と、その時……――。
――キン…………――――。
耳の奥が何か高い音を捉えたような、そんな感覚だった。
「なんだ?」
寝転がったばかりのシムザが、何事かと跳ね起きる。
――キーンッッ…………――――。
そしてもう一度、それと同じ感覚に襲われ、シムザは痛みにも似た不快さを感じて両耳を手で塞いで目を閉じた。
二度同じ感覚を味わったことで、それは音ではなく、何らかの振動が空気を揺らして伝わってきたものではないかと思えるようになった。
暗闇の中、空気だけがピンと張り詰めている、そんな感覚だ。
少しその感覚に慣れたシムザがゆっくりと目を開ける。
するとそれまでどれだけ目を凝らしても見えてくることのなかった部屋の中が、うっすらと暗闇に浮かび上がるように見えていた。
シムザはその場に立ち上がってぐるりと辺りを見回した。
「牢屋っていうわけじゃねぇんだな、ここは」
落ち着きを取り戻し、耳を塞いでいた両手をゆっくりと下ろす。
目に映ったのは、先ほどまでとは比べものにならないほどに明るい光を放つ消音石だった。
足下に注意しながら近付くと、ついさっき起こった二回ほどの衝撃はないものの、ある一定の間隔をおいて消音石から波動のようなものが広がっているのがわかった。
空気に起きた波紋のようなものではないかと、シムザはわからないなりに思い至った。
壁を前に向かい合って立つと、露出している部分の肌がぴりぴりと刺激を受ける。
ゆっくりと歩いてすべての壁の前に立ってみたが、どの消音石も同じだった。
「何が起こってんだ?」
部屋の中ほどに戻り、戸惑いながらも何か情報を得ようと先入観を捨て、感覚に自分のすべてを集中した。
「落ち着け……落ち着け……」
目を瞑り、小さくそうつぶやきながら、部屋の中のどんな小さな変化をも見逃さないようにと意識を集めていく。
そうしているうちに、また例の波動がシムザを襲った。
――キーンッッ…………――――。
シムザは思わず耳を塞ぐ。
「うわぁぁああ!!!」
シムザはガクンと膝からその場に崩れた。
それと同時に、波動と共に流れてくる意識のようなものに気付いた。
「……! え!?」
何かを探すようにきょろきょろと辺りを見渡す。
そして自分の感じたものを言葉にして吐き出した。
「なんだ、これは……!?」
そうつぶやいたシムザの手が耳から離れてだらりと下がる。
そしてそのまま、意識が遠のいていったシムザはその場にばたりと倒れてしまった。
――リン……。お前、なのか?
そう思った直後、シムザは意識を手放した。