モーゼが十戒を受けたとされるシナイ半島の中央部にあるシナイ山に上ってみた。荒涼とした風景を照らす夜明けの光は荘厳だったが、しかし余りにも寒すぎる。そこで僕は暖を求めて紅海のリゾート地ダハブに行ってみた。

さすがにダハブはリゾート地だけあり、目の前に広がる珊瑚礁の海の透明度は素晴らしく対岸のサウジアラビアの砂漠までが美しく見える。ここでうまい具合にカイロにいた旅行者達と合流できた僕はさっそく珊瑚の海に潜ってみた。

海の中を観察するとリーフの縁にはコッパグレやスズメダイ、２メートル付近の深さにはベラやフエダイ、そして深すぎて潜れないが珊瑚礁と砂地の境目付近には３０センチぐらいのタイ科の魚の群れも見える。こんな所で釣りをやったらヒンシュクなのは分かっているけどその様子を見ているとやっぱり試してみたくなった。

そこで近くのレストランでイカの切れ端を貰ってきてそれを付けて膝ぐらいまで海につかってリーフの端に立ち紅海に向かって投げ込んでみた。波にゆられて足元が安定しないまま何回か投げるとコツコツと微妙なアタリはでるのだが小物らしくうまくハリにのってこない。

そこで作戦変更して足元でひらひらしているグレを狙ってみた。しかしこっちもグレより先に無数のスズメダイが殺到してエサをつつきまくられてしまいなかなか難しい。なんとか１５センチぐらいのコッパグレを一匹釣るがエサの消費が激しいので再び投げに切り替える。するといきなり確かな手応えを見せ２０センチほどのカマスベラが掛かってきた。

これはいけると同じポイントに投げると今度は先ほどとは比較にならない何かが来た。しかしこれは僕の道具ではどうしようもなく２号ラインがあっさり切れてしまう。まさに逃げた魚は大きかった。一体今のは何だったのか？さっき海底付近にいたタイだったのか？いろいろ想像しながらエサ切れで納竿した。せっかくなのでカマスベラを刺身にして醤油をかけてみるとこれが予想外にうまく、貧乏旅行者一同この新鮮な海の幸に大満足した。