サンフランシスコから東へ３００キロ、シェラネバダ山脈の美しい自然に守られてヨセミテナショナルパークはある。平野部の灼熱が嘘のように山の冷気を含んだ風が吹き渡り、自然を愛すアメリカのキャンパー達がルールをしっかり守りゴミひとつない素晴らしい環境が維持されている所だ。

公園の中には見所が山ほどあるのだが、釣り師のサガとでもいうのか川を見ると気になってしかたがなく、つい河原に降りて観察しながら散歩してしまった。しかし見れば見るほどこの川にどんな魚がいるのか知りたくてたまらない。夕方もう一度、川の様子を見に行くとなんと日本人がルアーを引いていた。

当時まだルアーをやっている人は少なく僕もこんな物で本当に魚が釣れるのだろうか？と思っていたのだが、僕の目の前でその人はすぐに３０センチ近い見事なニジマスを釣り上げた。そしてさらにもう一匹、側でみていた僕が不審の目から尊敬の目に変わっていくのに気付いたのか？その人は『やってみますか？』と言って道具を貸してくれた。

以前、自作のルアーで何も釣れず腹立ってそれから全くやっていなかったのでなかなか思う所に投げられない。横で見ていた持ち主がたまらずいろいろと教えてくれた。

『あっ、見ましたか今、あの岩影からかなりでかいマスが出たでしょう。あのあたりを狙いましょう』僕はかなり目が良いし、川に関しても知っているつもりだったが、その人の言う魚の動きは僕には全く分からなかった。どうやらトータル的に随分、腕の差があるのでその人の言う通りにやってるとついに僕にもニジマスが釣れた。