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コア研磨の真実 - SEPP編 -

LastModified 02/10/14

さて、今回はグリスと並び以前から議論の絶えないコア研磨についての話です。そうなんですよ、今回も伝熱ネタなんですよ。すみませんねえ、芸がないもんで・・・・^^;

[グリス比較]の項では、「金属同士の接触が何よりも大事であるならコア研磨は効くと思います」と書きました。思いますだあ? ああ、なんってこったい!実際に検証して確かめるのが、このショボイHPの唯一のアイデンティティだってのに!

また、某超ヒット掲示板において冷却の権威から「コア研磨をした場合のグラファイトシートの効果」についてもご質問がありましたので、併せて実験しております。

はてさてどうなりますやら。


1 コア研磨

さて、コア研磨です。実は以前にコア研磨を試そうと思ったことがあります。しかし、その時は、あまりにも個人の技量に負う部部が大きすぎると思い止めました。まあ、私が自分の腕に自信がなかったのも大きな理由です。ヤスリがけで平面を出すのは凄く難しいですしね。

しかし、私もかつて大学のゼミでは光学測定器材を作るべく、フライス盤で1/100mmの精度を出す事に命を賭けていた男です。(その割には朝はよく遅刻しましたがね^^;) ま、何はともあれやってみましょう。料理のネタは Celeron 300A です。

研磨は、平らなガラス板に耐水ペーパを張って行いました。鏡面まで仕上げるつもりもありませんので、240, 400, 600, 800,1000 番で磨いていきます。コツとしてはあまり力を入れず、引っかかる部分を取り除いてやるといった具合でしょうか。

 

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左が作業開始前です。基盤全体をマスキングしています。少し240番の上を滑らしたのが、右の写真です。見事に四隅が削れています。これを見ればいかに Celeron300Aの角が出っ張っているかわかると思います。焦らずじっくりと研磨し、耐水ペーパを細かいものにかえていきます。トータルで1時間半ほどかけました。

 

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仕上がりです。結構傷も残っておりお世辞にも奇麗な仕上がりとは言えませんね。だから言ったじゃないですか、下手だって。ま、この程度の素人仕事でどの位影響があるか、はなはだ疑問ではありますが、論より証拠。実験してみましょう。

 


2 実験方法

CPU Celeron300A 100x4.5MHz駆動 Vcore=2.05V Vio=3.66V   SL2WM 09060444     COSTARICA
M/B ABIT BX6rev2 with TurboPLL01
Cooler Alpha P125 + オリエンタルモータ6cmファン x 2 (取り付け方法はネジによるサンドイッチ方式)
OS Windows95 OSR1
グリス サンハヤト SCH-30,PGSグラファイトシート
  1. ケースは閉めた状態とする。

  2. シリコングリスはセッティングを5回行って計測し、ベストのデータを使用(作業性の影響を排除)

  3. 温度計測は以下の5点

  4. 室温、ケース内温度、CPUコア近傍、ヒートシンク(以上全てサーミスタによる)

    BX6rev2 のW83782D の機能によりCeleronコア内部サーマルダイオードより内部温度読み取り

  5. 計測条件:FinalReality を1時間以上ループさせ、温度変動がなくなった後、一番負荷の高い City 時で温度を計測


3 実験結果

これは私の環境における結果であり、ケースや使用機器により変わってくることはご了承願います。

コア研磨

室温

ケース

シンク

コア脇

コア内部

研磨前+SCH30

計測温度

23.5

26.0

29.3

31.7

44.0
室温との相対温度

2.5

5.8

8.2

20.5

研磨後+SCH30

計測温度

23.4

25.0 28.5 30.0 39
室温との相対温度 1.6 5.1 6.6 15.6

研磨後+グラファイトシート

計測温度

23.4

25 28.6 29.3 39
室温との相対温度 1.6 5.2 5.9 15.6

 


4 考察

実に驚くべき結果です。たった1時間半の素人仕事で、CPUコア脇で1.6℃、コア内部に到っては5℃もの温度低減を果たしています。まさかこれほどまでに効果があるとは思いませんでした。まさに劇的な効果と言っていいと思います。

研磨後ではグラファイトシートもグリスもほとんど同じ結果といえます。如何に金属同士の接触が効果があるかです。また、コア脇温度の低下が1.6℃にすぎないのに、コア内部温度が5℃も低下しているのは、[グリス比較]の項の考察で述べた、「コア内部の熱がヒートシンク方向に抜けやすくなった」という仮説を裏付けているのではないかと思います。

今回の結果をもって、70%以上の確信をもって以下を結論とします。(100%にしない所が、気の弱い所で・・・^^;)

 

いかなる伝熱素材も関係ない。金属同士の接触が全てである。

金属同士の接触に要求される研磨の技術レベルは決して高くない
(かもしれない)

 

空冷である程度対策を行った後に、5℃温度を下げるのは大変です。ケースの廃熱、CPUファンの大型化等やればやる程深みにはまります。しかし、今回の実験で改めて目から鱗が落ちました。そもそもCPUファンの性能を使い切っているのかと。コア研磨は確かに危険だと思います。しかし、それでもやる価値はあると思います。

 


5 おまけ

ある意味、苦労して入手したグラファイトシートを無意味にしてくれる今回の実験結果ですが、今までの私の主張である、

CPUとヒートシンク間には何も(特に空気)存在しないのが理想

には矛盾しない結果です。まあ、その為のハードルが意外と低そうだというのには驚きましたが。グラファイトシートは、やはり[作業性の影響の排除]という部分や、ペルチェ等研磨できない場合に活躍してくれるでしょう。(負け惜しみモード^^;)

最後に未確認情報ですが、注意をひとつ。今回行った 300A の場合、コアのケースが銅製だったので研磨できました。しかし、PentiumV等で使われている OLGA コアの場合、コバルトブルーの金属面に見えるのはどうやらシリコンかもしれないとの事です。硬くてもろいので、扱いに気をつけないと欠けてしまう事があるらしく、CPUが壊れるとか。

なんでもかんでも、研磨してしまって泣かない様にして下さいね。

「大丈夫! 人生取り返しはつく!!」

というのは私の敬愛する島本和彦師匠のお言葉ですが、取り返す為にはかなり苦労しなきゃならないのも事実ですから。

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