「欲望と野心、策謀と疑惑、誇りと意地。
舞台が整い、役者が揃えば、暴走が始まる。」
(高橋 良輔監督 「装甲騎兵ボトムズ
赫奕たる異端」-第4話「臨界」予告より)
という訳で、飽きもせずVapochill TuneUp part4
です。前回までで一応考えられる対策はできた様に思うので、今回はペルチェによる定負荷試験を行なってみます。
尚今回の結果・考察に関しては、gamaさん、masamotoさんから多大なる御教授を頂きました。改めて、御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
1. ペルチェの設置及び断熱
2. 検証条件
(1) 各回転数での各部の温度は以下の順となります。
エバポレータ温度 : 70W > 30W > 無負荷 >
30W+傾き > 無負荷+傾き
コンプレッサ各部 : 30W+傾き > 70W > 無負荷+傾き > 30W >
無負荷
傾き無しの場合コンプレッサ温度は共に、70W > 30W > 無負荷
の順となっています。負荷がかかったことで、エバポレータ内における冷媒の気化が促進され、冷媒が戻り銅管を飽和蒸気の状態で戻る(コンプレッサを冷やさない)様になった為と考えられます。
一方、[30W+傾き]と[70W]、[無負荷+傾き]と[30W]を比べた場合、コンプレッサ各部の温度は「負荷が大きい場合より傾けた方が高い」結果となっています。つまり「傾ける事で、冷媒はより飽和蒸気となってコンプレッサに戻っている」事になります。これは、「傾ける事で冷媒循環量が少なくなった」としか考えられません。
Vapochill でeva-20℃としたときの冷媒循環量は約1kg/h。この冷媒循環量を実現しようとすると、内径0.5mmで長さ5m近くが必要となる。しかし、実際は1.5
〜 2m 程度である(外径2mm、内径は不明)。
また、発熱の大きいアスロンにも対応している様なので、冷媒循環量を多めに設定してある可能性も高い。
以上のことから、Vapochill
のキャピラリ抵抗が少なすぎて、キャピラリ手前の液冷媒が不足、低圧側に冷媒が移動していると推定される。むしろ、
「キャピラリは絞り弁として機能しておらず、ガスの充填量で冷媒循環量を調整している」
かもしれない。その場合、熱的な均衡状態が僅かに変化するだけで、内部の状態が変化し、冷えたり冷えなかったりしてるのではないだろうか。
如何でしょうか? これが「傾き冷却の謎」の真相ではないかと思います。
(6) Vapochill の個体差 -ガス充填量のばらつきについて-
上記の様に冷媒循環量をガスの充填量で制御しているとすれば、充填量の影響でもろに個体差が発生する事になります。以下はgamaさんと意見交換させて頂いた内容を四万十川がまとめた物です。
Aseteckによると冷媒は自動充填装置(チャージングスケール)で自動充填しているとの事。
手持ちのカタログに載っているフロンの自動充填装置は 5万〜13万円の製品で充填精度は±2〜14g。
85gの充填量に対して±14gの物を使っているとも思えないので、±2g悪くても±5g程度の誤差と推定される。よって85gの充填量に対して、最大6%程度の個体差は十分に考えられる。
如何でしょうか? 6%の誤差というと大した事はなさそうですが、これがどれだけの差になってしまうかですね。エアコンや冷蔵庫等は確立した技術だと思い込んでいましたが、現状のガス冷却に限って云えば、
「最大効率を目指すのであれば、個々のチューニングは避けて通れない」
と云えそうです。
という訳でガス冷却の大家お二人におんぶに抱っこで考察を進めてきましたが、ここらで結論です。
1.
傾き冷却の原因はキャピラリの抵抗不足に起因し、冷媒循環量が不足する事で引き起こされる。
2. Vapochillの個体差は、充填ガス量のばらつき(最大6%程度?)によって引き起こされる。
3. 70W
の負荷においてはガス量の不足を引き起こしている事から、ペルチェ併用はしない方が無難。
ガス量のチューニングにより最高効率を引き出す事で、傾き冷却と同等の限界性能が引き出せると推定されますが、CPUの交換等による発熱量差を汎用的に処理する事を考えると、敢えて[傾き冷却]でチューニングしてやるのも一つの手という気もします。
私ですか?
さて、そろそろ禁断の扉を開ける時がやってきたかもしれません・・・・(爆)