本書は、スペイン内戦に関する、最新にしてもっとも意欲的な研究の、集大成である。スペイン内戦を、これほど多角的に捉えた研究書は、世界でも珍しい。それぞれのテーマが、さらなる研究への貴重な足がかりになるだろう。
逢坂剛氏推薦(本書帯より)
川成洋氏、坂東省次氏他編
第2部第10章「スペイン市民戦争と中国、そして日本」執筆
以下、第10章より一部抜粋
スペイン市民戦争が始まったのは一九三六年。同じ年、中国では共産党と国民党とが統一戦線を結ぶきっかけとなる西安事件が起きている。日本がロンドン軍縮会議から脱退して軍備無制限時代に突入したのも、二・二六事件が勃発して陸軍による政府支配が強まったのも同じ一九三六年である。それらは偶然、同じ年に起きたのだろうか。いや、そうではあるまい。スペイン市民戦争勃発と西安事件、そして日本の軍縮会議脱退は不思議な歴史の縁と言えるのではないだろうか。
明治以後の近代日本の歴史は、裏返せば中国との関連を抜きには語れない。中国の歴史は日本の歴史でもある。それと同時に、中国を取り巻く世界情況を忘れることはできない。つまり近現代の日本史は、単に日本だけの歴史ではなく、もっと大きな歴史の文脈で見る必要がある。そしてそこでは、スペイン市民戦争の影響をまったく無視することはできないだろう。