帰郷


 ユウヒが顔を上げると、妹が祖母にちょうど飛びついたところだった。

「チコ婆さま!」
「おぉ! リンか!? もうすっかり娘さんだねぇ。元気だったかい?」

「もちろんだよ、チコ婆さま!」
 抱きついてきたと思えば今度は腕に自分の腕をからめてきて、表情をころころと変えながら、息もつかずに旅の報告を続けるリンの様子に、思わずチコ婆も破顔する。
「いやいや、あいかわらずの甘ったれだなぁ。本当に、かわいい孫娘だ」

「チコ婆さま、久しぶり。元気だった?」
 リンとチコ婆の様子を見つめて、ちょっと入りづらそうにユウヒが立っていた。

「ユウヒ! あらまぁ、こっちもまた立派になって!」
 チコ婆はユウヒにも近くに来るよう促した。
 ユウヒは言われるままにチコ婆のもとに近付いたが、妙に気恥ずかしくて、リンの様にはとてもじゃないができそうにない。

 チコ婆はそんなユウヒに優しく微笑みながら声をかけた。
「どうだい、元気にしてたかい?」
 チコ婆の問いに、ユウヒが照れたように笑って答える。
「うん。あいかわらずだよ。私も、みんなも」
 目を細めてチコ婆が頷いた。
「そうか。少し会わないだけなのにね。見るたびに素敵な娘さんになっていくよ、あんた達は」
 そう言って二人の顔を交互に見つめて、チコ婆は嬉しそうに微笑んだ。

「本当に、私の自慢の孫娘だよ。父さん、母さん達とは仲良くやってるのかい?」
「おかげさまで」
「もちろんだよ、チコ婆さま」
 ユウヒとリンが顔を見合わせて笑った。
 チコ婆も嬉しそうに二人の孫娘を見つめ、満面の笑みがより深く顔に皺をきざんでいた。

 小さかった孫達も、もうすっかり成長してチコ婆よりも背が高くなっていた。
 目線が並んだのは何年前だったろうか?

 そんな事を思いながら、十月ぶりに会う孫達と話に花を咲かせていた。