「驚いたな…本当にアカなんだね?」
差し伸べられた手を掴んで立ち上がったユウヒは、じっと自分を見つめている四人を見た。
「昨日はほんの子どもだったのに」
ユウヒの言葉に青い髪の若者、アオが答える。
「私達も、こんなに早くこの姿に戻れる日が来るとは思っていませんでしたよ」
「昨日の今日だもんなぁ!」
そう言葉を継いだのは白い髪の毛をしたシロだった。
そしてまた呆れたように黒い髪を後ろで一つに束ねているクロがため息混じりにつぶやく。
「おい、だから言葉遣い…」
そのやり取りを見てユウヒが噴出した。
「ふっ…あはははは。何だかよくわからないけど、本当にあの子達なんだね、あなた達は」
緊張のほぐれたユウヒを、四人が嬉しそうに見つめている。
その視線にユウヒはふっと我に返ると、思い切って口を開いた。
「えっと、いろいろ聞きたい事がありすぎて何から言えばいいのか、ちょっと途方にくれちゃうんだけど…あの、いろいろ聞かせてもらってもいいかな?」
四人は顔を見合わせて、その後ゆっくりと頷いた。
ユウヒは二通の手紙を拾い上げ、洞穴の中に戻ると、それを荷袋の中に丁寧にしまった。
そしてまた入り口近くの明るい場所に戻ると、四人を促して外に出た。
「へぇ…」
ユウヒが照れたような笑いを浮かべて四人を見つめる。
「明るいところに出たら、消えちゃうんじゃないかって…ちょっと、思ってた」
ユウヒの言葉に四人は顔を見合わせて笑い始めた。
「いったい我々を何だと思っていらっしゃるんです?」
「まだ何にも伝えてませんからね、無理もありませんけど…」
アオとクロが笑いながら言った。
ユウヒはさらに照れくさそうにして、それからその場に腰をおろした。
「まずは…あの、昨日は助けてくれてありがとう。傷も治っていて驚いたよ。あと、その…いろいろごめんなさい」
ユウヒはぺこりと頭を下げて四人に謝った。
「アカには、その…もっともっと謝らないといけないよね。ごめんなさい。命を助けてもらったのに、私は剣を突きつけたりした。本当に悪かったね」
「あの、本当に、もういいですから」
アカが余りにも恐縮しているのがおかしくて、ユウヒはわかったから、と笑って言った。
戸惑いに混じって、温かい雰囲気に場が包まれていた。
「昨日の今日だからね、まだちょっと正直よくわかってないんだよ、申し訳ないけど。えっと、あなた方の名前は…髪の色と同じでいいのかな?」
間違って呼ばないようにとユウヒが四人に確認すると、アカが他の三人に何かを確認するように視線を走らせた。
三人の了解を得ると、アカはユウヒの方に向き直って笑みを浮かべた。
「あの、ユウヒ。昨日お教えした名前は、その…幼名なんです。この姿には…」
ユウヒも笑った。
「そうなの? あぁ、それじゃ確かにおかしいね。それじゃあ私は皆を何て呼べばいいの?」
そう訊ねるユウヒに、シロが答える。
「じゃ、ユウヒはオレ達の事、信用してくれたってことか?」
ユウヒは四人の顔を一人一人ゆっくりと見渡した。
「ん〜、よくわからない。でも敵じゃないし、今ここで、一番信じられる…ん〜、信じたい、人達っていう感じかな?」
「正直なお方だ。妙な気を使われて嘘を吐かれるよりもよっぽどいい」
申し訳なさそうに言うユウヒに、クロが笑いながら答えた。
「そう言ってもらえると気が楽だよ、ありがとう」
また頭を軽く下げると、ユウヒは一息ついて話し始めた。