揮官の能力を確実に感じさせられる試合になる。そして常に結果は同じだ。何故、鈴木監督は大分を分析できないのだろうか。私には全くわからない。大分の監督がシャムスカである限りは敗れ続けねばならないのか。
おわりに
この試合でダヴィは最後の出場となった。
技術の高さを感じていただけに非常に残念な結果だ。G大阪戦でのレポートでも述べたが、ダヴィを見ると、Jリーグで活躍できる外国人選手を探す事は本当に困難なことなのだと感じてしまう。
アルビはこのあと、Jリーグを知る(といっても実績を残したのはJ2であるが)アウグストを獲得することになる。
なぜアウグストなのだろう。他の選手の現状とリーグを深く分析した上での獲得だろうか。疑問が残る。私は単純に以下の5条件で検索したらアウグストが浮かび上がっただけのような気がしてならない。その5条件を以下に記す。
・ダヴィの代役となる攻撃的なポジション
・ダヴィ同様に左利き
・ドリブルでキープが出来る
・Jリーグ在籍経験がある
・移籍に要する費用が安い
この5条件はいかにも発想が安易過ぎる。
特に「Jリーグ在籍経験がある」という条件を付加するあたりに発想の安易さが見える。確かに浦和やガンバは「Jリーグ在籍経験のある選手を引き抜く」方法で旨味を得ており、昨シーズンまでアルビに在籍していたシルビーニョも仙台での在籍経験があり、そのような意味ではアルビも成功を経験している。
強豪クラブを中心にこの方法が流行し、自身も成功を経験しているとはいえ、この方法に依存することは良いとは思えない。我々は強豪クラブでは決して無い。強豪に勝つためには頭脳を行使し、新たなチャレンジが必要なのではないのか。自らを真に見つめ直した結果、新戦力として必要なのは本当にアウグストだと言えるだろうか。
今、アルビに最も必要なものは良質なボランチだ。アルビのボランチは人数は揃っているが、他クラブに肩を並べる事が出来るほどのドイスボランチを形成できない。どこか一点補強するならボランチのはずだったのだが、認識違いも甚だしい。
熟考された発想の無いアルビレックス新潟という組織には金属疲労のような疲弊感を感じる。右肩上がりの時代は終わりだ。サポーターとして腹を据えるときが来た。私もアルビに対しモヤモヤしたやり場の無い思いを抱えながら、耐えていかねばならないと思う。