旅する冒険ライダー 坪井伸吾のページです

 

 

 fish.gif (239 バイト)スーダン南部が内戦のために入国できないので、僕はエジプトに船で行く事にしてエリトリアの紅海に面した港町マッサワにやってきた。しかしいつ来るか分からない船を待っているのはヒマでしかたない。ある日、同じ宿にいたドイツ人クリスチーナが僕の分も一緒にゴハンを作ってくれたので、お礼に彼女に魚の煮物を食わしてやろうと竿をかついで港に行ってみた。

港には先客がちらほらいて、なかにはサヨリの切り身をエサに25センチぐらいのハタを3匹も釣っている人もいる。とりあえずその人の隣で魚が釣れなかった時のために買った肉をエサに付け紅海にむけて投げ込む。

あのハタが釣れたら彼女にうまい煮物を作ってやれそうだと考えていると、さっそくアタリが出て10センチぐらいのオヤビッチャが来た。ちょっと煮物には小さいなと思いながら魚をハリからはずしているとその様子を見ていた子供達がワッと集まってきた。

どうやら彼等にはリールが珍しいらしく興味深々といったまんまるな目で見ている。どうせヒマなので使い方を教えてやると大喜びした子供達はどこからか新鮮なサヨリを持ってきてくれた。彼等の見守るなかサヨリをエサに再び投げる。

すぐにアタリが出て30センチぐらいある細長い魚がきたのだが後少しのところでバれた。その瞬間うしろでアッーという悲鳴が聞こえた。振り向くといつのまにか子供にまじって大人までが集まりその全員が残念そうな顔で頷いている。

その中からひとりの少年が進み出て「僕が絶対釣るから竿貸して」と言うので渡すと興奮した彼はなぜかリールのハンドルを海に落としてしまった。またもや先ほどより大きい悲鳴が上がり青ざめた少年は慌てて海に飛び込んでハンドルを拾った。

その様子に今度は僕以上にみんながホッとしている。こうなるとなんか自分のためというよりみんなのために魚を釣らなければいけないような妙な具合になってきた。そのあとイカが浮いてきたので「ドイツ人、イカ食うかな?」と狙ったもののこれにも逃げられ残念ながらクリスチーナの晩メシは煮魚から牛丼に変わった。
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