title.jpg (18540 バイト)


 

Vapochill_Tune1 傾け冷却の謎

 

LastModified 02/10/14

「敢えて問うなら答えもしよう。望むることはささやかなりし。
この胸にかきいだけるだけの夢でいい。

この胸におさまるだけの真実でいい。」

(高橋 良輔監督 「装甲騎兵ボトムズ 赫奕たる異端」-最終話「触れ得ざる者」予告より)

たとえて云うならあとー10℃・・・・(by 四万十川)

Vapochillには以前より奇妙な噂がありました。曰く、「ケースを傾けると冷えるらしい」と。まさかいくらなんでもそんなと思いつつ確かめて見ました。


1 実験条件

構成

CPU SL457 125x8=1000MHz動作
M/B Epox BX6-SE
Cooler Asetek Vapochill SECC2 CPU kit with グラファイトアダプタ
OS Windows98 SecondEdition(ACPI OFF)
VGA Canopus Spectra5400SE
Memory プリンストンテクノロジー PD168G-128  9932 MT48LC8M8A2-75B
SCSI Adaptec AHA-1542CF(ISA)

計測位置

Evapo       :エバポレータのCPU接触面上部(CPUの真上)
CompUp   :コンプレッサ 頂上部
CompLow :コンプレッサ 戻り銅管付け根付近
CPU          :MBprobe によるCPUサーマルダイオード温度読み出し

計測条件

ケース開傾き無しで起動させ3Dmark2000を40分ループさせた時点で温度を計測。以後、傾き(雑誌をスペーサとしてケース底面に挟む^^;)を変化させて10分経過後に温度を計測。(エアコン使用時なので、計測が進むにつれ室温が下がっているのはご容赦下さい)


2.実験結果

傾き

SL457@125x8 Vcore 1.8V Case開 3Dmark2000ループ

備考

Evapo

CompUp

CompLow

室温

0mm

-21.0

37.1

29.2

28.6

正面左下に5mm

-20.0

37.9

29.6

28.0

正面左下に10mm

-21.0

37.5

29.6

27.9

正面左下に15mm

-27.0

41.0

35.8

27.5

正面左下20mm

-27.0

42.6

36.9

27.5

左下70mm異常振動発生

0mm

-20.0

38.5

29.6

27.7

正面右下に2mm

-26.0

44.6

38.8

26.9

正面右下に5mm

-27.0

44.6

38.8

26.7

Cool!

正面右下に10mm

-26.0

44.4

38.4

26.7

正面右下に15mm

-26.0

42.9

37.6

26.5

正面右下に20mm

-13.8

43.9

38.0

26.3

右下133mm異常振動発生

0mm

-21.0

39.4

31.0

26.1

正面に2mm

-18.3

39.4

24.3

25.9

正面125mm異常振動発生

0mm

-21.0

37.9

29.3

25.8

背面に2mm

-18.3

35.0

25.0

25.8

背面150mでも異常振動無

(注1)計測は、表上段より時系列に計測。

凄っげー、確かに冷えます!!

上記結果を見る限りでは、正面から左への傾きの影響が非常に大きいといえます。傾きを変更すると一瞬、エバポレータ温度が-18℃程度迄上がりその後、じわじわと温度が下がっていく感じです。大きく傾ければいいという訳ではなく最適値が存在する様です。傾け過ぎるとコンプレッサから異常な振動が発生して冷えなくなってしまいます。

傾ける事で、エバポレータ温度が下がると共にコンプレッサの温度も上昇している事から、ガスの流動状態になんらかの変化が起こっているのでしょうか?


3.コンデンサ、コンプレッサ単体傾き

上記結果を受け masamotoさんより以下のご教示を頂きました。

vapo_horizon.jpg (13481 バイト)
重力が利いていて、しかも左右方向にとくれば、構造から見てコンデンサしか考えられません。コンデンサは左右に14本の水平管が通ってます。この中で過熱蒸気が飽和蒸気となり、凝縮します。コンデンサの入口付近では殆ど凝縮せず、出口に近くなるにつれ、どんどん凝縮して行く訳です。コンデンサが傾いていると、凝縮したR134aは14本の銅管の中に溜まり、コンデンサ出口から出る量が少なくなり、本来液冷媒で満たされるはずの液溜の中にガスが流れて来る訳です。ガスと液冷媒が混ざった状態でキャピラリの中に入ると、evaに流れる冷媒量が減少し、高圧側は圧力が上がり、低圧側は圧力が下がります。低圧側は圧力が下がるので冷えるのではないかと錯覚しがちですが、冷媒循環量=冷却能力ですから、冷媒循環量が減れば吸熱量<発熱量となり、eva温度は上昇します。


この検証のためには、水準器を用意して頂き、コンデンサ(水平管)の傾きで評価して頂きたいと思います。(できればcomp姿勢は変化させずに...)

ご指摘を頂き水準器で確認した所、コンデンサはケースに対してほぼ水平を確保していました。加えて以下の条件で計測を行いました。

計測条件

1. ケース開傾き無しで起動させ無負荷で40分後(3Dmark2000等で負荷を与えるとシーンにより2〜3℃変動する)経過後に温度が安定している事を確認の上計測。
2. ケース全体を傾け(雑誌をスペーサとしてケース底面に4mm挟む)30分経過後に温度を計測。
3. コンプレッサ正面左側のマウントピンを抜き、ゴムマウント下にコインを挟んでコンデンサのみ傾け30分経過後に温度計測。
4. ケースを水平にし、コンプレッサ正面右のマウントピンを抜き、ゴムマウント下にコインを挟んでコンプレッサのみ傾け30分経過後に温度計測。

傾き

SL457@125x8 Vcore 1.8V Case開 無負荷

Evapo

CompUp

CompLow

室温

CPU

水平状態

-23.0

34.8

25.8

24.3

-20

正面右下に4mm

-28.0

41.5

35.9

24.4

-25

コンデンサのみ傾け

-24.0

37.4

28.5

24.7

-21

コンプレッサのみ傾け

-25.0

37.8

28.8

24.6

-22


これを見る限りでは、コンデンサ、コンプレッサのみが傾いている場合よりも、両方が(ケース全体)が傾いている方がよく冷えている様です。どの場合も、エバポレータが冷える程コンプレッサ上下部の温度は上昇しているのでガスの流動状態になんらかの変化が出ているのは間違いなさそうですね。ううむ・・・・・

コンデンサに出入りする銅管はケース正面から見て右側に配置されています。この辺りに何かあるのでしょうか・・・

どちらにしても、僅か2mm程度の傾きで5℃も温度が違うというのは驚きです。この程度であれば冷却ユニットの据え付け具合やケース設置状況の影響は凄く大きいのではないでしょうか?この辺りにVapochillの個体差と言われているものが何かあるのかもしれませんね・・・・


4.考察

状況を整理してみます。

1 傾けると確かに冷える。しかし、コンプレッサ・コンデンサ単体の傾きでは効果が弱い。
2 前後への傾きはかえって温度を上昇させる。
3 左右(私の場合は特に正面より左)方向への傾きの影響は大きく、最大で-6℃の温度低下
4 傾けてエバポレータ温度が低下した場合、コンプレッサ温度も上昇する。

という訳でなんだかわかりませんが、とにかく「傾ける冷える」というのは確かな様です。

傾ける事でコンプレッサの温度が上昇しているので、考えられるのは

1. 何らかの理由でエバポレータにおける冷媒の気化が促進されて戻り銅管を乾き蒸気の状態で戻っている
2. 何らかの理由でエバポに流入する冷媒の圧力が上がって、戻り管部が減圧されている

ああっ、全然理由になってねえっ(T_T) すみません、もう少し追試してみます。


5.独り言

という訳でなんだか全く理由はわかりませんが、噂の真偽だけは確かめられました。ううむ、しかし、すっきりしないですねえ。まあ方法論としては「傾き冷却」はかなり有効な手段である事だけは確認できました。全てのVapochillで有効かどうかはわかりませんが、ユーザの方は試してみるにも一興ではないでしょうか。

「こじつけでもつじつまがあえば、それにこしたことはない!!」

(島本和彦 著 「逆境ナイン」より)

あってへんがな・・・・

Contents

HOME