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”いのち”と”こころ”と”平和”を考えます。ジャーナリスト 中村尚樹 Nakamura Hisaki Clubhouse

著作BOOKS

『被爆二世を生きる』(2010年 中公新書ラクレ)

教育方針イメージ

 原爆投下から65年 ―ー 歌手、ジャーナリスト、医師、NPO代表、高校生平和大使…

 親時代の記憶・体験を受け継ぎつつ、人生のテーマに挑戦する人びとのの軌跡。

 その姿は、戦争を知らない世代がどのようにその記憶と向き合うかの、ひとつの答えになる。

  (本書表紙・帯より)



 被爆者の子供として生まれ、差別や偏見にさらされてきた「被爆二世」。さまざまな思いを抱えて生きる彼らを追い、被爆者をめぐる歴史をひもといたノンフィクション。戦争体験が無い世代が、過去の記憶をどう継承するか。その示唆に満ちている。

 元NHK記者のジャーナリスト。NHK長崎支局に赴任した1968年から、被爆者問題に向き合う。「胸に秘めたつらい思いを打ち明けてくれる方々を取材するうちに、平和や核兵器の問題にテーマが広がった。僕のライフワークです」

 被爆二世として登場するのは、生きるすばらしさを伝える歌手や貧困支援に奔走する人、被爆した父の話を受け止めるフリーラーター…。平和運動はもちろん、違う分野で活躍する人の根底にも、原爆とは何かを考えた原点がある。

 <私たちは、被爆者の一番近くで育ったんです。言葉にできない被爆者の思いを、そばで感じた存在>。写真家として活躍する男性は、自らをそう位置付ける。「彼らは被爆体験を受け継ぐトップランナー。その視点を軸に話を聞きました」

 被爆の遺伝的影響についても、各種の医学研究を紹介し、放射線の恐怖をあおる報道を検証。「研究途中なので、遺伝的影響が無いと断言はできないし、あるとも言えない。今はあいまいな差別意識だけが残っている」と指摘する。

 重い内容だが、本書には希望があふれている。反日感情が根強い中で開かれた韓国での原爆写真展や国連本部を訪ねる高校生平和大使の取り組み。試行錯誤しながらの世界的広がりや、世代を超えた連帯感までも描かれるからだろう。「核兵器廃絶は難しいという人もいるが、決して悲観したものではない」。20年を超える取材経験から、こう確信している。

 一つの言葉がある。<こころのヒバクシャ>。被爆者ではなくとも証言を聞くなどし、平和を願うようになった人々を指す。意識の持ち方次第で、誰もがなれる可能性がある。「私たちが生きているのは核のある時代。この本を、時代を考える手がかりにしてもらえれば」後略

  東京報道 栗山麻衣記者(2010年8月29日付け 北海道新聞、
              2010年9月19日付け 西日本新聞)


 健康被害や遺伝的影響への不安を自身が抱きながら、親世代の被爆体験の苦しみを次の世代に伝える被爆二世たち。「原爆の子の像」のモデルとなった折り鶴の少女のおいで彼女の思いを歌にする歌手、命の大切さを説く産婦人科医、同じ被爆二世の肖像を撮り続ける写真家らの姿を著者が追う。

  (2010年8月8日付け 朝日新聞)


 広島・長崎で被爆した親をもつ「被爆二世」。その差別の歴史や遺伝的被爆の可能性等、次世代が抱える問題を紹介しながら、彼らの様々な活動をジャーナリストが追う。

  (『週刊文春』 2010年7月29日号) 




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