[PR] グループウェア 5.友と過ごす時間

友と過ごす時間


 広場で合流した若者達は、郷のはずれにあるキトの家に集まった。
 久しぶりに会う者も多く、お互いの近況を報告し合ったり、昔話に花を咲かせたりして楽しい時間を過ごしていた。


 この郷に住む者は、五歳になると郷塾と呼ばれる手習い塾に通う決まりとなっており、十五歳くらいまでの郷の子ども達は皆、その郷塾の塾生だった。十歳まではなるべく親から離れてでも郷に残って郷塾に通い、それ以降は年の半分ほど郷塾に通えば、あとは家族と共に郷を出て暮らしても構わないことになっている。

 郷塾ではホムラの郷の様々な慣わしなどを学ぶだけでなく、自国、クジャ王国の気候風土や慣習、宗教や歴史、さらには近隣諸国の概要などまでにわたり幅広く教えていた。

 山奥の郷、ホムラでなぜそれだけ多くの内容を学ばなくてはならないのかと疑問の声も絶えないが、それでも移民生活をおくる者達にとってはどの国に行っても戸惑う事無く暮らせるそれらの情報はとても有益なものだった。

 10年ほどの長い間、郷塾で肩を並べて過ごしているおかげで、この郷の者達はお互いに顔を見知っているだけでなく親交も深い。よって、ユウヒ達姉妹のように郷を出て各地を転々としている者達同士でも、この郷の人々は皆、お互いに親しい付き合いを保っているのだ。


 仲間達の宴席はおおいに盛り上がり、夜遅くまで続いていた。
 娘達のほとんどは明日があるからとすでに家に帰り、残っているのはユウヒとリンの姉妹とアサキだけだった。男達の中には酔いつぶれて眠っている者もいて、起きている者もいいかげん酔いがまわって、どうでもいいような話を何度も繰り返していた。

「そろそろお開きにするか!」

 スマルが声をかけると、ユウヒ達はその場を簡単に片付け始めた。
 男達は最初からキトの家に泊まっていくつもりの者が多くて、そのあたりに寝転がったままいびきをたてている者までいたが、それでも何人は立ち上がって、片付けを手伝い始めた。

「なぁ…大丈夫なのか? お前ら」

 ふいに近寄ってきたスマルの声に、片付けの手を止めてユウヒ達が顔を上げた。
「何が? 帰りの心配なら別に…」
「そうじゃねぇよ」
 酒臭いため息を一つつくと、スマルはアサキとリンの間にどかっと座り込んだ。
 立てた片膝に腕を乗せ、拳を口元に持ってきている。
 何か心配事がある時のスマルのクセだった。

「お前らだって聞いてるんだろう? 今度の…神宿りのさ」
「あぁ、それね。聞いたよ」
 ユウヒが答えると、アサキも続けた。
「なんか実感わかないっていうか、どうすることもできないしね」
「うん。今までどおりに舞うしかないもんね」

 ユウヒとアサキが顔を見合わせて頷くのを見て、スマルは何も答えないリンにも訊ねた。

「リン、お前はどうなんだ? 不安じゃないのか?」